「なぁ……白石?」
「なんや」
「ホワイトデーお嬢に何あげれば喜ぶやろか?」
「そんなもん自分で考えればええやろ」
とゆうか、そんなん俺が聞きたいっちゅうねん。何あげたら喜ぶとか、何が欲しいとか本人に聞けば1番えぇんやけどそれはそれで嫌やからしたくない。
「……ところで。なんで謙也がここでくつろいでるん?」
俺の部屋であたかも自分の部屋みたいなくつろぎ様が少しイラっとくる。…とゆうかなんで勝手に紅茶飲んどるんや、こいつ。
「まぁまぁ。白石も一杯飲んで落ち着きぃや」
「……」
俺の茶葉なんやけど……と思ったけれど、まぁ俺に入れろって言われるよりかましやな、って思ってカップに口を付ける。
「どうや…?」
「紅茶だけは相変わらず美味いな」
「だけ、は余計や!」
執事としてはあまり成績のよくなかった謙也が唯一上手く出来るんわ、昔から紅茶やったからな。他は謙也より出来ると思えるのに、紅茶だけはいつまでも勝てんわ。
「せやけど、はよ決めんと明日はもう14日やで?」
「……そうなんや、そうなんや、もう時間ないんや!せやから白石に意見を聞きに来たんやないかー!」
「そんなん知らんわ」
とは言うものの、俺もまだ用意出来てないけど。でもやっぱりまだ色気より食い気なお嬢にはケーキでも1ホール作ってやったら喜ぶやろうから、帰ってくるまでに出来上がればえぇかな…なんて呑気に考えとる自分もおるしなぁ。
「白石ぃ…!」
「あぁ……もう、鬱陶しぃわ!」
床に座って足元に抱き着いてくる謙也に少し……いや、かなり引きつつも捨てられた仔犬みたいな顔するから、しゃあないし重い腰を上げてやる。
「行くで」
「どこへ?」
「買い物に決まっとるやろ」
「……し、白石!せやから俺はお前のことが!」
「分かったから、はよ準備しぃや」
*
『ただいまー』
「お帰り、お嬢」
『……なんだか良い香りがする』
「あぁ、今日はホワイトデーやからな。ケーキ焼いたで」
『ケーキ?!』
ケーキと聞いて目の色が変わるのが分かるお嬢は単純やなぁ……と思いつつも、可愛いからまぁええかと思う自分が1番単純な気がする。
「お嬢の好きなチーズケーキやで」
『……いや、好きなのは蔵ノ介でしょ…』
「嫌いなん?チーズケーキ」
『好きだけど……、その言い方がなんか腑に落ちない』
俺の趣味でチーズケーキを作った事が気に食わへんのか、分かりやすく拗ねてみせる動作が可愛くてしょうがなくて、せやけどいじめたくなる自分はSっ気あるんやと思う。
「せやったらいらんちゅーことで俺が食べるで」
『駄目…!駄目に決まってるでしょ馬鹿!』
「馬鹿ってなんやねん、阿呆!」
『執事のくせに生意気…!』
「はいはい、切り分けとくからさっさと着替えてきぃや」
『……もう!』
バレンタインのガトーショコラかてちゃっかり自分も食べとったし、チーズケーキかて俺が食べても文句はないやろ。
チーズケーキを綺麗に切り分けてから皿に移して窓側にある小さめなテーブルの上に置いて。
それからさっき買ったばかりの紅茶を入れると、図ったかの様なタイミングでお嬢が部屋に入ってきた。
「ちょうど紅茶入れた所やで」
『今日はいつもと違う香りだね?』
「よう分かったな。今日買ってきたばっかりのやつやねん」
『そうなんだ、良い香り』
テーブルに近付いてきたお嬢にそっと椅子を引いてやって座らせる。
『あ、ありがとう』
「……ちょっと動かんといて」
『え?』
座ったお嬢の後ろに立ったまま、ポケットに入った小さな箱を取り出す。
「…お嬢は色気より食い気やってのは分かっとってんけどな、」
包みを外して蓋を開けるとそこにはさっき店で見たっきりのキラキラ光る石。
「まぁ、ネックレス位ならえぇかなぁって」
そっと取り出して、前を向いたままのお嬢につける。それから向かい側の席に着いて紅茶を一口含んでからお嬢を見ると、呆然としていてこう言ってはなんやけどほんま阿呆みたいな顔しとった。
ホワイトデーくらい、甘い色気を君に
↓おまけ
「このゆ、指輪とかどうやろか!」
「指輪?そんなん重過ぎや」
「お、重い……」
「大体彼女の指輪のサイズ知っとるん?」
「あ。」
「……知らんのにどうやって買う気やねん」
「そう言う白石は知っとるんかいな!」
「9号」
「………」
「そんな悔しそうな顔したって何も出来んで」
「じゃあ何やれば良いんやろか」
「大切なんは気持ちやろ。まぁ重くてもそれが謙也なんやし、えぇんやない?指輪で」
「え、もっと真剣に考えてや!」
「……」
「白石?」
「……すみません、このネックレス1つプレゼント用に包んでもらえますやろか」
「はい、ありがとうございます」
「……え?え?白石?」
「なんや?はよ決めんと俺帰るで。ケーキも焼かなあかんし」
「………白石って」
「?」
「ほんまデレデレやな」
「は?」
「そっちのお嬢の事や」
「……あぁ。せやけどいじめたなる程可愛ぇんやで」
「お前ん所のお嬢がうらやましい…」
「ぶつぶつ言っとらんとはよ決め!ほんまに帰るで!」
「ちょ!ま、待ってって!」