ハッピーバースデー

「「「「誕生日おめでとう〜!!!」」」」


ぱぁんとクラッカーの弾ける音にびっくりしていると、ひらひら舞い落ちる紙片と一緒にお祝いの言葉をかけられた。状況が把握出来なくて、私の手を引いてここまで連れてきてくれた梅雨ちゃんに目を向けると、サプライズは成功ね、とにこりと笑みを向けられた。

「さ、サプライズって…」
「ほらほら、主役はこっちこっち!」

三奈ちゃんと透ちゃんに手を引かれ、あれよあれよとソファの真ん中に座らされる。目の前に並ぶ美味しそうなご飯やケーキ、肩にかけられた本日の主役!と書かれた襷に、やっと誕生日をお祝いしてくれてるんだと理解できて、嬉しくて照れくさくなってによりと口元をゆるめると、みんなもそれぞれ笑顔を返してくれる。飯田くんの音頭に合わせてジュースで乾杯すると、いつもより賑やかな夕食の時間が始まった。

「あれ、そう言えば今日はいつものシュシュしとらんね?」
「え?あ、あれね、この間の訓練の時にダメにしちゃって…」

お茶子ちゃんの言うシュシュとは、よく私が髪をまとめるのに使っているもので、淡いオレンジ色のシフォン生地がお気に入りだったもの。けれど、戦闘訓練中にちょっと無茶をして見事に千切れてしまったそれは、なんとか直せないものかと今は机の上でお休み中だ。

「そうなん!?ならプレゼントシュシュにしても良かったかもしれん〜」
「ね!この間かわいいの見つけてちょっと悩んだもんね〜」
「そうなの?でも、みんなで選んでくれたプレゼントならなんでも嬉しいなぁ〜」

手元のクラフト紙の紙袋を抱き締めてふふ、と笑みを浮かべると、みんなも照れたように笑い返してくれる。文具セットとか、おすすめの本とかがたくさん詰まったこれは、みんなが何人かのグループに別れて買い物に行き、それぞれ選んで来てくれたらしい。そのメンバーにはちゃんと勝己も加わっていたと聞いて、荒っぽかった幼馴染みも丸くなって協調性が身に付いたなぁ…と関心していたら、ソファの端に座る彼に何見てんだコラって怒られた。
…どうやら生温い視線がお気に召さなかったらしい。っていうか全然丸くなってないじゃん。

「みんな!宴もたけなわではあるが、明日もそれぞれ予定があるだろう!そろそろお開きにするぞ!」
砂藤くんや梅雨ちゃんお手製のご飯やケーキを食べて、男の子達が中心になって飾り付けてくれた風船や紙飾りと一緒に写真を撮ったりしていると、あっという間に夜が更けた。飯田くんの号令にみんなで片付けを始めていると、私が運ぼうとした食器類を、切島くんがひょいと拐っていく。

「片付けは俺らに任せとけって」
「そーそー。」
「つーか、幼馴染みくんがお呼びのようで?」

瀬呂くんがこそっと指差す先には、壁に背を預けた勝己が居て、私と目が合うと顎をつんと背けて廊下の奥へ消えていく。…どうやら着いてこいと言いたいらしく、私は肩にかけたままだった襷を瀬呂くんに任せると、早足で進む彼の背を追った。


「…………えーと?」
「すっとぼけてんじゃねぇさっさと受け取れや!」

声量は押さえつつも吠えられた私は、おずおずと差し出された紙袋を受け取った。勝己が持つにはやたらファンシーなそれは、どうやら駅前の雑貨屋のもののようで、もしや一人でこの店に行ったのかとそっと見上げると、文句あんのかと言わんばかりに見下ろされた。……行ったんだ…。

「開けて良い?」
「…おう、」

ぶっきらぼうに了承の返事をもらえたのでそっとシールを剥がしていく。袋が破れないように慎重に中身を取り出すと、ふわふわと柔らかい感触が手に乗った。…ねぇ、こんなかわいいシュシュ、ほんとに一人で買いに行ったの?

「……どう?似合ってるかな?」
「あ?俺が変なモン選ぶわけねぇだろうが」

ものすごい遠回しな似合ってるにちょっと笑って、手早く身に付けた柔らかなオレンジに触れる。以前のオレンジより少し濃い色のこれは、彼の個性の色に似ている気がしてすごく気に入った。
…だって、これを身に付けていれば、何時でもそばに居るような気がするから。

「ありがとう。大事にするね」

嬉しくてゆるゆるになった顔のままお礼を告げると、瞳を瞬いて視線を反らした勝己にわしゃわしゃと頭を撫でられた。
…それ、照れ隠しによくするよね。って言ったら逆ギレされそうだから、ちゃんと心の中にしまっておいた。