深夜のリクエスト



高校を卒業して一年が経とうとしていた頃。

「なまえちゃん、おつかれ〜!」
「お疲れ様です!」
「なーに?ニヤニヤしちゃって。また好きな人?」
「はい!」

バイト終わりにスマホを覗けば、メッセージがひとつ入っていた。何分か前のもの。『俺は今おにぎり』の文字の後におにぎりの絵文字が吹き出しの中に表示されている。私が今からサンドイッチを食べると送った返事がこれ。こっちがサンドイッチの絵文字をつけたからかは分からないけれど、おにぎりの絵文字を打つ鉄朗くんは凄くかわいい。

スマホを見ながらうっとりしていると、横からお世話になっているバイト先の先輩に「一途ね〜」のお言葉をいただいた。

「今おにぎり食べてるみたいなんです。凄くかっこいい…!」
「おにぎり食べてるだけで?」
「はい!かっこ良さの中に可愛さも兼ね備えていて!逞しいお体なのでおにぎりなんてこんなに小さいんですよ!かわいいっ」
「力士か何かなの?」

顔の前で人差し指と親指で小さな丸を作りおにぎりを表せば、力士なのかと突っ込まれた。
具材は何だったのだろう。好きな人の食べたおにぎりの中身すら気になってしまう。だけど、聞いてしまったら重いと思われるかな。なんでそんなことまで気になるんだって。鉄朗くんはそんな風には思わないだろうけど、聞くのを躊躇う。でもっ、気になるぅぅ〜〜!!

「……あっ」

ピロンと吹き出しが追加された。その中には『久しぶりに鮭食べたけど美味しいな』の文字。控えめに言って大好き。好き。

「鮭おにぎり食べたんですって!鮭ですよ!鮭!!!シャケ!」
「あ、うん。……え?鮭のおにぎりってなかなか手に入らないものだっけ?違うよね?普通に売ってるよね?」
「はい!すごい!かっこいい!!」
「なにが?どこが?」

全ての発言に反応してくれる先輩。いつも優しくて、働き始めてからずっとお世話になっていて、可愛がってくれる。そんな先輩が私に心配そうな眼差しを向けていることには気づかなかった。脳内は鉄朗くん畑。鮭が咲いた畑に鉄朗くんが微笑みながら立っている光景しか今の私の脳内にはなかった。

だから、「今度、私の知り合いと飲みに行かない?」「なまえちゃん、可愛いんだからあなたのこと好きって人絶対いるよ」というお誘いに脳内鮭まみれの鉄朗くんになってる私は元気良く「行きます」の返事をしてしまった。

先輩は勘違いしていた。彼氏の鉄朗くんではなく、片想いの相手が鉄朗くん、だと。そして、私も勘違いされているという事実に気づけなかったのだ。






「あ……えっ、と」
「なまえちゃんは未成年だからお酒飲まなくていいからね」
「え、あっ」
「困ったことあったらすぐ言ってね」
「そ、うじゃ…なく」

お誘いから数日後。シフトが被っていた先輩とそのまま居酒屋に向かえば、男女複数人がお店の前に立っていた。そして流れるまま大部屋の個室に通され、今に至るのだが。これは、なんていうか……、これは、合コンじゃない!?合同コンパというやつじゃない!?初めて来たぁ〜……じゃなくて!これってもしかして、もしかしなくても、浮気になってしまうんじゃない?一刻も早くここから出ないと、と先輩に声をかけるため立ち上がるが、幹事なのか慌ただしく切り盛りする姿に話しかけることが出来ずにいた。しかも、結構な人数いるから大変そう。良いタイミングで声をかけようとするも、そのタイミングが現れなくて盛大に空振りしまくっている。近くにはいるのに話が出来ない……。

