やってしまった……。この前寿一にも言われたのに。この自分の押しの弱さにも呆れるけど、今日は相手が少し強すぎたと思う!
……なんて、今さら何言っても私が握ってる可愛らしい封筒たちは消えたりはしないけれど。
寿一に新開くん。校内でも人気があるのは分かってるけど、手紙くらい本人に渡せばいいのに。私も気が弱いから、緊張するし無理って思う気持ちは分かるけど、それなら下駄箱にでも入れればいいんじゃ?と思ってしまう。
人に迷惑をかけるのは、申し訳ないから。
それにしても…。寿一と新開くんはいつもの事だし、もう受け取るなとは言われてたとは言え、今日の出来事の内容を話せば分かってくれるとは思う、んだけど、問題は荒北くんだ。
最近たまに4人で居るところを見られたのが原因みたいで、荒北くんとも仲いいんだよね?!と返事もしてないのに押し付けられちゃった。
恋する乙女って怖い。
「なまえは珍しく、口数少なくないか?弁当も減ってないぞ」
『寿一……』
たまに不定期で集まるようになった屋上での昼食。いつ言おうか、いつ言おうか、伺っていたせいで寿一に様子が変なことに気付かれてしまった。その一言で2人も私の方を見た。う……皆して見ないでよ。余計言いにくいじゃんか。
さらりと、さりげなく自然に言って渡して終わりたかったのに。でも今さら誤魔化せないよなぁ……こういうことには寿一鋭いから、見破られるに決まってる。
『……実はね。これ…』
鞄に入れたファイルに、折れ曲がらないよう挟んだ手紙を出すと、寿一も新開くんもすぐ気づいたみたいで、気にするでもなく、納得したように頷いて、笑った。
「なんだ、それの事か。受け取っちゃったからって、どうしようかと思ってたわけ?」
『うん…』
「こんな事くらい、気にすることないぞ」
『え…、だって……』
「この前の事を気にしているのか? あれは、お前の負担になるかと思って、もう受け取るなと言っただけだ」
「まぁ、その気はないから、いらないっちゃいらないけどさ」
『……なんだぁ…』
構えちゃって、損した…。どう言い出すかとか、色々考えたのに!
あっさり2人に言われて、ホッとした。もう貰っちゃったしどうしようかと思ったよ…。
『あの…あと、荒北くんのも…あるんだけど…』
「アァ? いらねーヨ」
『で、でも……』
「顔も知らねーやつの手紙なんか気持ち悪くて受け取れねぇよ。自分で渡せって言っとけ!」
『私も急に渡されたから…、知らない子で、』
「ハァァ?知らねーのに受けとった?!お前馬鹿じゃねーのか」
『ごごごごめんなさい…』
「はいはい、靖友そこまで」
2人の反応とは打って変わって、荒北くんは嫌そうに言い放った。どうしよう、荒北くんを怒らせてしまった。まだまだ荒北くんの考えることとか、性格とか分からない事だらけではあるけど、不機嫌になったのだけは分かった。
私だって、本当ならこんな事したくないけど……不本意ながら受け取ってしまったとは言え、渡さなかったら私が捨てたみたいで、それはさすがに……。
「靖友もそんなに怒るなよ。なまえも受け取りたくて受け取った訳じゃないから」
「じゃあ受けとらなけりゃいいだろ」
「意外とね、俺たちが考えるより女の子の世界って難しいんだよ」
「なまえ、荒北宛てのものも今度から断るようにしてやってくれ」
『うん……ごめんなさい…』
「それでいいだろ? 今回だけは受け取ってやれよ。なまえが持ってても困るんだから」
新開くんがそう言っても、不機嫌そうな荒北くんの反応はない。
やっぱり駄目なのかなぁ…ってちょっとだけ涙が滲みかけた時、乱暴に手紙を取られた。びっくりして荒北くんの方を見ても、目は合わない。けど、手元にはしっかり手紙が握られている。
『荒北くん…?』
「今回だけだ!次からはぜってぇー受けとらねーヨ」
それだけ言い放って、荒北くんはそのまま屋上から出ていってしまった。やっぱり相当怒ってる……。
「なまえ、気にするな」
「靖友は態度ほど怒ってないから大丈夫だよ」
『……うん』
でも、せっかく最近ようやく話せるようになったのに、こんな事で怒らせてしまうなんて。どうしよう……。なんだか、その日は一日ブルーになってしまった。仲直りって、どうやってするんだろう?