お誕生日

「明日も練習でしょ?早く寝なよ」
『あと、ちょい』
「ちょいって、あのさぁ。」

あんた、すでに眠そうな声してるのに、なにをそんなに頑張るのよ。
たしかに誕生日とは伝えたけれど、佐久早がこんな夜更かしして、眠たくなりながら祝われても明日に支障が出ても困る。
もうプロのバレーボール選手なのだから。
かれこれ20から働く私はもう今年で3年目を迎え東京で勤務している。
一方佐久早は今年から社会人になり、大阪でMSBYに所属している。
それこそ最初はなぜ大阪にこないだどーの、こーのと言われたが急に言われてもそちらに異動も、会社を辞めて行くこともすぐにはできない。
ゆっくり準備してからね。と佐久早をなだめて約4ヶ月、半年ぐらいにはこっちに来いとすでに言われてやっと準備を始めた段階である。

「にしても佐久早にしては珍しいね。どうしたの?」
『たまには』
「うん」
『今年はそっちいねぇし、電話日付変わるくらい待てるし』
「そっか、」

なんだかんだこの人は優しい人なのである。
すこし、人より潔癖で、物言いがきついところもあるけれどそれでもなんだかんだ人を考えられるひとなのだ。
だからきっといま私が一人で関東にいて、自分が居れない罪悪感とかを隠しながら私に電話をくれている。

「ありがと、佐久早。」
『別に。』

時計の針はあと数分で誕生日の日付。
苦痛ではない無言電話。こうした無言の電話が逆に心地が良い。
無理して会話したところで何を言っていると言われるに決まっているのが目に見えている。

『…おめでと』
「ありがとう」

全ての針が12を刺した瞬間に聞こえる大好きな人の声。
ぶっきらぼうで刺々しくも聞こえてしまうようなその声は私の好きな声。

『明後日オフだろ』
「やすみだよ、どうしたの。」
『明日の夜、そっち行く。12時前にはつく。』
「え、ちょ、佐久早『おやすみ』…おやすみ」

通話終了の合図を知らせる音が鳴る。
全くこの人は。と室内で一人小言を吐く。
サプライズとか、あるじゃん。やってよ。なんてわがまま言えないけどほんのちょっとの期待。ケータイには沢山の祝いのライン。高校の同級生から職場の仲の良い先輩や同期たち。

「ま、サプライズで来られても掃除とかちゃんとしてないと怒られるから前持っていってくれる方がもちろんありがたいのだけどね。」

明日の夜には佐久早が来る、さっさと掃除をしなければ。
そう思いつつもそのまま布団に潜る。
掃除は明日の自分に託そう。

翌日夜。佐久早がプレゼントで可愛らしいネックレスをサプライズでくれたのは私の一番の思い出になった。