06
とうとう席替えをしてしまった。巻島くんの後ろという私のベストポジションは、学級委員長の山田くんにとられた。私はというと、巻島くんの横の後ろの後ろ。クラスの端と端じゃないだけまだましかもしれないけど、それでも遠い。これじゃあ、クラスで話すことはおろか、偶然目でも合わない限り挨拶もないかもしれない。
「今日も一言も話さないまま終わったよー!うわーん!」
「しょうがないじゃん、席替えしたんだから」
「でもぉ」
「てゆうか自分から挨拶くらいすればいいじゃん?」
「だって……!」
恥ずかしいよ、そんなの!せめて巻島くんの席が入口から見て、私より手前ならよかったのに。そうしたら、わざと巻島くんの席の横を通って自然に挨拶が出来る。でも、私の方が入口から手前の席だから、巻島くんの席まで行くのは不自然すぎて出来ない。
「はぁ……」
「……そして、一方的にストーカーして1日が終わるわけね」
「ストーカーとか言わないでよ!」
「はいはい、見てるだけ、ね。じゃあ、また明日ね」
「うん、ばいばい」
こうしてクラスで話すこともなく、放課後少しだけ見るだけの日常になっちゃうんだ。あ〜あ……せめて巻島くんの部活が自転車競技部じゃなくて、野球とかテニスとかサッカーとかフィールドが決まった部活だったら良かったのになぁ。自転車だと走ってるとこなんて、一瞬しか見れないし。
「はぁ……」
「また元気ないっショ?」
え、なにこれデジャヴュ?とゆうか、なんで巻島くんがここに?部活は?しかもここ2年生の教室の階なのに。
「あのよぉ……」
「う、うん?!」
「こう、話すの苦手なんだけどヨ…」
「え、……うん、なにかな?」
これは……もしかして。私がいつも見てるのバレてる?それでもってもう気持ち悪いからやめてくれ?ってことかな……。どうしよう……、巻島くんすごく言いにくそうにしてるし、遠回しに言おうと考えてくれてるのかも。
「あ、あの!……迷惑ならやめますから!」
「……は?」
吹かれる髪
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