そうしてる間に結構な時間が経過していた。未だに帰る機会を逃し、周りと軽くコミュニケーションを取りながらアップルジュースを飲んでいる。でも、そろそろ本当に言わなきゃ。緊張した雰囲気も最初より大分収まっているし、いける気がする。私はいける…!孤爪くん、力を貸して!そうアップルジュースを見つめながら決意を固める。
良いタイミングが現れないのなら、強引に作らせてもらおう、孤爪くん!の精神で勢いよく立ち上がり口を開いた。

「先ぱ……」
「悪い!遅れたーー!!!高身長イケメン連れて来たから許してくれ!!」
「……え」

立ったと同時に開いた扉から姿を現したのは、明るめな髪色をした男の人と独特の髪型をしたエロッでイケッな私の大好きな人だった。

「聞いてねーよ、俺帰る」

そう言って、個室に足を入れる前に踵を返し去ろうとする鉄朗くんと一瞬目が合った、気がした。気がした、じゃない。確実に目が合った。だって、こちらに背を向けたはずの彼氏が勢い良く私の方を振り向いたから。珍しく間の抜けた顔でポカンと口を開けていたから。それから直ぐに何かを考え込むように顔を険しくさせ、ジッと見つめられてしまえばここに来てしまった罪悪感から冷や汗を流す。

違うの…!これは誤解なの…!誤解です!合コンって知らなくて。いや、知らないっていうのは私が悪いんだけど!って、そうじゃなくて!!鉄朗くん、嫌な気持ちになったよね。傷付けてしまっただろうか、悲しませてしまっただろうか。あああぁ、どうしようどうしよう。と、取り敢えず……

「……っけ!…ぃ…けっ」
「なまえちゃん、何やってるの?」

アイコンタクトを取るため、高速ウィンクを送ってみることにした。いけっ!届け!と願いながら。そしたら先輩に何をやっているのか聞かれてしまい、誰かタイプの人いたの?良い人いた?と耳打ちされたが、そうじゃない。確かに超ド級の私の心臓ど真ん中のタイプの人はいましたけど!!
チラリと鉄朗くんの反応を伺うのに、先輩に向けていた視線を移し、確認してみれば、

「……」

ま、真顔だ。無反応……。お、怒ってる……?

「〜っせ、んぱい」
「?どした?」
「あのっ、私、かえ「はーい!高身長イケメン、ここ座りまーす」……!?」

帰ります。ごめんなさい。と伝えようとした時。髪の明るい方が高身長イケメンを私の前に座らせた。その瞬間、背筋がピンっと張る。

「……どうも〜」
「……」

目の前に腰を下ろした大好きな人から作り物の他人行儀な笑顔を向けられ、更に背筋を伸ばす。うっ、怒ってる……?目が、笑ってない。

「鉄ろ「お!どうもでぇーす!」……ど、どうもでござんす」
「ござ……?」

今は何をやっても上手くいかない。何をしたらいいのか自分でも分からなくなり、どうもの返しすら何を言っているのか分からなくなる。鉄朗くんの隣に座っている男の人がきょとんとしているのすら視界に入らない。頭の中はパニック状態で、鉄朗くんを傷付けてしまったかもしれない、怒らせた、そもそもどうして鉄朗くんはここに来たのだろう?もしかして飽きっ、私のこと飽きッ……などと、ここへ来た鉄朗くんが最初に発した「聞いてねーよ」の言葉をきちんと耳に入れたはずなのに、すっかり自身の脳内から消え去るくらいには混乱していた。

「……ブッ」
「……え」

しかし、こちらの焦りを吹き飛ばす程の「ブッ」が聞こえ、目が点になる。笑った……?顔を背け、声を殺し、肩を震わせている鉄朗くんはどう見ても笑っている。またも混乱する私を置いて愛しの彼は無言で席を立つ。大きな体を動かし、ゆっくりこちらへやって来る鉄朗くんにいつもとは違う動悸を起こしながら視線だけで姿を追えば、私の隣に腰を下ろした。

