何気ない朝

いつもよりちょっと遅くに起きて、朝ごはんを作る。最近買い物に行けてなかったから、冷蔵庫はスカスカで唯一あったのはウィンナーと卵。
フライパンの上にそれらを乗せれば、良い音が鳴った。

食べたら、パリッと音が鳴るやつ。このウィンナーきっと美味しくなるやつだ。卵は半熟を目指そう。

心の中でるんるん鼻歌を歌えば、小さな足音が聞こえてきた。ピタッと止んだ瞬間、肩に重みを感じる。

「おはよう」
「……はよ」

視線だけを後ろに向ければ、眠そうな研磨の顔と爆発してる寝癖が目に入る。視界に映っただけじゃなくて、普通に目に入った。髪の毛が目に入った。
私の肩に顎を乗せて、目を瞑りながら「ねむい〜〜……」と放つ研磨に「寝癖やばいよぉ〜〜……」と横から顔を押して肩から退かそうとするけど、ビクともしない。退けてくれるどころか、腰に腕を回された。

「もう少し寝る?」
「う〜ん」
「あとでまた作るから」
「いま食べる。なまえのベッドで寝る時は、なまえが隣にいないと寝てる気しない」
「そうですか」
「あと、あのベッド狭いから大きいの買ってもいい?」
「置くスペースなんてウチにはないです」

今日は私の家に研磨が泊まりに来た。研磨の家に泊まることがほとんどだけど、極たまに私の家に研磨が来る時がある。しかも、急に。今日なまえんち泊まりに行っていい?って急に聞かれたり、夜外食した時にそのまま家に来たりする。だから、彼氏が家に泊まりに来たというのに冷蔵庫はすっからかんなんだ。

しかも、一見朝ごはんを食べなそうな研磨だけど、ちゃんと起きて朝一緒に食事をする。一人の時は食べないみたい。というか、朝昼晩、と食事の時間なんて決めておらず、何か食べないとと思ったときに口に入れているだけらしい。
そんな生活をしているから心配になり、同棲しているくらいの頻度で研磨の家に行くようになった。そしたらちゃんと三食とって、仕事で夜遅くに寝ても朝ごはんを作り始めれば、それが合図かのように目を覚ます。それには少しびっくりしている。

未だ抱き枕のように私を腕の中に閉じこめ、眠そうにしている研磨をチラリと見て、ずっと聞いてなかった疑問を口にしてみた。

「研磨って、朝ごはん作り始めたら直ぐ起きるよね。音うるさかった?」

私の家なら寝室まで音が響くだろうけど、研磨の家でもそうなのかな?音、届かなそうだけど。でも、これからは音を出さない対策でも取ろうかと考えていたところで間延びした声が耳に届いた。

「ううん。うるさくはないんだけど、すぐ気づく。なんでだろ……?」

そう言って肩から顎を上げて考え出し、数秒経つとピタリ止まった。答えが出たのだろうか。

「理由はわかんないけど、ただ……」
「?」
「なまえがいる音が聞こえるのはいいなって思うかな」

だから早く会いたくなって目が覚めちゃうのかも。それだけ言って満足した研磨は、また肩に顎を乗せてきた。ドキドキ心臓がなってしまえば、「耳、赤いね」って顔のすぐ側で言われ、更にそこは赤くなる。研磨のせいじゃん……って悪態を吐くと楽しそうに、ふふっと笑われた。