仗助くんは気に入らない
おれとなまえちゃんは、よく幼馴染という言葉で括られる。
そりゃあ家が近所で幼稚園から高校まで同じところに通ってて、クラスも何度か一緒になったこともある。
なまえちゃんのお袋さんとおれのお袋も仲良くて、おれたちもまぁ…仲良くやってる。
けど、おれはその括りがどうにも気に入らない。
「仗助くん、どうしたの?大丈夫…?」
「え、いや…なんでもない、大丈夫。ごめんな、なまえちゃん」
「ううん、暑いもんね。ぼーっとしちゃうの分かるよ」
「あー、うん。ほんと暑くてまいっちまうよな〜…はは、」
話を合わせて曖昧に笑うおれに、隣を歩くなまえちゃんも「ほんとだね」なんて言って小さく笑う。
休みに女の子と二人で街へ出かけるなんて、まるでデートだ。
例えこれがお袋から言われた買い物ありきであったとしても、おれはそれでもそういうつもりでここに居る。
でも多分…なまえちゃんは違う。
『仗助だけじゃあ心許ないから、よかったら一緒に行ってやってくれない?』
そうお袋に言われたから。ただそれだけのことだろう。
おれたちは幼稚園の頃からなにも変わらない。
『仗助くん』、『なまえちゃん』という呼び方も、お互いの家に招き招かれることへの抵抗も。
そして、二人きりで居る時の無防備さでさえも。なにも…。
おれたちの関係は一切変わらないまま、ただおれの気持ちだけが変わっちまったんだ。
「あ、着いたよ仗助くん。…やっぱり杜王町のと違ってS市の亀友はおっきいねぇ」
「おれも久々に来たけど、こんなに広かったっけか…って、これ毎回言ってる気するぜ」
「ふふふっ、迷子にならないようにしなくちゃね」
…ああ、ここで「それなら手を繋いで行こう」って言えたら、少しはこの“幼馴染”とかいう殻を破ることができんのかな。
僅かに動いた手は、結局なにも掴めないまま。
壊したい。壊せない。壊したくない。
どっちつかずの自分が、一番気に入らない。
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