やっぱり怖い。
いくら寿一や新開くんと何回か帰ったりしてたとは言え、2人っきりだなんて初めてで、どうしたらいいか分かんない。
部室までの道がこんなに長いだなんて、思ったことなかった。
荒北くんもお喋りなタイプじゃないし、私も友達相手にならお喋りな方だけど、荒北くんには未だ人見知りを発揮中だし。……気まずい。何か、何か喋らないと。何か話題を探すけど、焦ってるからか何も思い浮かばない。どうしよう。
『あ、あの…』
「アァ?なんだよ?」
『ひっ……な、なんでもないです…』
「は?…ったくお前なぁ…いっつもそうだけどよォ、言いたい事あんならはっきり言えヨ。伝わんねェ」
『ごごごめん……』
「そのすぐ謝るクセもやめろ。うぜェ」
『ご、ごめ…あ、いや、きき気をつける』
クセでまた謝ろうとしてるのに気付いて、急いで訂正すると、荒北くんのツボに入ったのか大きな声で笑われた。その声に反応して、ちらりと何人がこっちを見た。荒北くん声大きすぎ。
恥ずかしくなって、少し顔を伏せれば荒北くんは気にならないのか、もしくは気付いてさえいないのか、下ばっか向くなとそれすらもまた注意された。
今日は怒られてばっかり。私が悪いのだけど、やっぱり荒北くんは独特でちょっと怖い。でも、荒北くんに悪気はなくてむしろそういう風に言って貰えるのは気に入って貰えてる証拠だ。なんて寿一に言われたら、そうなのかぁなんて単純な私はその気になっちゃって。だからか、怖いけどそう思ったらなんとか耐えれる気がした。本当に怒ってるわけではない、と。
『荒北くんって、勘違いされやすいんじゃないかな?』
思ったことを口にしてしまって、ちょっと焦る。お、怒ってないよね?ちらりと横目で荒北くんの表情を盗み見すれば、聞いてなかったのか、私の方すら見てなくて、ちょっとほっとする。
でも、こうして、私は寿一や新開くんがいるから荒北くんは本当は怖い人じゃないと知ることが出来たけど、他の人はどうなんだろう。荒北くんみたいなタイプが相手でも積極的な人なら良いけど、私みたいな気弱なタイプはずっと勘違いしたままなんじゃないのかな?
私だったらそういうの、気にしちゃうけど、そもそも荒北くんにとっては大きな問題ではないのかもしれないけど。
「…なに笑ってんだヨ」
『ううん、…なんか荒北くんは荒北くんなんだなぁ、って。私、荒北くんみたいなタイプの友達初めてだから。』
「は?」
『清々しくてかっこいいよね』
私みたいな、うじうじしたタイプとは真逆。はっきり思ってること言えるって良い。
なんだか勝手に、一つ荒北くんが分かったような気がして嬉しくなった。
新開くんじゃないけど、私は確かに荒北くんみたいな友達がいた方が良いのかもしれない。わかんないけど、荒北くんといると私のこの気弱な性格もちょっとはマシになるんじゃないだろうか。多分だけど。
真似……は、ちょっと出来ないけど、荒北くんみたいにちゃんと自分の思ってること言えるようになれたら。……もしかしたら、寿一は分かってて、このお友達計画に賛成したのかもしれない。昔から私のこと知ってるからこそ。
「なんかよくわかんねェー奴だな、オメェは」
『うん、私もまだ荒北くんのことよくわかんないし、だからもっと仲良くならなきゃ、だよ』
「は?」
『……うん、まだちょっと荒北くんのこと怖いけど、何話していいかわかんないけど……! 私荒北くんとお友達になれるように頑張る』
「頭大丈夫かヨ?」
『大丈夫!それに寿一が私に言うことで、間違ってたことってないんだ。一回も!』
「あ?まァ、福ちゃんが言うことに間違いはねぇけど……話が読めねぇんだけど?」
『いーのいーの』
頭に?マークを浮かべて、怪訝そうに私を睨む荒北くんだけど、これはきっと睨んでるわけではないんだと思う。多分。
そう思えるようになっただけでもすごい進歩だと思うけど、新開くんに言ったら笑われるかなぁ。
バカみたいな自己解決だけど、それでも、私が荒北くんとお友達になれる日は近いかもしれない。