ツンデレ彼女
「その…暫くの間。えっと…春高が終わるまでは一緒に帰れないんだ。それと、デ…デートとかも」
目の前の男。否、私の彼氏は視線をあちこちに動かし、体を少し丸めながらこれでもかっていうくらい気を遣いながら言った。
「わかった」
「ほ、本当にごめんね…」
「気にしなくていい。それに、今とあまり変わらないし」
「そ、そうだよね。…ごめんなさい」
今までと変わらない。付き合ったのは2年の冬。私は帰宅部で、旭くんはバレー部。朝練あるし、帰りも遅いから一緒に帰ったのも数回で、デートも予定が合わず1回のみ。それでも構わないと思うけど、自分の存在が彼の重荷になってしまっているのではないか、とたまに不安だったりする。告白したのもこっちからで、性格的に断れなかったのかとこの頃考えてしまう。未だに、好きって言われたこともないし。
「菅原ぁ、私また旭くんを困らせてしまった…」
「大丈夫だべ〜。あいついつもそんな感じだし!」
「ただ、気を遣わせたくなくて言ったんだけど」
あれじゃ、嫌味にしか捉えられないよぉぉ。私のことは気にしないで、部活に集中してって意味だった…!と嘆く。
「はは!何でみょうじは旭の前だとそうなんだろーな」
「私が聞きたい!」
同じクラスの菅原とは1年の時から一緒で、その爽やかコミュニケーション能力で人見知りの私でも直ぐに打ち解けた友達。
旭くんの前ではというか、彼以外でも初対面とかあまり話したことがない人とかには、緊張して誤解を招く言い方をしてしまう。けど、慣れれば普通に出来るのだ。
そんな人見知りの私が何故クラスも違う彼のことを好きになったのかというと、それは1年生の時。
たまたま委員会が同じで、周りより一段と背が高い彼は凄く目立っていて、それなのにどこか弱そうで気づいたら目で追うようになっていた。たったこれだけ。多分、一目惚れだったのかもしれない。
けど、告白する勇気も、話しかける勇気すらない私は何も出来ず、そのまま2年になった。委員会も一緒にならなくて、接点なくなったなと思っていた頃。
彼と同じクラスの男子2人組が私の話をしているのが耳に入った。
「隣のクラスのみょうじってさ、顔はいいんだけど高飛車っぽくねえ?」
「それわかる。言い方キツいし、彼女にする子はもっと癒しのある感じがいいよなー。雑用とか誰かに押し付けてそう」
そう言って楽しそうにゲラゲラ笑う男達に、またかと右から左へ流した。仕事とかは一応やってるんだけどなぁ。言い方は…うん。頑張ろう。
これ以上ここにいてバレても気まずいだけだと、教室の前を過ぎようとした時。
「みょうじさん、仕事は誰よりもやってるぞ?去年、委員会一緒だったんだけど。休みの子とか、部活で忘れちゃったりとか、抜け出せない用事とかある子のも変わりにやってたし。困っている子見つけたら、助けてあげてた。クラスでも、放課後残ってなにか仕事してる時もあったから、いい子だと…思います…」
「あ…そう…?」
「う、うん。…いや!ごめん!攻めてるつもりとかじゃなくて!!」
「わかってるわかってる!俺らもあんま知らないのに、悪く言うのよくねぇから!」
人見知りとかなのか。逆にギャップ萌え?と色々話し出した2人組。そんな話は耳に入ってこなくて。
「…どうしよう。…好きだ」
そうして、誰かに取られたくないという欲が出て次の日告白をした。
旭くんは少し焦りながらも、首を触りながら「よろしくお願いします」と耳を真っ赤にさせて返事をしてくれた。
お昼休み。このお昼休みが一番好きな時間だ。旭くんと外階段で一緒にご飯を食べることができる。一緒に帰れなくても、デートできなくてもこの時間があれば十分だ。
「今日、1年生に逃げられてたね」
「え!?み、見てたの!?」
「うん。見えた」
「3年になってからますます増えて。同級女子からは見た目そんななのになんか弱いってガッカリさせるし、大地は恐いし、学生って見られないし…進路だってどうしよう、他にも…」
隣で、この間聞いた時より悩みが増えてる旭くんの話をお弁当を食べながら聞く。
「って、ごめん!またこんな話して…。だから弱いってがっかりされるんだ」
今度はバッと勢いよくこっちを振り向き、あたふたしながら謝る。忙しいな。
「ふふふ。なんで?旭くんらしくて好きだけど」
「!?」
一緒にいると浄化されるな。と思いまた笑ってしまった。
「俺も…そういうところ好きなんだよなあ」
今度は私が旭くんの方へ勢いよく振り向いた。いつもの実年齢よりも上に見られる顔ではなく、少し幼くふにゃとした笑顔。
「今、好きって言った…」
「え、嫌だった!?ごめん」
「違う。初めて言った」
「そんなこと…。あ…言ってない」
そう言って、だんだん顔色が悪くなっていく旭くん。
「はは!凄く嬉しい」
口元を隠すように手で覆うと、それを見た旭くんは大きな手で自分の顔を覆っていた。
「(たまにくるこのデレは凶器だ。可愛すぎる。この顔、誰にも見せなくない)」
東峰も無意識のうちにみょうじを目で追っていたから、仕事ぶりを知っていた。それが好きだからと自覚したのは告白された時。