山田くんとLv999の恋をする× KODZUKEN


(注意:「山田くんとLv999の恋をする」の漫画とのクロスオーバー(?)です)



『コヅケンさん、その装備いいですね』
『これは…西のダンジョンのレアスライム倒した時にたまに落ちる宝石で作れる』
『ああ、アレですか。時間なくてなかなか周回できてなかったんですけど今度挑んでみます』
『うん。でも山田のジョブだったら東の森の奴の方がいいかも…特防上がる』
『それ今周回中ですね』
『そうなんだ、流石だね』
「…」

休みの日に彼氏の家に転がり込んでみたけれど、今日も彼は終始ゲームに没頭中。中でも最近初めたオンラインゲームで気の合うフレンドが出来たらしくあんまり得意ではないくせに通話しながらゲームをするからゲームをやらない私なんていつも以上に放置されてしまう。

『…あ』
『…何?何かあった?』
『いや、すいません。やっぱ俺そろそろ落ちます』
『?いつもより早いね』
『ちょっと野暮用…いてっ、野暮じゃないですすみません。え、ちょ、茜さ…あ、すみませんこっちの話で。じゃあまた』
『うん、お疲れ』
「…」

何を話しているかは聞こえないけれど研磨の話の様子からどうやら相手の人は今日のゲームは終了したらしい。最近よく聞く“山田”の名前。調べて見たけどどうやら高校生ながらにプロのゲーマーらしい。なによ!うちの研磨なんて社長なんだからね!社長!

「……」
「…なまえ、視線が痛い」
「…ゲーム終わった?」
「あと20回周回したら今日のノルマ終わり」
「20!?いーやーだー!多いっ!」
「うるさい…」

ヘッドフォンを外し、キッと猫目が私を睨む。そうは言っても私にだってかまってほしい。そりゃあ勝手に押しかけたのは私だけど、2週間ぶりに会う彼女にもう少し構ってあげたいとかむしろ構われたいとかないんだろうか。

「…もういい帰る」
「…20回って言っても10分くらいで終わるから」
「帰る!」
「…」
「……馬鹿」

趣味の邪魔とかしたくないし、何より研磨の仕事は特殊だからこのゲームも仕事の一環なのかもしれない。けれど不定期な休みの彼と暦通りの休みな私。もう少し歩み寄ってもらえないとこの関係だってずっとは続けられるとは思わない。我儘かもしれないけれど別れたいなんて思わないし、私だってやれることはやってるつもりなのに…研磨はそうじゃないの?

「なまえ、待ってってば」
「もういっぱい待った。昼から家来てるのに今何時だと思ってるの」
「だからだよ。こんな時間に1人で帰るとかやめて」
「こんな時間まで放置したくせに今更優しくしないでくださいー」
「…はぁ」

開いた口は留まることなく悪態を吐き皮肉を紡ぐ。勝手に来たのは私なのに。違うの、喧嘩がしたい訳じゃない。なのにどうしてこうなっちゃうんだろう。大人になっても変わらない自分の幼い嫉妬心に嫌気が差して涙が滲む。研磨の好きなゲームに、更には顔も知らない高校生の男の子にも嫉妬するなんて大人の女として終わってる。

「…じゃあね」
「なまえ」
「え…わっ!?」
「…帰す気ないから。泊まってくと思ったから明日は空けてる。だからここにいて」
「…どうせゲームするもん」
「しないとは言わないけど通話とかはしない」
「やっぱするじゃん」
「なまえだって、SNSとか見るでしょ…それと、一緒」

それとこれとは違うとは言いたい気もするけど回した腕に力を込めて肩口に顔を埋めてしまった私の負けだ。普段スキンシップが少ない分研磨から触れられてしまえばこうも容易く落ちてしまう。ほんと、大人の女には到底なれないなぁ私。

「…ご飯作ったよ」
「うん…ありがと」
「アップルパイ買ってきたんだよ。研磨がこの前Twitterでリツイートしてたやつ」
「!…楽しみ」
「だから早く、周回終わらせて」
「うん」

ぽんぽんとあやすように私の頭を撫でた後、するりと簡単に手を離してまたゲーミングチェアに座る彼。ゆるりとしたトレーナーに着古されすぎた高校時代の部活のジャージ。昔からプリン頭にすぐなってたけど今は逆プリンになるほど雑な髪色。自分に関してはこうも適当なくせに肝心なところはしっかり掴んでケアしてくるから少し悔しい。幼馴染の先輩の彼は大分しっかりしていたけれど彼からこっそり何か学んでるんだろうか。

「研磨ーオムライスのケチャップにおっきいハート描いてもいい?」
「やだ」
「なんで!私の愛受け止めて!」
「受け止めてるから今家にいるんでしょ」
「〜っ、好きっ!」
「知ってる。…ちょ、やめてよ抱きつかないで!操作乱れる!」

ゲームに夢中な時は本当に私に冷たいけれど、これが終わったらもう少し優しくなるの知ってるもん。
あと何回かとまだかまだかと指折りし、敵のスライムが倒されていくのを頬をくっつけへらりと見つめた。