ハートのホワイトデー
世の中では先月、聖バレンタインデーというイベントがあった。
基はどこかの国の製菓メーカーが販売戦略のために考え出したことらしいが、世の中ではそのイベントは広く知れ渡っている。
わたしも一応イベント事は好きなので、たまにはそんな甘ったるいのもいいだろうと板のチョコレートをたくさん買って、ちまちまトリュフなんぞを作りクルー全員に配った。
「泥団子かと思った」とか言いやがったシャチはぶん殴ったが、それでもみんな味に関してはおいしいと言って、それなりに喜んでくれた。
わたしとしてはそれだけで満足だったし、そもそもこいつらがホワイトデーとか気にするとは思っていなかった。ああ、まったく、これっぽっちも期待してなかったね!
「しかしまぁ誰一人話題にもせんとは…」
男所帯なんてこんなもんかね。あーあ、かわいい女の子がほしい。あ、わたし以外のね。なーんつって。…ははは…笑えねー。
「おいなまえ」
「ん?あ、キャプテン!」
「やる。持ってろ」
「え、あ、はい。…はい?」
渡されたのは白い紙切れ。Why?ホワイトな紙だけに。
あ、あれか。ホワイトデーだからホワイトなものをくれたってことかな。やっだキャプテンたらおちゃめさん!意外!…いやいや、ないない。だってキャプテンだし…。し、しかしこれどう見ても紙切れ…。
「…なに一人で百面相してんだお前は」
「キャ、キャプテンからもらったものならなんだって宝物です!ええ!大事に額へ入れさせて頂きますとも!」
「ビブルカードを額に入れてどうすんだ」
「そうですか、じゃあ写真立てに…びぶるかーど?」
「必要になるかは分からねえが、ないよりはあった方がいいだろ」
「…そっスね」
そのままスタスタと何処かへ行ってしまったキャプテン。
キャプテンのビブルカードはクルー全員に配られていた。
ハートの海賊団にホワイトデーなんて日は存在しない。
別に、まったく、これっぽっちも期待はしていなかったからいいんだけど。
来年は、多分バレンタインデーもなくなると思う。
お返しが欲しいわけじゃないけど、誰一人触れてこないとそれはそれで悲しい気がする。
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