ズルい大人のリゾットさん


◇悲恋というか暗い。


「リーダー、今回の報告書です」

なまえがこの暗殺チームに配属されて1カ月、彼女とは仕事以外の会話をしたことがなかった。
真面目というよりは、むしろわざとそういう風に振る舞っているように感じた。

「あの、わたし今からコーヒー淹れますけど、リーダーも飲みますか?」

彼女が配属されて3カ月。
くだらない話こそしないが、アジトに居れば一言二言の会話をするようになった。

「リゾットさん、少しは休憩した方がいいですよ?コーヒー、淹れましょうか」

半年が経つ頃には、オレやメンバーにも笑顔を向けるようになった。
来たばかりの頃に比べ、随分と人間らしくなったと思う。…暗殺者としてそれは喜べないことかもしれないが。

「わたし…好きに、なってしまったんです。…リゾットさん、あなたのことが…っ」

1年後。
涙を流しながら告げるなまえは、恐らくもうオレのコタエを分かっていたのではないだろうか。

「…ありがとう」

下唇を噛みしめて俯くなまえの頭をそっと撫でれば、彼女は一度だけ頷いた。

明日もまだ、彼女はオレに笑いかけてくれるだろうか。

そんな残酷なことを願うオレは、きっと酷く、歪んでいるのだろう。



幸せになんてなれないししてあげられないと思っているけれど手放すこともできないリゾットの話。




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