他愛もない話をする昼休み
昼休み。お弁当を食べた後、黒尾の机を挟み、向かい合わせになるようにして座って意味の無い会話を繰り広げていた。
「主将ーお菓子はいくらまでですかー?」
「遠足に行くんじゃありませんー。遠征です」
「バタピーはおやつにはいりますかー?」
「それはつまみですねー、ダメで〜す」
お互い目線はスマホに。私は肘をつきSNSを見ている。かたや黒尾は机にスマホを置いて最近ハマっているゲームに夢中である。
どうやら研磨に「クロ、これハマりそう」なんて言われやってみたら、予想通りどハマりしてしまったらしい。でもまあ、バレーや勉強、自分の生活リズムを削るレベルではもちろんないみたいだ。
「……ねえ」
「ダメです」
「ちょっと邪魔していい?」
「良くありませ…………ああーー!」
「あーあ」
クリア出来なかったみたい。スマホをいじるのに飽き、構ってもらおうと見つめていたんだけど、一生懸命ゲームしている姿が可愛らしくて、ちょっかいを出したくなった。出す前にゲームオーバーになったから犯行には及ばなかったが、構った欲しいという気持ちを汲み取ってくれた黒尾は机に項垂れている私の頭を軽く撫でてくれた。
それから頬杖をつき、こっちを見下ろす柔らかくて優しい目と私の頬をツンツン突く人差し指と、画面を消したスマホから、まだ私に構ってくれるんだと顔が緩む。
「しゅしょー」
「はーい」
「お菓子は持ってっちゃダメなのに、主将ともあろう方が彼女は連れてっていいんですかー?」
「マネなんで大丈夫ですー」
「主将ともあろう方がマネージャーに手を出すなんて……!ハレンチ!」
「急にテンション高くなった」
倒した頭をガバッと上げて、目の前にいる主将に叫べば、楽しそうに笑われるだけで終わる。と思ったら、こっちに腕が伸びてきて頬に優しく手のひらを添え、軽く親指で撫でた後、むぎゅっとほっぺを摘んだ。そして、そのまま横に引っ張った。
そんな伸びないから……。ちょっと痛いんですけど。などという心情に気付いているのか、いないのか分からないが、目を細め、本人自覚なしの色気のあるお顔で言った。
「手を出されたのは俺の方も同じなんですけど?」
その一言で凄い勢いで顔に熱が籠った。あるひとつの意味で、手を出され、手を出し、をしたのは夏休み最後の休日のこと。部活が早めに終わって次の日も休みの時。ただ生きているだけで汗をかいてしまう季節。お互い経験したことがないことを一緒に初めて経験した日。
あれから二度目はまだなくて、今でもあの時のことを思い出しただけで体の熱が上がるのに、二人きりじゃない場所で言ってくるものだから、思い切り足を踏ん付けた。