memo

さらにつぶやき



2023/04/14

子供が生まれてから数年経って、そういうことをするのも甘い雰囲気になるのもなくなってきた頃。
お互い冷めたとかではないんだけど、家事育児で忙しいし、向こうは仕事が忙しい時期が続いて色々と合わなくて。でも好きな気持ちは変わらないし、今更自分から誘うのも恥ずかしくなってて。夜、子供を寝かしつけた後、歯磨きをしようと中身がほぼなくなっている歯磨き粉を出すため、蓋の反対側を持って振っていたらキャップが取れて勢い良く吹っ飛んだ。
「ぶっ」「……あ」飛んだ先には旦那がいて、見事に顔面直撃。「……ちょっと、奥さん?」「ごめんごめん。旦那さん」って謝りながら手のひらを上に向ければ、蓋をそこに乗せてくれる。
どうやら瞼に直撃したらしく目をしょぼしょぼさせてる鉄朗に下から覗き込む形で当たったであろう場所に手を伸ばし、大丈夫?ごめんね、と声をかけると伸ばした手を上から包み込むようにして触れてきて、そのまま手背から指を絡め握ってくるから一瞬心臓が飛び跳ねそうになる。「大丈夫。だけど、ちょっと慰めて」ってさっきまでしょぼしょぼしてた可哀想な目が今度は企みを含んだ瞳でこっちを見つめてくるから条件反射で離れようとするんだけど、握る力を強め、腰に手を回してくるからそれは叶わず。「……ちょっと歯磨きしてから」って照れ臭さから弱々しく吐き出してしまう。
けれど、それを「かわいい」なんて言ってくるものだから、もう一度歯磨き粉の蓋を投げてやった。「いたっ!?ちょっ」「……」「ねぇーあとどれくらいで歯磨き終わる?」「……」「五分くらい?」「……」「鉄朗くんが歯磨きの歌歌い終わったら?」「……」洗面台で歯磨きをしている最中、後ろから抱きしめ上体を屈ませてこっちの肩に顎を乗せながら珍しく甘ったれた声を出す旦那に何を言っても負けてしまいそうだから、今はとりあえず黙ってようと心に誓った。

黒尾鉄朗