告白
「なまえ、付き合お」
突然の告白に持っていた包丁を落としそうになった。食生活が乱れている研磨を気にかけ、家に押しかけて夕飯を作っている最中のことだった。
「……え?」
「いやならいいけど」
「いやじゃないけど」
「そう。よかった」
「よかった……?」
よろしくね、とこっちを見てくる研磨の表情は企みを含みつつとても嬉しそうに見えた。
研磨との出会いは高校。男子バレー部員とそのマネージャーという関係。同じ学年でクラスも二年間一緒。迷惑なほど世話焼きの私は当時から大学生になった今も研磨から目が離せなかった。これが「好き」からくるものなのはわからないけれど、他の人にはここまでしない。ただ研磨が世話を焼かせる天才なのかと思っていた。
私は研磨のことが好きなんだ。告白を受け、自分の気持ちを自覚する。その瞬間、一つだけなくしたパズルのピースが見つかったような感覚に陥った。
「私、研磨のこと好きだったんだね」
「今更気づいたの?」
「……なんかムカつく」
「ふふ」
人の家で勝手に作った漬物を横から手を出しぱくっと食べられる。音を立てながら嬉しそうに笑い、食べる研磨に胸が大きく鳴った気がした。翔陽くんの予想外プレーを見て笑うのと少し似ている。
「研磨こそ私のこと、好きだったんだね」
「うん」
「……いつから、なの?」
「う〜ん……結構わりとすぐにかな。高一の時だったのは覚えてる」
「えっっ、……全然気づかなかった」
「気づかれないようにしてたからね」
あ、そうなんだ。だったら気付けるわけがない。でも何で急に告白してきたんだろう?と思ったタイミングで答えを教えてくれた。前から思ってたけど、研磨は人の心が読める人間なんだ。こわい。
「最近、なまえに触れたいって思うことがあって抑えらなさそうだったんだよね。だから、告白した」
「……そんなこと思ってたんだ。びっくり」
「気づかれないようにしてたから」
「あっ、そう、ですか」
研磨もそういうこと考えるんだ。それより、付き合った今なら触れたりそれ以上のこともするってこと?ちょっと、まだ気持ちが追いついていないというか、恥ずかしいというか。まだ、そういうことはしたくないような。ちょっと準備が欲しいというか。もう少し待って欲しいと言ったら、呆れられちゃうかな。
「でも、なまえが嫌がりそうだからまだ触れない」
「……人の心の声読まないでください」
そう言うとまた「ふふっ」と笑われる。よくなったら教えてねと顔を覗き込んでくる研磨に、良くなったら私より早く気づくでしょうって思うも黙って口に運ばれた漬物をパクリと食べた。
口に中で良い音が鳴る。でも、もう少し漬けたほうが良さそうだ。