対峙する鴨志田の横に媚びるようにやってきた水着姿の高巻杏と玲花の姿に、驚いたのは暁と竜司、それにモルガナだけだった。
ふらりと真っ青な顔をしてよろめいた玲花は、口元を押さえて浅く呼吸をしている。
自分では無い自分を見たという衝撃もさることながら、玲花にとって耐え難い光景だというのは暁にも理解ができた。
水着姿という裸も同然の格好で、鴨志田に腰を引き寄せられる玲花は優しく微笑んで鴨志田に擦り寄っている。されるがままであり、ぴたりと密着しているのは素肌だ。
見ているだけでも気分が悪くなるような光景なのに、当事者である玲花の気持ちは計り知れない。
よろめいた玲花を支えるようにした暁だったが、小刻みに震える玲花の呼吸はずっと浅いままだった。
「なんだ、桐生、おまえはこっちだろう」
ぐっと水着姿の杏と玲花を引き寄せた鴨志田が、顎をしゃくる。暁の横で震える玲花に向かって、こちらへ来いと言わんばかりに。
「玲花」
「……い……!」
震える玲花が何か言ったが聞き取れず、暁が聞き返そうと口を開いた瞬間。
玲花は暁から銃を奪うと、両手で鴨志田のほうへとそれを向ける。面白そうに鴨志田は金色に光る目を細めるが、向けられた銃口が激しく震えているのを見て嘲笑った。
「撃てないだろ、そんな震える腕じゃ。大人しくこっちに」
「…るい……」
「ん?」
ぱっ、と玲花は視線を上げた。構えた両腕の震えは止まり、浅く多かった呼吸もぴたりと止まる。息を止めている訳では無いらしいが、玲花を支えていた暁の手は今は何も支えていない状態になっている。
ふ、と玲花が息を吐いた瞬間。ダン! ダン! ダン! と玲花の構えた銃が三度銃弾を吐き出した。その弾は真っ直ぐに、鴨志田──の横に侍っている玲花へと吸い込まれたようだ。
「気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い!」
水着姿の玲花は微笑んだままその場に崩れ落ち、足を撃たれたのか立ち上がることはできないらしい。
まさか撃つとは思っていなかったその場の全員が呆気にとられる中、玲花は燃えるような瞳で鴨志田と、そして倒れ込んだ玲花を見ていた。
「お、おい、桐生! 落ち着けって!」
竜司が叫ぶが、玲花の耳には届かない。
「死体を愛でる趣味があるなら好きにしなさいよ、鴨志田」
水着姿の玲花は微笑んだままだが、撃たれた箇所からじわりとその体が消えていく。認知の世界だと言うわりにファンタジーだなと思うが、もう一発撃ち込もうとする玲花の手をおさえて銃を回収した。
途端、ぷつりと糸が切れたように玲花はよろめいて、再度暁が背中を支えてやる。
背中越しに分かるほど玲花の心臓は早く、呼吸もまた浅く、早い。苦しいのか口元をおさえている玲花を、暁は抱き込んで肩につかまれるように持ち上げる。
鴨志田が油断しているのだから逃げるのが最適だろう。そう思って。
モルガナもそう判断したのか、未だ飲み込めないと言わんばかりの竜司に「おい! 行くぞ!」と声をかけて、その場を駆け出した。
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