「隼人くん、好き」
なまえは、俺の心を見透かしたようにその言葉を呟く。不意に不安になった時、にっこりと小さく微笑むからなまえなら、と思ってしまう。

「ねぇ、隼人くん」
「なに?」
「今度レース見に行っていい?」
「……だめ」
「そっか」

なまえは一瞬悲しそうな顔をしたけど、なんで?とは言わなかった。本当は、見に行きたいって言ってくれるのは嬉しい。けれど、レース中はアレを出すことになるかもしれないから駄目だ。見せられない。
昔、一人だけ見られた事があった。大丈夫だよ、と言って笑ったその子はレース以降、俺に話かけてくれることも、笑いかけてくれる事もなくなった。よくよく考えれば、きっと俺はその子の事が本当に好きだったんだと思う。だからショックだった。……あの子なら、大丈夫だと思っていたかった。でも、駄目だった。
だから、なまえもきっとアレを見たら俺から離れていく。また同じことを繰り返したくない。
なまえの前では、ただの新開隼人でいるんだ。今度こそ、見付けたかもしれないのにアレで逃がすなんて嫌だ。

「なんで、とかは聞かないんだ?」
「……聞かなくてもわかるよ」

なんで、そう喉まで出てきたけど飲み込んだ。なまえが泣きそうな顔をしていたから。

「……私なんかが、見に行ったら恥ずかしいって、ことだよね、」

あぁ、なんだ、そういうことか。アレを知ってるのかと早とちりしかけてしまった。

「言っておくけど、なまえを皆に見られたら恥ずかしいとかじゃないから」
「え?」
「まぁある意味、見せるのはもったいないっていうのもあるかもな」

そこまで言うと、なまえの頬は一瞬でピンクに染まって、まるで桃みたいだ。ころころとすぐ表情を変えて、忙しい子だな。まぁ、それも可愛いから良いけど。

「じゃあ、」
「でも、まだなまえには見られたくない、かな。……いつか呼んだら来てくれるか?」
「……うん、もちろん」

なまえは大丈夫だと良い、なんてのは俺の願望だから、今はまだお願いだから見ないでほしい。
少ししょんぼりとするなまえに胸は痛むけど、ごめんしか言えなくてごめん……そう思いながら、そっとなまえの手を繋いだ。

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