「?……??」

複数の疑問符を頭の上に浮かべ相手を見つめれば、その先にいる他の方達も既に定位置には居らず、各々好きな場所に移動していた。私が今座っているところは端で、隣り合わせでいるのは鉄朗くんだけ。さっきまでそこにはバイト先の先輩がいたのだけれど、いつの間にか姿はなくなっていた。鉄朗くんと一緒にやって来た人も挨拶をして直ぐ御手洗に行くと席を外したから、今私の周りには一人しかいない。

「隣にいた人ってなまえの友達?」
「えっ、あっ、いや、バイト先の先輩…!」

先輩は今どこに行ったのだろうと周りを見渡す。私のことを気にかけてくれていたから忙しくてもなるべく隣にいてくれた。せっかくの場なのだから、出来れば私のことは気にしないで好きなところへ、気になる人のところへ行って欲しい。
そんなことを考えていた時に、隣から頬杖をついて手のひらで口元を隠し質問されたものだから、挙動不審に返事をしてしまった。口元を隠しているせいか、小声だからか、声がこもっていて。なんというか、これは……

「えろ、だ……」
「え?」

え?って言った。今、鉄朗くん「え?」って言った。かわいい。え?ってきょとんとしてる。かわいい。

「先輩に誘われたの?」
「えっ、あっ!う、うん。……っあの!ごめ「あれ?そこの子。……そう、なまえちゃん!飲んでなくない?」わっ、あ、りがとうございます」

鉄朗くんに謝罪と説明をしようとするも、またタイミングが悪く最後まで言い切れず終わった。初めの頃に話をしていた人がこっちを気にかけてくれ、誰かしら飲むだろうと頼んだ飲みやすいカクテルを目の前まで運んでくれた。楽しい雰囲気を壊してしまうことを恐れ、せっかくいただいた飲み物を受け取り、お礼を伝えてからグラスを自身の元へ引き寄せようした時、横から奪われてしまう。

「あれ?りんごジュース頼んだの誰?」
「あ、それ俺の」
「はぁあ?なんでだよ、飲めよ。可愛い子アピールかコラ」
「今は可愛い男子がモテるらしいぜ」
「え、まじ?」
「いや?知らねーけど」
「は!?」
「ぶひゃひゃひゃひゃっ」

鉄朗くんの大学のお友達なのだろうか。この会が始まる前にみんな同じ大学だって言っていた。鉄朗くん、楽しそうに笑っている。
そして、会話をしながら、私が受け取ろうとしたアルコールを自分の元へ持っていき、頼んだりんごジュースを私の前に置いてくれた。こういうことを自然に出来てしまうから世の乙女達は彼に落ちるのだろう。私もその内の一人ですけどね!チョロっとコロコロしちゃいましたよね!だってかっこいいんですもの!

隣から輝きを感じ、眩しさから高速瞬きを繰り返していると、飲み物をくれた方から質問を投げかけられた。

「こいつ可愛いと思う?」
「はいっ!!!!」
「返事早ッ!?マジかよ!?どこが可愛いの!?」
「全てです!」
「全てぇ!?」

テンポの良い返しとリアクションに目をキラキラさせて返事をする。なんか芸人さんと話しているみたい。もちろん本物と話したことはないけれども!
私達のやりとりを横から見ていた鉄朗くんは、ははっと声に出して笑った後、そのまま前を向いている私の方へ顔を近づけてきた。急に視界いっぱいに広がる大好きな人の顔。いきなり横から現れたこと、距離、好きな人がすぐ目の前にいるということから心臓が一瞬跳ね上がる。そして、数秒。じぃーっと熱視線で見つめられ、跳ねた心臓が今度は速さを増し動き出す。

「かわいいって思ってくれてんの?」
「そ、れはもちろん…!」
「へえ。じゃあ、」
「……」
「この後一緒に抜けようか」

ゴンッ。音を立てて思い切り額をテーブルに落とした。なになになに。なんですか!!えろ、エロ、ero…!エロの三拍子!チャッチャッチャチャチャッ!と私の脳内では数人の鉄朗くんが舞い踊っている。
しかも、テーブルの下にある床に置いていた私の手を軽く覆いかぶせるように触れてくるものだから、平常心を保つのに必死で。その触れた大きな手に上から握られたと同時に頷こうとすると、

