「入学おめでとう、新入生諸君」

どこにでもいそうなお偉いさん風な校長がにこにこと挨拶をする。
ただ座っているだけの行為に退屈し、眠気が襲ってくるのに対して周りは姿勢を崩す事はなく背筋を伸ばしたまま一点、校長を食い入る様に見るもんばっかりや。
なんで、俺はここにおるんやろうとぼーっと考えたけれど、眠気と戦うだけで精一杯やった。

「なぁなぁ、」
「……俺の事か?」
「そうや!俺は謙也!」

つんつん、と背中を突かれてそちらに視線をやると綺麗な金髪でニコニコ無邪気に笑う奴がおった。

「で、その謙也がなんの用や?」
「つれん事言うなや、俺とお前部屋一緒やで!よろしくな!」

静かな講堂の中、周りに聞こえない様に小声で話しながらもニコニコする謙也を見て、これから部屋が一緒やなんて少し滅入りそうやなぁ…なんて思った。


「白石って何でも出来るんやな!」
「別に」
「俺なんてヴァイオリンもピアノも弾けんしなぁ…」
「ヴァイオリンやピアノは教養や、出来んと駄目っちゅーことやないやろ。それに俺は…やらされただけやしな」

入学式後、全寮制だからかすぐに授業が行われた。半日しかない上に初日という事で授業らしい授業ではないが、教養の授業を受けた。不本意ながら、このルームメイトとなる謙也とともに。

「せやけど、出来た方が就職先の幅が広がるやん」
「……まぁ、そうやけど」
「やろ?……よし!俺頑張ってピアノ位弾けるようになる!小さい子の家やったら、ぞうさんとかチューリップくらい弾けるようになるで!」
「それ、志低すぎやないか」

かなり力んどるけど、その位やったら片手でええしすぐ出来るようになると思うんやけど…まぁ、煩そうやし黙っとこう。

「よし!頑張って金持ちの所の執事になるでー!」
「頑張りや」
「何呑気な言うてんのや!ほら、白石も!金持ちの所の執事になるでー!」
「……勝手にやっとってくれ」

こうして、大丈夫なのか心配になる位のちょっとアホなルームメイトとともに俺の学校及び寮生活が始まった。
……こんな全寮制の執事養成学校に入れられてしもて、俺は執事になるしかないんやろか……、生い先不安やわ。

まだ知らぬ君、


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