結局、今度は俺が振り回すとかなんとか思ってたのに、振り回されるのは俺なのかもしれない。でも、素の俺を受け入れてくれるならそれでも良い……と思う反面、実際はやっぱり他の子みたく離れて行くかもしれない不安と、やっぱりまだ信じられない気持ちもあって。
それに、最初は好きでもないのにキスしたとか、バレたら傷付くかもしれない。
「っん、…新開く、ん」
「なに?」
「ちょ…っと苦、し」
いつもより長く口付ければ、決まってなまえは苦しそうに涙目で訴えてくる。それが妙に色っぽくて、高揚した頬は俺を誘っているかの様にしか見えなくなる。一見、地味だと思っていたなまえは、こうやって近付けば近付く分だけ色んな表情を見せてくれて癖になりそうだ。
「な、なまえもう一回」
「……え、まだ?持ってきたお菓子食べないの?」
「あとで食べる」
「…ん、っ」
中毒みたいに、一度に何回もなまえを求める俺はなんだか滑稽で、自分で可笑しくなるけど、なまえは文句も言わず必ず付き合ってくれる。
そもそも、俺を好きだと言うのだから当たり前か。
「ん、新開…く」
「隼人」
「…えっ?」
「隼人って呼んで」
「はや、とくん……すき」
不意打ちで小さく囁くように呼ばれた自分の名前と、ただ一言のそれに、熱くなるのが分かった。ああ、ダメだ。もう俺、完璧ハマってる。
「今日ね、ドラ焼き持ってきたの」
「ドラ焼き?」
「そう、この前雑誌で洋菓子のケーキより、こういう和菓子のが補給に良いって書いてあったから」
「さんきゅ」
確かに脂肪分の多い洋菓子よりもこういう和菓子の方が良い。口に運ぶと、ほんのり甘みのある生地とつぶあんが口に広がる。いつもパワーバーがメインで、走ってる最中は良いとしてもこういうのも良いな。それにしても、雑誌ってロード雑誌でも読んだのだろうか?
「口に合う…かな?」
「大丈夫、めちゃくちゃ美味い」
「……良かった」
おそるおそる聞いたなまえは、俺の返事を聞いてホッと息をつく。その安心した顔がまた可愛い。なまえのこんな表情を知ってるのは俺だけ、なんて思えば少しの優越感。
「あと新開く、」
「隼人」
「えと、隼人くん…」
毎回そうやって照れる姿が初々しくて、今まで付き合ってきた女の子とはちょっと違う反応が面白い。だけど、早くちゃんと隼人に慣れて貰わないとな。
「来週の日曜日の夕方空いてる?」
「日曜?部活があるけど、夕方なら大丈夫かな」
「あの、これ……」
差し出された紙を受け取ると、それは映画のチケットだった。前売券と書かれたそれは今話題の映画だ。
「買ったのか?」
「ううん、お姉ちゃんがくれたの。でもちょうど観たかったから……どうかな?」
「いいよ、行こう」
「本当に?良かった!」
本当に嬉しそうに笑うから、俺も釣られて笑う。とゆうより頬が緩るむ、という表現の方があってるかもしれない。
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