05
終業のチャイムが鳴った。いわゆる放課後になってしまった。ああ…、鬱だ。
なんだって私がこんな部活を憂鬱に感じなきゃいけないんだろう、私は悪いことなんてしてないのに。
御堂筋くんのせいだ。とゆうか、御堂筋くんに会いたくないから部活に行きたくないんだけど。
この前からなんだか御堂筋くんの顔が見れなくて、気まずい雰囲気になってしまう。御堂筋くんはそれを楽しんでるような気がするけど。なんだって私が…、!

「みょうじ、悪いんやけどな」
『はい、』
「これ倉庫まで運んどいてほしいんや」
『これを、ですか?』

とても一人で持てるような量じゃない段ボールの目の前で、石垣さんににっこり笑ってお願いされた。備品だし、私マネージャーだし私の仕事なんだけどこれは……相当な仕事かも。どうしようかととりあえず持ち上げようとしてみれば、重たくて上がらない。いや、気合いが足りないだけかも!もう一回……

『ん、んー!』
「大丈夫かみょうじ?御堂筋にでも手伝ってもらい?」
『御堂筋くん……は不要です。んー!』
「無理したらあかんて。御堂筋どこにいったんやろか、御堂筋ー!」

石垣さんが御堂筋くんの名前を呼ぶもんだから、やめてくださいって何とかやめて貰って安心したのも束の間、やって来てしまった。

「なんや、そないなへっぴり腰で運べる思うてはるん?なまえはおめでたい頭してるなぁ」
『……御堂筋くん』
「手伝うてほしいならそう言わなあかんやろ?」
『手伝ってほしいなんて言ってないし思ってないもん』
「へぇ、せやかて一人でどうやって持っていくつもりなん?」
『……い、石垣さんに手伝ってもらうの!』
「その石垣さんはもう行ってもうたよ?」
『え…?』

いつの間に…!なんで石垣さんたら私を置いて行くの?!やめてよー!

「そんなに僕に手伝うてほしないなら、ボク練習あるで行くで?」
『……ごめんなさい、お願いします。』

私の虚勢など、この荷物を目の前にはいとも簡単に崩れさった。しょうがない。背に腹は代えられないとはよく言ったものだもん。ここでぐだくだするより、さっさと済ませた方が早いんだしね!そうだ、私ちゃっちゃっと済ませなさい!

「なぁ、なんで最近ボクのこと避けとるん?」
『そんなことない、よ』
「嘘やな…、ボクはそないに鈍感やと違うんよ」

どきり、心臓が跳ねた気がした。核心を突いた直球すぎる質問にどう答えればいいのか分からなくて、わざとらしい声が出た。そんな、正直に御堂筋くんに会いたくないからですなんて怖くて口が裂けても言えないのに。

『は、早く運んじゃおうよ!』
「……」

すたすたと、御堂筋くんが段ボールを抱えて倉庫の方へ歩きだした。無言なのが怖いけれど、残していった段ボールは1番小さな箱1つだけで後は全部御堂筋くんが一度に持って行ってしまった。
私が頑張っても持てなかったのに、やっぱり御堂筋くんは男の子なんだなぁと思うと余計に顔が見れなくなった気がした。

『ありがと、助かったよ』
「君、結構ずるいなぁ」
『ぇ…?』
「まぁ、それやったらボクもこのままではおらんけどな」
『え、どういう…』

どういう意味、そう聞きたかったのにそれより早く腕を引かれて、気付けば横にあった倉庫の壁が後ろになっていた。御堂筋くんの顔がすごく近くてドキドキする。なんでこんなことになってるんだろうか、急すぎて頭の回転が追いつかない。

「覚悟しぃや?」

にんまり笑った御堂筋くんの口元しか見れなかった。
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