アイギスからの電話によって鳴上たちとは早く別れたから、小西先輩の家で調理酒をゲットして家に帰った。先輩には会えなかったけどおじさんとちょっと長話して楽しかったからまあいいか。
今日は課題もたいしたものは出てないし、ご飯食べたらちょっとテレビの中でも行ってみるかなあ…。思って、ご飯を適当に作ってテーブルにつく。そのまま手近にあったリモコンでテレビをつけてみればニュースをしているらしく、なんとなくそれをつけたままご飯を口に運んだ。
そういえば昨日テレビなんて見なかったけど、この辺であった事件、ニュースでしてるのかな。そこまで大きな事件じゃなかったらしてないだろうけど…。それにこれ全国区のニュースだからこんな田舎町の事件なんて取り上げないか。
そう思ってテレビの中へ行くために急いで食事をすすめていたら、ぱっとテレビの画面に「稲羽市」という文字が出て思わず動きを止めた。アナウンサーが淡々とした声で「次は、霧に煙る街で起きたあの事件の続報です」と言う。続報ってことはこの前にもニュースしてたってことか…近所づきあいとかしないからこういう田舎の情報も入ってこないんだよなあ…。学校が唯一の情報源だけどそういうことも今日話さなかったし。
『稲羽市で、アナウンサーの山野真由美さんが民家の屋根で変死体となって見つかった事件。山野さんは生前、歌手の柊みすずさんの夫で議員秘書の生田目太郎氏と愛人関係にあった事がわかっています』
「え、なんだそれ怖っ」
民家の屋根で変死体ってどういうことだ。ていうか山野真由美ってよくテレビで見てたけど結構な美人なアナウンサーだったよね確か…いやでも不倫してたってことだよねこれそれはいかんわ。…あー、それで昨日放課後学区内で事件、か。こんなことあったら学校も集団下校させるよなあ。ていうか人が死んでる、なんていう事件なら、堂島さん忙しいだろうけど…まあ、今は鳴上もいるし大丈夫か…菜々子ちゃん。いつもなら電話かけたり行ったりするけど…そこまではいいか。
『警察では、背後関係を調べるとともに、関係者への事情聴取を進める方針です。番組では、遺体発見者となった地元の学生に、独自インタビューを行いました』
アナウンサーが言えば、ぱっと画面が切り替わってうの学校の制服をきた生徒が映し出された。目元とか顔とかぼやかしてあるけど…これってもしかして小西先輩、じゃ。
『最初に見たとき、どう思いました?死んでるって分かった?顔は見た?』
『え、ええと…』
声の音声も変えてあるけど、口元に手を持って行って困ったように記者を見る女子生徒は、まぎれもない小西先輩だった。驚きすぎて食べかけのごはんも放って、テレビに近づいてその前に正座する。しがみつきたかったけど画面に触ると入っちゃうからどうしようもない。
『霧の日に殺人なんて、なんだか怖いよね?』
『え…?殺人、なんですか?』
『あ、え〜っと…最近、このあたりで不審な人とか、見たりしなかった?』
『や…私は、何も…』
『早退した帰りに見つけたってことだけど、早退は何か、用事で?』
『え?えっと…』
なんっだこの記者うざいな!っていうか昨日会った時元気なかったのってもしかしてこのせい?第一発見者ってことはこういう記者とか警察とかと一緒に話したんだろうし…今日表に居なかったのもこのせいなのかなあ…。バイトじゃない時は大体お店手伝ってたのに…。
『地元の商店街の近くで起きた、悲惨な事件。商店街関係者の多くは、客足が更に遠のくのではと懸念しています…』
あんたらがこんな報道するから遠のくんじゃないのか。思って、テーブルについて残りの食事を口にさっさと運ぶ。小西先輩は心配だけど、明日学校で会ってから少し話せばいいだろう。早く食べてテレビの中行こう…しばらくこれなくなるとか言いながら速攻行くのもどうかと思うけど…タルタロス、気になるし…。
『まったく、奇怪な事件ですね〜、民家のアンテナにひっかけて、逆さにつるすってんだから…。何かの見せしめか、犯人からのアピールと言ったところでしょうな〜』
食べ終わって流しでお皿を洗っていると聞こえてきたそれに思わずテレビを見ていた。映像が流れているわけじゃない、ただのアナウンサーとコメンテーターっぽい人がしゃべってるだけだけど…アンテナから逆さにひっかけた…?なにそれ、きもちわる…。でも犯人捕まってないってことはこの近くにいるってことだよなあ…う、うわ、こわ…。まあこの家のセキュリティは多分はんぱないだろうから大丈夫だろうけど……とりあえず、さっさと準備してテレビの中に…。
「うわっ?!」
召喚器と棍を持って戸締り確認もしていざテレビの中に!と思った直後、ポケットにいれていた携帯がにぎやかに着信音を鳴らした。な、なんだタイミングいいな…!テレビの中だと鳴らないし落とすのもやだからおいていくのにポケット入ってたか…!けど鳴っているのを無視もできないので名前も見ずにあわてて電話に出ると、一拍おいて「ちとせか」と電話の向こうから女の人の声。えっうっみ、美鶴ねえさ…!?
「え、え、えっ、ど、どうしたの?今朝のメールなら」
『いや、あれは見た。…今聞いたんだが、ちとせの居る市で殺人事件があったんだろう?』
「え?あ、うん、そ、そうみたいだけど私も今ニュースで初めて知った」
姉さんと電話するのなんて何か月ぶりだろうか…!忙しい人だから時間があいたときにメールするくらいで、で、電話なんてほとんどしないのに…!思わぬ人からの電話に緊張しまくっていれば、姉さんは電話の向こうでくすりと笑う。
『そんなに緊張するな。私まで緊張するだろう?』
「あ、ご、ごめんなさい」
『無事ならいいんだが…一人暮らしな上、桐条の別荘…と、見た目はいい家だろう、ちとせが心配で電話をな』
優しい声になる姉さんに、思わず笑ってしまった。湊も過保護だったけど、美鶴さんや…アキさん、ゆかりちゃんたちもすごく過保護な気がする。だけどそれが嬉しいのも事実だし…。
「ありがとう。でも私は全然平気だし」
『物騒だから、ちゃんと戸締りは確認すること』
「は、はい」
先生みたいに、それこそ昔のように言われたそれに返事をしたあと思わず笑った。そうすれば、姉さんもそれがわかったのか苦笑のような息を漏らして、だけどすぐに『一人ボディガードでもと思ったんだが』と言うのでそれは全力でお断りしておいた。こんっな田舎にある家にボディガードとか置いたら確実に明日からなんかひそひそ噂されることになるからねこれ!それでなくてもこの広い家に一人暮らししてるっていうのでご近所からなんか不審がられてるというのに…!
ボディガードをしきりに勧めてくる姉さんをなんとか丸め込んで電話を切ってから、気を取り直して私はテレビの中へと潜った。
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