「黒尾が女の子口説いてる……!?」

有り得ないとでも言っているような表情で目を見開く男の人にそう言われ、頷くために下げようとした頭が停止する。続けて、「初めて見た」「お前そんなこと言うんだ」「てか、彼女いなかった…?」と、どんどん言葉が口から出てきて最終的に視線を彷徨わせてから、ハッとする鉄朗くんのお友達。

「……は!?黒尾、何でここにいんだよ!?ここにいて良いのかよ!?」
「良くねーよ。騙されたんだよ、人数合わせで」
「早く帰れよ!彼女可哀想だろ!ここは俺が何とかする!つか、一人抜けたくらいでバレねぇから。こんだけ人いると」
「おお、さんきゅ。助かるわ」
「おう!連れてきたの伍郎だろ。一発入れとくか……ちょい待て待て待て!その子連れてっちゃダメだろ!」

私の手を掴み席を立ち、そのまま一緒に連れていこうとする鉄朗くんにお友達は声を上げ、そんな彼に鉄朗は平然と言ってのける。

「いや、この子が俺の彼女」
「彼女ぉお!?」
「あっ、鉄朗くんとお付き合いさせてもらっています。みょうじなまえです!」
「何でここにいんの!?」

合コンっていう説明を聞き逃していて、という理由を伝える前に鉄朗くんが「それはまた後で」とだけ挨拶をしたため、答えなかった。そして、腕を引かれながらお店を出る。外は真っ暗で、さっきまで色んな声が聞こえていた室内とは真逆で静か。店内から微かに届く笑い声。まだ肌寒いこの季節に体を少し震わせながら、鉄朗くんの顔を見上げれば、目に映った彼の表情に心臓が凍りつく。

怒って、る…。眉間に皺を寄せて、険しくなってる。目付きも凄く、よろしくない、気がする。

「ごめんなさい!!!!合コンって知らなくて…!いや、言ってもらってたんだけど、よく話聞いてなくて!本当にごめんなさい!」
「誰かに言い寄られたりしなかった?」
「……え?」
「俺が来る前」
「……しなかった、けど…?」
「そう。なら良いんだけど」
「……」

はぁぁ…と安堵するように息を吐き、顔を片手で覆う鉄朗くんによく理解出来ず、数回瞬きを繰り返す。

「怒ってないの?」
「怒るっつーか、焦った。焦って、嫌な態度取ったの、ごめんな」

嫌な態度って……?そんな態度してただろうか。首を傾げ考えていれば、苦笑する鉄朗くんに頭を撫でられた。そもそもどうして鉄朗くんが焦るのだろう。私は鉄朗くん以外好きにならない自信しかない。ああ、でもそれを伝えなきゃ意味がないのか。

「私!鉄朗くん以外に性として好きにならないから!!性的に好きなのは鉄朗くんだけだから!」
「性……久しぶりに聞いたな、それ。まあ、そこはそんなに焦ってないんだけど、逆があるだろ」
「逆?」
「なまえのこと良いって思う男がいるってこと」
「……まさかぁー!!そんなのあるわけないよー!!」
「あるの。もう少しなまえちゃんは自覚を持って貰わないと困るんですぅ〜」

ないと思うのに。前にもこんなやりとりはしたことがあって、その時「ない」「ある」を永遠に繰り返したから黙って言葉を呑み込むことにした。でも一度だけ孤爪くんとそういう話になった時、「この世にはたくさんの人がいるからね。クロみたいにみょうじのこと好きって人、いるんじゃない」と言われ、納得したのを覚えている。
うんうん、と頷き自己解決していたら、鉄朗くんが口を開く。

