04
御堂筋くーん、おーい』
「…………」
『御堂筋くんってばー』

だんまりを決め込んだ彼は、鉄壁のように私の声にも反応せず動かない。一体どうしたと言うんですか、御堂筋さん。私は貴方のお母さんでもなんでもないから、言わなければ分からないし分かろうとも努力しませんよ?
そもそも、貴方部活はどうした、部活動。他の皆はもうとっくに出て行ったのに。
諦めて、私も自分のことをしようと思って洗っておいたボトルをカゴに入れる。そういえば昨日やっと水道直ったんだよね。今日からまた楽になるから嬉しい〜。るんるん気分になってカゴを両手に持てばようやく御堂筋くんが動いた。

『やっと準備するの?』
「……」
『な、なに?』

ゆっくりと私の方へ向けた顔と目が合った。けど、それは一瞬ですぐに視線を外すとともにため息をつかれた。
一体なんなわけ、何がしたいんだ全く。もう知らない。めんどくさいからみっともないけど、足で半開きのドアを開いて外にでる。

「みょうじ!ちょうどよかった…あの」
『齋藤くん?』
「何の用や」
『え?』

私と齋藤くんの声が被った。なんで御堂筋くんが答えるのっていうか、いきなりなんなの?本当気まぐれすぎるでしょ。
いきなり現れた御堂筋くんに齋藤くんも驚いた顔をしていて、なんだかデジャヴュ。この前の水道の時と同じ。今回はうちの部室前だけど。

「あの、俺借りたノート返すの忘れてたからさ」
『あ、忘れてた…。わざわざありがとうね』

差し出されたノートには私の字で自分の名前が書かれている。今日、齋藤くんに明日当てられるから貸してほしいと頼まれて貸したんだった。なんで私?と思ったけどこの前の事もあるし、お礼をこめて綺麗でもなんでもないけど言われるまま差し出したんだよね。はたして役に立てたのかは分からないけど。

「用が済んだならはよ帰り。目障りや」
「……じゃあみょうじ、また明日…」
『あ、うん。またね』

なんとも言えない威圧感の御堂筋くんに、齋藤くんは少したじろいで、そのまま体育館の方向へ戻っていった。

『てゆうか、なんで御堂筋くんが口挟むの?』
「文句でもあるわけなん?」
『むしろないって思ってるの?』

そうだ、と言わんばかりの威圧感でじっとり私を見つめる御堂筋くんに思わずため息が出そうになった瞬間に、私より早く御堂筋くんがため息をついた。ため息をつきたいのは私の方なのに!
……もう真面目に付き合ってたらこっちが疲れるだけなんだから、やめよう。そう思って今度こそ水道に向かおうとすれば腕を掴まれた。

『なに?早く行かなきゃ間に合わないんだけど』
「なんやてそんな思わせぶりしてはるんやなまえは」
『は?なにが?』
「あいつ、なまえと仲良いわけやないやろ?」
『クラスメイトなんだけど…』
「あんなん、なまえの気引きたいだけや。ザクでも分かるで」
『別に齋藤くんとは何でもないし、……とゆうかそもそも御堂筋くんには関係な…』

関係ない、そう言おうとしたのにギリ、と音がしそうなくらい強く掴まれた腕にびっくりして最後まで言えなかった。
痛い、何するのって怒ろうと思ったけれど御堂筋くんの顔は怒っているのか威圧感がすごくて思わず口をつぐんだ。
なんだってこんな変な空気になってるの?御堂筋くんは何も言わないし、でも手は離してくれない。何がしたいんだろうか。

「……あいつなまえの事好きやな」
『齋藤くんが?まさか、何言ってんの御堂筋くんたら』
「あいつにはなまえ優しいんやな」
『優しいって…、普通じゃない?ってゆうかそんな仲良くもないよ』
「……ふーん」
『ねぇ、一体どういうこと?なんなの?』
「……ボクな、」
『うん?』
「意外と妬きもち屋なんや」
『…はい?』
「なまえが他の男にノート貸すんも、あかん。せやから止めてな?」

真面目な顔して何言っちゃってるんだこの人は。妬きもちってなんだ、妬きもちって。私たちはカップルかっての。
いやいやただの部員とマネージャーだし、付き合ってないし。ってゆうか腕離してよ、早くしないと皆戻ってきちゃうでしょ、タオルもまだ出してないしドリンク作ってないし、洗濯したタオルも干さなきゃいけないし、私今すごい忙しいのに。
やだやだ、なんか顔が熱い気がするのは暑いからだわ。ヤバい、私も夏バテなのかな、気をつけてなきゃ。
あと御堂筋くんの顔が見れないのは、今日の御堂筋くんが変だからなんだから!あー、暑い暑い。
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