「あ?なんか用があんなら言えよ」

やっぱり怖い。鋭い目つきだし、口調だって荒い。なんで寿一や新開くんはこんな人と仲が良いんだろう、2人はもっと穏やかだし優しいのに。
そもそも人見知り、というか男の子苦手で男友達なんて2人しかいないような私に彼に伝言を頼むだなんて酷すぎる。せめて東堂くんとかにしてほしかった。東堂くんでも今度はファンが怖くて無理とか言いそうだけど。

「おい、ふざけんなよ」
『ご、ごごめんなさい……』
「んだからよォ?用はなんかって聞いてんだヨ…」

呆れたようにため息まじりに呟かれて、ようやく我に返った。やばい、回想にふけっている場合なんかじゃなかった。私は伝言を頼まれただけなんだ!それさえ伝えれば私の任務も終わる!今日の帰りはクレープだ!

『あの!寿一からの伝言で、明日の部活は1時間繰り下げて始めるって言ってました!』
「あ?福チャンが?……それって…まぁいいか。」
『じゃ、じゃあそういうことなんで!!!』

私の任務は完了、伝えろって頼まれただけだしこれでいいよね?
これで新開くんがクレープ奢ってくれるっていってたもん。だから頑張ったんだもん。よっしゃー!
てゆうか、荒北くんと始めて喋ったなぁ。怖くて話しかけたことないけど、っていうか私から話しかけるのは寿一と新開くんくらいだけだけど、それを差し引いても怖くて声なんてかけれたもんじゃないと思う。荒北くんって群を抜いて目つき悪いから怖そうに見えるし。あと口調だって乱暴だし…。


「で、靖友とは話せたの?」
『話せたというか、伝言だけ伝えたよ?』
「なーんだ、つまらないな」

なにが、つまらないだ。こっちは産まれたての子鹿並みにビクビクしてやっとだったのに、他に何を話せって言うのよ。
なのに新開くんは状況を話せば楽しそうにケラケラと笑うし、私は腹が立ってきた…
ひとしきり笑い終わった新開くんが私の表情を見て察したのか、ごめんごめんと謝ってきたけど謝るくらいなら笑わないでほしい。

『クレープ』
「クレープ?あぁ、大丈夫忘れてないよ。帰りに寄ろう」
『うん』

クレープくらいでご機嫌をとられてしまう私も私だと思うけど、なんだってこんな事を頼んだのかは意味不明。割に合わないような気もするけど、私で遊んでるだけなのか、新開くんならやり兼ねないから怪しい。
怪訝そうに見たのがバレたのか、新開くんは意味ありげに笑った。

「これはね、なまえのためを思ってやったんだよ」
『はい?』
「ほら、なまえって俺と寿一以外に男友達いないだろ?話すのも苦手とか言って絶対喋らないしな」
『いや、そうだけど…別に困らないし…』
「今はそうかもしれないけど、卒業したら俺たちとずっと一緒にはいられないだろ?」
『うっ…言葉が沁みる…』
「寿一もあまり口には出さないけど心配してるみたいだからさ、ここは一つ提案だ」
『提案て?』
「靖友と友達になる」
『は…?いやいや無理だよ!無理!』

荒北くんと?無理だよあんな怖い人!そりゃ友達になれば良い人なのかもしれないけど、友達になる前に噛みつかれちゃいそうじゃんかあの人…。

「噛みつきゃしないって」
『いや、比喩だよ』

てゆうか絶対私みたいなとろくておどおどした子、嫌いそうだし。友達とか無理じゃないかな…。嫌われて終わりだって。そもそも話しかけられなけど。

「ともかく、靖友と友達になれるくらいなら他の奴とも友達になれるって訳だ。がんばれよ。協力はするから」
『いやいや…』
「寿一も賛成してるし」
『寿一が?!』
「そうだよ。荒北なら大丈夫だろうって」

さすが幼なじみ、心配してくれてるんだから、なまえも心配かけないようにしなくちゃ。
そう言ってにこにこ他所向きの笑顔で笑う新開くんは意外と黒い。
黒いというか、普通の男子っぽい。新開くんてファンクラブもあるみたいだけど、絶対ファンの子ってこういう所知らないと思う。

ともかく私は半ば無理矢理、荒北くんとのお友達計画を決行しなくてはならなくなった。というより、勝手に始められてた。
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