露伴くんの真意が読めない
「ろ、露伴くーん、お邪魔しちゃいましたよー…?」
「…」
そっと彼の仕事部屋の扉を開けて、自分なりの大きすぎず小さすぎないボリュームで声をかける。
部屋の入り口からでは露伴くんの背中と、いったいどうしたらあんな緻密な絵が描けるのか分からない動きをする腕しか見えない。
「(うーん…、仕事に集中しているだけなのか、約束の時間に遅れちゃったから怒っているのか…微妙すぎる…)」
もしも仕事に集中しているからこちらを振り返ってくれないだけならまだいい。
わたしが遅れたことも気がついてないということだし。
でも、もしあれが怒っているからこその無視だとしたら…とりあえず、今日のお出かけは中止になるだろう。
全力で露伴くんが機嫌を直してくれるように努めなければ。
約束をしていればともかく、そうでない時はピンポンを鳴らしても出ないことがあるからと、以前合鍵を貰っていた。
合鍵を貰った時は、嬉しいやらなんとも恥ずかしいやらで浮き足立っていたものだけれど、まさか初めて使うのがこんな微妙なシチュエーションだとは…。
部屋の入り口で突っ立っているのもおかしいし、邪魔にならないようにリビングあたりで待っていた方がいいだろうか。
でも、もし怒っているならきちんと誠意を見せるべきじゃないだろうか。
何度か片足を部屋に踏み入れたり引き戻したりをしていたけれど、そのうちわたし自身が「ええい、うじうじそわそわ鬱陶しい!」…と脳内で叫び、ついに仕事部屋へ踏み込むことを決意した。
開けた時と同じようにそっと扉を閉めて、露伴くんの少し後ろ…三角形の独特な本棚の前で体育座りをして待つことにした。
…体育座りに特に意味はないけど。
「ふー…」
体育座りをして約5分くらい経った頃。
ついに露伴くんがGペンだか丸ペンだかを置いて椅子の背もたれに身体を預けた。
これは少なくとも作業が一区切りした合図!
「なまえ、結構待たせてしまったな。キミが来たのに気がついてはいたんだが、思いの外筆が進んじまってね」
「えっ、ううん!全然平気。お疲れ様、露伴くん」
まずはなんと声をかけようかとほんの数秒悩んでいたうちに、なんと露伴くんの方からすぐにお声をかけられた。
その声と表情は、露伴くんが拗ねている時によく見せる、妙に演技がかったようなトーンではなくて。
そう、まさに通常運転。
これは、わたしの杞憂ということでいいんではないだろうか。
「…それはそれとして、どうしてキミは20分も遅刻して来たのか。納得のいく理由を説明してもらいたいところなんだがなぁ、なまえ?」
「ああ〜…それは…、」
…両方だった…。
やましいことは何もないので、正直に説明してご納得頂いた。
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