嫌な予感はしていた。……しては、いたんだけど。こんなあからさまにくるとは、ね。

クレープのために放課後部活が終わるのを待ってたまでは良いけど、清々しい笑顔でお待たせと、笑った新開くんの横には寿一。そして…後ろには荒北くんがいる。
荒北くんがいるだなんて、聞いてない。どうせ新開くんの提案なんだろうけど、私がいるのに荒北くんも何で了承なんかしちゃったのだろうか。しかもクレープ食べるんだよ?クレープ。荒北くんクレープなんか食べる訳?想像つかない…。寿一?寿一は昔から私に付き合わせられて慣れてるし、寿一は専らサラダクレープ派。

いつも金曜日に来るいつもの移動販売のクレープ屋さんで、いつものクレープを頬張る。やっぱりイチゴチョコカスタードパイが1番だぁ…美味しい。しかも今日新開くんの奢りだから格別。
でも新開くんの好みは中学からの付き合いだけど、いまいち分からなくて毎回色んなのを食べてる。今日はウインナーサラダだし、この前来たときはショコラパイ生クリーム食べてたし。
寿一の影にいる荒北くんは何食べてるのかな、少しだけ気になったからこっそり見ると荒北くんだけクレープじゃなくてドリンク。あれ?クレープ食べにきたんじゃないのかな?
あの寿一ですらこうやって一緒にきた時は食べるのに、クレープ嫌とか…?
もぐもぐと頬張りながら見てたら、バチっと目が合ってしまった。やばい、恥ずかしい。慌てて目線を外したけど、ばっちり目が合ってたから、荒北くんが怪訝そうに顔をしかめたのが見えて余計気まずい気分になってしまった。
変な奴と思われたかな…。

「靖友はまたベブシか」
「うっせーな」
「せっかく食べに来たんだからクレープ食べれば良いのに」

ほっとけ、と悪態をついてカップに入れられたベブシを飲み干した荒北くんは、勢いよくゴミ箱のその空を投げ入れてそっぽを向いた。
やっぱり私いない方が良かったんじゃないかな、って思ったけど考えたら私とクレープ行くって約束なんだったから荒北くんが後から来たんだよね?
そんな苛々するなら来なくても良かったんじゃないのかな、そう思ってたら顔に出てたのか寿一が俺が誘ったんだと小声で耳打ちした。寿一が?にしても、クレープ食べにきたのに…

「あ?なんだよ、さっきからじろじろ見て…なんか言いたい事あんならはっきり言えよ。昼休みもぐずぐずしやがって…」
『ごごごごめんなさい…』
「靖友、もっとやさしくしなきゃ駄目だろ。だから女の子に怖がられるんだよ」
「うっせ!俺はお前と違ってモテてぇわけでもねぇしいいんだヨ」

ぽんぽんと止まらずに言い合う2人を交互に見るしかなくて、どうしようとおろおろしてたら寿一がいつもの事だ。と、慌てもせずに言ったから本当にいつもこんな感じなんだと思う。
そっか、荒北くんって友達相手でもこんな感じの人なんだ。嫌われてるとか云々じゃなくて、こういう人なのかな?
そう思っていたら、またちらっと合った目が細くしかめられた。やっぱり私は嫌われてるのは確実かもしれない。
嫌われてるのにどうやってお友達になれば良いんだろう、おもわず溜め息が出そうになったのを飲み込んで新開くんを横目で見る。それに気付いてにっこり笑う新開くんはやっぱりモテる男だな、なんて改めて思った。
荒北くんはあからさまに嫌そうな顔するし、それに比べて新開くんの態度は優しいし女の子がキャーキャー言うのも分からないでもないや。

「まぁ、靖友もなまえは俺たちの大事な子なんだから優しくしてやってくれよ」
『だ、大事って…!』
「そうだろ?寿一はもちろん俺にしても中学からの友達じゃないか」
『え、…あ、そう…?』
「あと、なまえは靖友と友達になりたいだけなんだから仲良くしてやってよ」
『な、な、な…!』
「ア?なななななに言ってんだよ?ああ?!」

そうだよ、何言ってくれちゃうのよ!私は友達になりたいなんて言ってないのに!新開くんが勝手に言ったくせに、私がなりたいみたいに言わないでよ…!
空いた口が塞がらないとはこの事だ。言葉にはならない声が、口がぱくぱくと鯉みたいに開くだけ。あと顔も赤くなってる。

「本当だって」
『ちょ…ちょ、新開くん…』
「ほらなまえ、恥ずかしがらないで」
『え、ちょ…』

ちょっとぉ…、もうやめてよ…!荒北くんだって嫌がるに決まってるのにこの状況じゃいくら嫌でも、頷くしかないじゃない。それすらも新開くんの作戦なのかは分からないけど、恐る恐る荒北くんの方に視線を向けるとほんのり赤い頬した荒北くんと目が合った。え?

「お、お前もそういうことなら早く言えよな!アァ?紛らわしいっつんだよ」
『は?……え?』

これは…所謂…照れ、なのでしょうか?え?意味が分からない。荒北くんって、まさかまさか…ツンデレ?
呆然と何も言えずに荒北くんを見てると、わしゃわしゃと乱暴に頭を撫でられた。
びっくりしてるのにやっぱり声にはならなくて、ちらりと新開くんを見やると、してやったりとでもいう様な顔で笑ってた。
これは絶対、確信犯。

新開くんは一体、私と荒北くんをどうしたいのやら…、なんか怖い。

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