「すげーどうでもいいこと聞いていい?」

 急に開いた門の側にいたのは、たまたま一緒に帰ることになった俺と米屋、それにちはるだった。まあ当然ながら俺たち三人で対応して、すぐに近界民は倒せた。というかちはるが一番に突っ込んで行って俺たちの出る幕なんてほぼなかったと言ってもいいけど。どちらかといえば可愛い、という見た目のくせに戦うのが好きなのかと思うほどあいつはすぐに近界民へ突っ込んでいく。何回か同じ任務をこなしたことはあるもののだいたいすぐに突っ込んでいくのだ。いつもはフリーで動いているからだろう、チーム戦には慣れていないのかと最初こそ思ったものの、突っ込んでいきながらもチームのことを考えた動きをしているのは本当にすごいと思う。あんななんにも考えてなさそうなのに。

「どうでもいいことなら聞くなよ出水」
「いや聞く。ちはる」
「んー?」

 事後処理も終わり帰路を進もうと歩き始めたときに、前から少し、いや、かなり気になっていたことを聞きたくて口を開けば米屋はともかくもちはるもさも興味なさげに返事をする。いやまあいいけど。

「なんでお前戦う時スカートなんだよ」
「……出水おまえ……」
「いや一緒に戦うとさすがに目につくだろ」
「そりゃ、まあ」

 ここでちはるが「なにいってるのドン引きなんだけど」とかいうキャラならさすがに俺だってこんなこと聞かない。けどちはるは多分こんなこと聞いたとしてもそんなことは言わないだろうし逆に教える代わりにお菓子を要求してくるようなヤツだ。そう思って尋ねたら、しばらく間を開けて「ああ」とちはるがひとつ頷いた。妙に反応が鈍いのは気のせいか。

「ボーダーができたころはちゃんと……なんていうの?ホットパンツ?だったんだけど似合わないってすごいブーイングもらってスカートにしたんだよねー!」
「ブーイングって」
「主に悠一になんだけど。わたし基本的にズボン似合わないし……ちっちゃいとズボンもないし……足もむちむちしてないからホットパンツはやめろって……」

 常に私服もワンピースかスカートだよ!と怒るちはるは俺たちを見上げながら言うもののどこから突っ込んだらいいのかもはやわからなかった。っつーか迅さんなんてことちはるに言ってんだ。それを俺たちに言うちはるもどうなんだ。まあスカートでちはるが戦うことにはある程度慣れてきているものの俺らだって一応男子高校生という部類である。スカートの中身が見えそうになればそれはいくらちはるが見た目小学生中学生くらいで童顔でそういう対象にならなくとも見てしまうのが男の習性だろう。

「公平今すごい失礼なこと考えてる気がしてきた」
「ちはるー出水には極力近づくなよー」
「はあい陽介」
「おまえらひどいとか言われない?」

 まあスカートの理由はわかったけど聞いたからと言ってどうにかなる問題でもなさそうだった。せめてもの救いがこいつがフリーであって俺のチームではないことだろう。こういう日や任務が重ならない限り一緒に戦うということは滅多にない。から任務中にスカートの中身を心配することもない。

「まあスカートの中にちゃんと短いスパッツ履いてるから見えても問題はないよ」

 その一言で安心したようながっかりしたような妙な気分になったのは俺だけじゃないと信じたい。米屋に視線をやれば、こっちの話は全く気にしていないのかポケットを漁って何かを探しているようだった。おいおまえ俺のこの落胆を共有しろよ。男だろ。

「ちはる、ほら」
「……!キャラメル!」

 ポケットを漁っていた米屋は探していたものを見つけたのかそれをちはるに差し出すとちはるがきらきらした目をしてキャラメルを受け取った。ひとつぶだけのキャラメルでそんなに喜べるってすごいな……誰かが飴やらキャラメルやら渡してるところ見るたびにそう思うけど。宝石でももらったんじゃないかと思うレベルの目の輝きだ。

「た、たべていい?」
「好きにしろって」

 言うなりちはるはキャラメルを口にいれて、えへへ、と頬を緩めて笑う。こうやってみると完全に子供だ。ただ飴やキャラメルひとつでここまで喜ばれるのだから、ボーダー隊員に限らずクラスメイトや周りの人間がちはるに餌付けをしたくなる気持ちはわからないでもないなとは思うけど。本部にちはるが居る時に行けば大抵お菓子を抱えている気がする。そういや風間さんもちはるに飴を渡しているところを見たことがある気がする……。おそるべしちはる……。

「陽介ありがとう!だいすき!」

 言うなりちはるはぴょんと米屋に抱き着いて米屋ごと一回転したあとにスキップでもしそうな勢いで先を歩き出した。米屋はといえば無言で固まっている。かと思えばしばらくしたら大きなため息をついて後ろ頭をかいて、もう一度前を歩くちはるを見てため息をついた。

「……おまえも大変だな」

 小さく言った言葉はきっと米屋にもちはるにも聞こえてはいなかっただろう。

戻る