「なまえチャンいるゥ?」
昼休み、友達と雑談してるとクラスメイトの子から荒北くんが呼んでるよ、って声を掛けられた。
荒北くんが?彼が私をわざわざ訪ねてくることなんて珍しい……というより初めての事だ。一体なんだろう。寿一経由や、放課後でもないなんて……思い当たることは何もないので、不思議に思いながらも教室の入口へ向かう。
『荒北くん?なにかあったの?』
「おう、まァネ」
『どうしたの?』
「ちょっと頼みがあんだけど…、いいか?」
『頼み…?私に出来ることなら、なるべく協力はするけど……寿一や新開くんじゃなくて、私でいいの?』
「いや、お前じゃないと無理なんだヨ……ていうかなまえチャンにしか無理…」
……いやいや、まだ何も内容も聞いてないのに、なにドキドキしちゃってんだ、私。でも、あの荒北くんが下手に、というかいつもり困った顔して私を頼ってきてくれるなんて。そのくらには私達仲の良いお友達になれたってことかな?
ここはひとつ、お役に立ちたい!そう心の中で意気込んで、もう一度どうしたの?と問いかけてみた。
「ン……ここじゃちょっと、な」
キョロキョロと周りを見渡して、ちょいちょいと手招きをされる。人が多い所じゃ話しにくいってことなのかな? 私が頷くのを確認してから、荒北くんが歩きだしたので、黙ってついていく。
いつもの屋上かな?きっと寿一たちもいるんだろうし。私は不定期にしか参加しないけど、彼らはほぼ毎日のように示し合わせずに集まっているから。
『屋上行くの?』
「アー……屋上は福チャンらがいるだろうしナァ…」
予想とは反して、肯定でも否定でもない曖昧な返事が返ってきた。私にしか頼めなくて……、寿一たちには知られたくない、ってことなのかな。
歩きながらも悩んだように顔を少し伏せて、それからやっぱり屋上は止めようと言われた。
『じゃあ……裏庭とか行く?』
「おう、そうだな。気ィ遣わせて悪ィな」
『それは別に構わないんだけど……、寿一とか部活の皆にも内緒の話?』
「まァ……、絶対って訳じゃねェけど、出来たら内密で頼むわ」
『うん、分かったよ』
裏庭は、昨日降った雨水で地面が少しぬかるんでいて、そのせいか他に人はいないようだった。なんだか、真剣な話のようだし都合が良さそう。寿一たちに話したくない内容の話が、他の他人になら良いっていうわけでもないだろうし、内緒の話ならあまり人のいないところで話す方が間違いないだろうし、ね。
『それで、頼みたいことって?』
「あァ……、それがヨォ……困ったことになっちまってさ」
『困ったこと?』
「この前、知らない奴から受け取ったって言う手紙…覚えてるか?」
『うん、もちろん。……もしかしてそれ絡みなの?』
「おう、それが…」
要約すると、私が不用意に(不可抗力と言ってしまいたい勢いだったけど)受け取ってしまった荒北くん宛ての手紙。その差出人の女の子から告白されて、断ったまでは良いんだけど、彼女は食い下がってきて中々諦めてくれなくて困ってるらしい。
そして、
『好きな子がいると……嘘ついちゃった、と?』
「あまりにしつこくてヨォ」
『私が余計なことしたから、だよね……ごめんなさい』
「いや、あいつのしつこさじゃ咄嗟に断れなかったのも分かる」
『荒北くん……、』
「そんな困った顔すんなヨ」
『あの、私……なにをすればいいの?』
そう聞きつつ、なんとなく予感がする。この流れで察しないほど鈍感ではない。
普段の私なら絶対考えられないようなことだと思う。もし、寿一や新開くんあたりに頼まれたとしても頷けるかと言ったら微妙。
いや、寿一にはそんなこと頼まれることすら想像つかないけど、新開くんなら断りたいって考えると思う。
でも、荒北くん相手なら、協力してあげたいって思える。私なんかで力になると言うのなら。
それくらいには荒北くんのこと大切な友達になってる。だから、ここはいっちょ頑張ってみようかな、