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話したこともなくて、初めて喋ったのがあの最悪な一昨日。なのに、不思議なことに巻島くんは何故か私に挨拶をしてくれるようになった、多分。昨日は一昨日の事があるから、からかってるだけなのかなって思ったけど今日も朝、少し間延びした声で一言おはよ、と言って席に座った。特にそれ以外は、こっちを向いて話してくれるとか、そういう事はないのだけれど、少しだけ巻島くんとの距離が近くなった様な気がして嬉しくなる。

「……っていうわけなの」
「というか、なまえいつから巻島のこと好きだったわけ?初耳なんだけど」
「え?なんでそうなるの?」
「いやいや今の話とかさ、ずっと見てたとかさ……好きってことでしょ?」
「……そうなのか、な」

好きとか、そういうので考えてなかったから何も思ってなかったけど。確かに言われてみれば……自分の言動はまるで好きと言ってるような気がしてきた。

「私、巻島くんのこと好きなんだ…」

いつからとか、こんな、よく分からない間に好きになるってのもあるんだ。そう呟くと友達は「そういうもんよ」と、急に大人びて言うもんだから、私の脳天気さに落ち込みそうになる。だけど、気付いたからには少しは頑張ってみたいなぁ、とも思えた。
席替えは月に1度。残されたこのポジションはあと2週間半ほどしかない。次、席替えするまでに、挨拶以外でも巻島くんが振り向いて話してくれるようになんて、ならないかなぁ。
ぼんやり、なびく巻島くんの髪を見つめながらそう考えた。

なびく髪

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