『あ、あの…』

あぁ、全然聞こえてない…。う……この状況辛い、辛すぎる!なんだって私はチビなのか。そして、なんだって私は気が弱いのか。人見知りだから知らない男子に声かけるなんて…すごくすごく勇気いるのに!なんで気付いてくれないの?!

友達とのジャンケンに負けて、食後のデザート用のプリンを買いに走らされてるのは、自分が負けただけだからしょうがない。
でも!こんな!チビだからって、私が見えてないって酷くない?酷い!
人混みに紛れて、前に並んでた人達と後ろから来たグループに挟まれ、お互いがお互いと楽しそうに会話を始めたもんだから、私は板挟み状態。最初は私に気付いてるのかと思って、間にいたら悪いかなと思って抜けようとしたのに全然抜けれないし。声かけても無反応。
これ絶対私がいるとか気付いてない気がするんだけど…。
うう…もうプリンとかどうでもいいから、ここ抜けたい…。どうしようもなくなって、泣きたくなってきた……。

「おい、お前らどけヨ」
「あ?荒北こそ順番抜かすなよ」
「うっせぇーよ、俺はここに並んでんのと一緒なんだよ。こいつが並んでくれてたんだからな」
『……え?』

ぐいっと腕を引かれて、ようやく男の子達の間から抜けれた。引いてくれた張本人はもちろん声の主、荒北くんだ。掴まれた腕がちょっと痛いけど、そんなこと気にならないくらいには嬉しい。
助かった以上に、荒北くんが普通に声をかけてくれたことが嬉しいや。

「え、どこにいた? 気付いてなかった、ごめん」
「声かけてくれれば良かったのに、みょうじさん小さいから、本当わかんなかった」

私が間から出てきて、挟んでた人たちが目を丸くした。やっぱり気付いてなかったんだ……。声だってかけたよ!気付いてくれなかっただけで。

「てことで、俺は順番抜かしじゃねーってことだ。お前こそ抜かすなっつーんだヨ」

空けろ、と男の子達の間に割り込む荒北くんに引っ張られ私もまた列に戻る。今度は余裕のある隙間が出来ているから、苦しくないし、挟まれる事もない。

『あ、荒北くん、ありがとう』
「……別に、俺はプリン買いにきただけだっつーの」

照れたのか、いつもより少し早口でぶっきらぼうに言われたけれど、全然怖くない。荒北くんってやっぱり、優しいと思う。

「あのよ、」
『うん?なに?』
「この前は悪かったな…」

あ。そうだった…、先週の手紙のことがあってから、屋上での昼食には行ってなかったし荒北くんとも会ってなかったんだった。忘れてなんかないけど、今さっきは焦りすぎて一瞬忘れてた。
気まずくて、声掛けても無視とかされたれたらどうしよう…とか、色々考えてたら声なんか掛けれなくて。気づけば土日を挟んで週明けになってしまってたんだった。

『こっちこそ…ごめんね』
「……別にお前に怒ってたわけじゃねぇから」
『…うん?』
「ちょっと苛立っただけだから、ヨ」

視線は合わせてくれないけれど、そう言った荒北くんのオーラはこの前みたいに怖くなくて、本当にもう怒ってないみたい。……良かった。

『でも、良かった…』
「なにがだよ?」
『荒北くん怒ってたから……仲直り出来なかったらどうしよう、って思ってたんだ』
「仲直りィ?」
『うん。せっかく友達になれたのに、このままだったら寂しいから』
「友達……」
『え……あ、もしかして、そう思ってるのは私だけ、なのかな……』
「いや、そんな事ねぇ、ヨ!お前と俺は友達じゃねーか!」

荒北くんは慌てて弁解するから、なんだか可笑しくて、笑ってしまった。荒北くんでもこんなに動揺することってあるんだ。なんだか変な感じだけど、気分が良い。それは、荒北くんの新しい一面を見れたからなんだろうけど、それ以上に荒北くんの口から友達だ、なんて言葉を聞けたのも大きいかもしれない。
ただそれだけのことなのに、こんなに嬉しくなるだなんて思ってもみなかった。
最初は荒北くんと友達になるなんて、無理!って思ってたけど、想像より荒北くんは優しくて、私のことを気にかけてくれる。

「なに、ニヤニヤしてんだよボケナス」
『ううん!なんでもないよ!あ、今日はせっかくだから私がプリン奢るね?』
「ハァ?いらねーヨ。そんくらい自分で買う」
『いいの、いいの。これは御礼みたいなものだから、ね』

荒北くんを知れば知るほど、好きになっていく。寿一と新開くんが仲がいいのも、今ならわかる。
荒北くんとお友達になれて、本当に寿一の言うように、私の世界が拡がるような気がするよ。恥ずかしくて言えないけど、ありがとう。
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