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綺麗な玉虫色をした長い髪は、ふわりと教室に風が入る度に揺れる。そよそよと入ってくる風が心地好くて、右から左へ抜けていく先生の声も気にならなくて、ぼんやり見つめる。
先週席替えをしてから、前の席になった巻島くんの、揺れる髪を眺めながらぼんやりとか、うとうとするのが午後の日課になってきた。後ろから2番目の窓側の席というのは、うとうとしていても、ほとんど見付かることもなく、のんびり快適。巻島くんの観察も日課となって1週間だけど、彼はすごく細い。とゆうか、薄い。本当に運動部なのかな、と疑いたくなるくらいに華奢なのに、これで去年もインターハイに出たとゆうから不思議。

「なにショ?」
「…あ、」

しまった、と思ったけれど時既に遅し。どこに筋肉付いてるんだろうなんて、ぼんやり考えていたら無意識に巻島くんの背中を突いてしまってた。怪訝な顔で私を巻島くんが見るから、焦りと恥ずかしさで顔が熱くなるのが分かった。どうしよう。

「え……と、なんでもないけど……けど、巻島くんてどこに筋肉付いてるのかな、なんて」
「は?」
「あ、いや、ごめんなさい」

あわてふためいたまま、馬鹿正直に思っていた事を答えてしまった……。もっとこう、ゴミが付いてたよ、とか、上手い言い訳とか出来ないわけ?
呆れてしまったのか巻島くんは、そのまま何も言わずに前を向いてしまった。あー……もう私の印象が……第一印象だったはずなのに、最悪だぁ。

揺れる髪

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