02
やばい。最近買い出し行ってなかったからなぁ、ぼんやり最後に行ったのはいつだったか考えるけど少なくとも今月に入って一度も行ってない気がする。……しょうがない、これは行くしかない。ドリンクの粉もないし包帯とか絆創膏もないし、さすがにヤバい、とゆうか石垣さんにバレたら怒られる。あぁ見えて石垣さんって真面目だから。
とはいえ、買い出しのメモを書き出してみれば一人では持てなさそうな量。だけど、部員の皆はもう走りに行ってしまっててしかもマネージャーは私のみ。参ったなこれは。

「何をうんうん唸ってはるんや?」
『御堂筋くん……、早いね』
「当たり前やろ、ザクと同じペースで走ったら余計疲れてまうわ」
『ちなみに、今から何するの?』
「のんきななまえにドリンク貰う予定、はよしてや」
『あ、ごめんごめん。ちなみにね、』
「ちなみにちなみになんや?」
『今日おかわりないから』
「は?」

意味が分からないと御堂筋くんの眉が歪んだ。やっぱり、はいそうですかなんてなる訳ないか…。とゆうか、御堂筋くんに買い出し頼む?……いやいや、絶対嫌やとか言われるのが関の山か。

『あの、買い出し行ってなくて』
「……だから?」

ほらきた、そうくると思ったんだよ。誰か早く戻って来てよぉ!
じっとりと見つめられ、いや睨まれて目を合わせられない。これ以上罵られない内に行ってくるしかないかな、とりあえず最低限の物だけ買ってこようそうしよう。
買物袋にさっき顧問の先生から貰ってきたお金を入れて、Tシャツじゃいくらなんでもアレだしジャージを羽織って、あと買物メモも。

「その量どうやって買うつもりなん?」
『買える分だけ買おうかなって……』
「……そういう時は一緒に来てくれはったら嬉しいな、とか可愛くねだるとこやないん?」
『だって御堂筋くん嫌って言いそうだし』
「確かに嫌や」
『ほらね』
「せやけど、可愛くおねだり出来たら手伝ってやってもええけど?」

なんて上から目線なんだ、御堂筋くん。しかも私がじゃあいいです、とか言わせるつもりはないって感じだし。でも確かにここでお願いすれば、着いてきてくれると言うなら美味しい話…。

『着いてきてくれたら、助かるのでお願いします御堂筋くん』
「……なんも可愛くないんやけど」
『お願いします!御堂筋翔さま!』
「お願い翔くん」
『お願い翔くん!』
「……しゃーないな」

やった!よくやった私!これで1回で済む!ありがとう、ありがとう御堂筋くん!いつも私をからかうからちょっと苦手だけど、今日ばかりは好き!
いそいそと買物袋をもう2つ追加すると御堂筋くんはもう外に出ていってしまっていて、入れ代わりで石垣さんが入ってきた。

『石垣さん、私今から買い出し行ってきますね。皆のドリンクは用意してあるので後はお願いできますか?』
「あぁ、わかったよ。一人で大丈夫?」
『はい、御堂筋くんが一緒に行ってくれるみたいなので大丈夫です』
「御堂筋が…?」

へぇ、と石垣さんも驚いたような顔をしてドリンクに口をつけた。ですよね、私も驚きました。

「みょうじは御堂筋と仲が良いのか」
『……とゆうか、どっちかと言えば気まぐれな猫に懐かれてる感じですかね?いつも懐いてくれる訳ではなく』
「懐かれてるか、面白いな」

なるほどと笑って、石垣さんは残りの皆のドリンクの入ったカゴを持ってから、いってらっしゃいと爽やかに部室を出ていった。
それと同時に、開いたドアからまだかと言った顔をした御堂筋くんが私を睨んでいたから、慌ててテーブルの買物袋とカバンを引ったくって部室を出た。

『ごめんごめん』
「なにしてたらそんな時間かかるんや」
『石垣さんに買い出し行ってくるって言ってたの』
「ほんまなまえってのろまやし、鈍感やしとろいな」
『そこまで言わなくても良いじゃん』
「本気でボクに懐かれてるだけや思うとるん?」
『え、だって…』

嫌われてない、とは思うしどっちかといえば好かれてるような気がするけど、例えるならやっぱり懐かれてるってのが合ってないかな?御堂筋くんってだって、掴みどころないし気まぐれだし。

「言うとくけど、ボクがこないに面倒なこと手伝うん、高つくで?」
『高くつくって、……お菓子くらいしか買ってあげられないけど…』
「ほんま、なまえは馬鹿やなぁ?」

ニィっといつもの馬鹿にしたような目で笑って、御堂筋くんは歩くスピードを上げた。
それに合わせて私も早足で御堂筋くんに追い付けば、またスピードを上げられて私は小走りになりながら御堂筋くんを見上げた。
それに気付いた御堂筋くんもちらっと一瞬だけこっちを見たけど、すぐにまた前を見てしまってそれ以降はこっちを見ることはなかった。
だけど、ちょっとだけ御堂筋くんがいつもよりにこやかに見えたのは気のせいって事にしておいてもいいかな。うん、そういうことにしとく。やっぱり御堂筋くんてよく分からない。
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