思わず刀の柄を握り込んだ拳が震えた。そうかもしれない、という可能性に見ないふりをしてきて、新聞記者との会話の中で見えてきたその疑念に、ガイが昔私に言った言葉の真意を見ないふりをしてきた結果が、今なのだろう。
「……」
ロイドたちがアリオスと戦っているのが、まるでどこか遠い国のおとぎ話のようだと思った。
唖然と立ちすくむ私を、ランディが気にしてくれているのがわかった。
何が正しいのか、誰が正しいのか。そんなの今の自分にはとうてい分かりそうもない。理解が追いついていない。
ただ、私は特務支援課という組織の人間で、私たちはキーアを追いかけてきて、キーアはなにかの装置に繋がれていて。あれを起動させてはいけない。私の中の何かが呟いた。あれの起動を阻止するための私たちの邪魔をしているのはほかの誰でもないアリオスだった。じゃあ私のすることはなんだろうか?
アリオスの一撃に、ロイドがトンファーで耐える。それでもその衝撃にバランスを崩したロイドはアリオスにとってはいい獲物だろう。剣を振りかぶったアリオスとロイドの間目掛けて、ランディが走るのが見えた。けど間に合わない。思った瞬間、私は刀を握りこんで地面を力いっぱい蹴る。その力のままはね飛ぶようにアリオスの懐へ入り、剣をいなしてアリオスの腹を蹴り飛ばした。
「ぐっ……!?」
突然のことに反応の遅れたアリオスは、私から距離を置くことで手一杯だったらしく剣を振った勢いと相成ってバランスを崩す。その隙をついてアリオスの剣めがけて、私は私の膝を膝蹴りの勢いで近づけた。ぎょっとしたような雰囲気をロイドたちや、目の前のアリオスから感じたと思ったら、マリア、と後ろでランディが叫び、アリオスがそれに弾かれるようにして自分の剣を引く。
焦ったようなその表情は、以前と同じアリオスのものだった。無表情で私たちに剣を振るうアリオスではない、私と出会ってすぐのころのような。兄のような顔をした。
アリオスの間近にいる私が何をしようとしたかわかってか、アリオスが咎めるように私を見る。けど、今のでなんとなく、わかった。何かある、と。ここで私たちをどうにかしようとしているのなら、きっと一番の戦力である私を潰すだろう。あの勢いで剣を膝蹴りしたところで、私の膝が半分ほど切れるだけだ。でもそんな怪我であれば私なら三日もあれば治ってしまう。仕事のことでそういった私情を持ち込むわけではないだろうけど、アリオスは、何か、迷っているようにも見える。
「……ねえアリオス。私、誰にも言ってない私の秘密があるわ」
「……何を……」
「セルゲイにも、アリオスにも言ってないことよ。……唯一知ってたガイは、いなくなっちゃったもの。俺以外に言わない方がいい、って私に言って」
言いながら、アリオスの手首を蹴りあげる。さすがに剣を離すことはなかったけど、痺れたのかもう片方の手で剣を支えていた。そこへエリィのアーツが完成して、アリオス目掛けて雷が落ちる。けれどそれを寸でで避けたアリオスに、私が一気に間合いを詰めて刀をアリオス目掛けて振るう。がぎん、と刃物がこすれて火花が散った。
「本気で戦わないと、殺しちゃうかもしれないわよ」
冗談めかして目を細めて笑えば、アリオスが口元だけ笑の形を作った。
20171009
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