「ていうか、俺もここ来ちゃってごめん」
「う、ううん!秘密にされてて連れてこられちゃったのは仕方ないよ!うん、大丈夫だよ!」

ただの飲み会って言われたら仕方ないもん。問題は話を聞いてない、且つ直ぐにあの場から抜け出さなかった私が不味いのだ。でも、欲を言えば、騙されても行って欲しくはないのが本音。そのことを素直に言えるほど私は勇気ある人間ではない。

「本当に?」
「えっ!?」
「合コンって秘密にされてたら行ってもいいの?」
「行っちゃイヤ!!!!嘘ついちゃった!ごめんなさい!」
「ははっ、即答。よろしい」

どうしていつも鉄朗くんは言えない本音に気づいてくれるのだろう。こんなに好きで好きでたまらない人が自分と付き合ってくれてることが幸せで仕方ない。

「なまえはちゃんと話聞いてね」
「うん!」
「で、今回は何考えてて話聞いてなかったの?」
「鉄朗くんのこと!鮭が咲いた畑に鉄朗くんが微笑みながら立っているのを想像してたんだ」
「……あ、そう」
「誰かと話してる時は考えないようにするね」
「そうしてください」

これからは脳内に鉄朗くんが現れても直ぐ脳内停止ボタンをかけよう。お話している相手にも失礼だ。例え、鮭が咲いた畑に鉄朗くんがいても、だ。先輩にも申し訳ないことをしてしまった。

「あっ!ちょっと先輩に連絡だけしてもいい?」

そう言い、お店から離れる前にメッセージだけ入れておく。その間、掴まれていた手が離れ、送り終わって鞄にスマホをしまったと同時に今度は指を絡ませるようにして繋いでくれた。もう一度、心の中で謝罪とこれから気をつけようと決意し、隣を歩く大好きな人を見上げ頬を緩ませる。私の視線にすぐに気づいた鉄朗くんは小首を傾げて微笑み返してくれる。好きだ。「ん?」って言ってる顔だ。

「このまま家来る?」
「え!?」
「だめ?」
「い、いいえ!!ダメじゃないです!!」

何で敬語?と軽く喉を鳴らすように笑われ、その色気に体が火照る。夜、喉を鳴らす、鉄朗くん。色気大爆発。
一人暮らしの鉄朗くんのお家には私の物も置かせてもらっているから急遽お邪魔しても問題はないのだけれど。そもそも初めから烏滸がましくも夜は共に過ごそうと思っていたけれど。違うの!私が考えていたことが鉄朗くんと全く違くて!それで驚いてしまったの!ダメとかじゃなくて!違う違う…

「ちゃ!」
「ちゃ?」
「あ。ち、違くてね!」
「うん」

違うの。そう伝えようと口にするも、早く早くと声に出したせいで、変な言葉「ちゃ!」が出てしまった。ちゃ?って聞き返す鉄朗くん可愛い。かわいいなぁ……ってそうじゃなくて!

「あのね」
「うん」
「鉄朗くんが、一緒に抜けようかって言ってくれた時、これは合コンでよくあるやつだ!って思って。その……その、」
「……」
「この後、ホテル行くのかなって思っちゃったのーー!!きゃぁぁぁー!!!恥ずかしいッ」
「……」
「だからね、お家に誘ってくれた時にびっくりしちゃっただけで!!誘ってくれたの嬉しいんだっ」

鉄朗くんの手を繋いだまま、口元を隠すように両手を持っていき、きゃあきゃあ叫べば、上からいつもよりワントーン低めの声が降ってくる。

「そっか」
「うん!変なこと言っちゃってごめんね!まだ時間あるし、鉄朗くん家で夜のお菓子パーティーしようよー!」
「そうだな。じゃあ、こっち」
「え」

急に進路を変え、手を引かれ、またも驚く。

「あ、あれ?そっち駅とは逆方向じゃ…」
「ん?いいんだよ、こっちで」

ホテル、こっち。と目を細め、口角を上げる鉄朗くんが最大級のエロで息を呑んだ。