2022/02/13

満天の星より輝いてるの

ホライゾン夢。
ぼのぼのアフタヌーンティーを楽しむお話。
2022バレンタイン記念です🍫

* * *

大振りなアーチを描くティースタンドの上にはティーカップと同じ花柄が絵付けされた美しい皿が3枚セッティングされていた。

皿の上には小振りのサンドイッチやスコーン、それにケーキが美しく陳列されていて私の胸がキュンキュンと高鳴る。

「宝石みたいにキラキラしてて食べるのが勿体ないですね……」
「うーん。なら、写真でも撮るかい?」
「撮りましょう!折角なのでマリー博士もポーズして下さい」
「アタシはいいよ、恥ずかしいだろ」
「そんな!今日、博士と一緒にお出掛け出来たのをみんなに自慢したいんですけど……駄目ですか?」

上目気味にじっと博士の瞳を覗き込むと、彼女は握り拳の上に顎を乗せてじっくりと考え込んだ。
それでも諦めずに視線を送り続けると、観念したらしい博士が店員さんを呼んでくれた。

快くカメラマンを務めてくれた店員さんから端末を受け取ると、硬い笑顔を浮かべつつもピースをしてくれる博士と満面の笑みを浮かべた私が液晶には映っていた。

「アタシじゃなくて、もっと若い子達と来れば良かったんじゃないかい?それに今日はバレンタインだろ?お前さんなら誘いの一つや二つあったに違いないだろうに」
「あっ、そうなんです!バレンタインだから今日は誘ったんです!」

マリー博士の問いに勢い良く答えるも、どうかやら言葉足らずだったらしく博士はポカンとした表情を浮かべた。

「カイリさんの文化圏では恋人だけじゃなくて日頃からお世話になってる人にもチョコレートをプレゼントするらしいんです。それを聞いて真っ先に思いついたのがマリー博士で……」
「なんだ。そうだったのかい、そう言われると照れるねぇ……」

ふんわりカールした自身のくせ毛を、照れくさいのか誤魔化すように触るマリー博士は私よりも歳上だけど、とってもキュートだ。

「いつか、博士は息子さんの所に戻るんですよね?」
「ああ、そうだよ」

そう言う博士の瞳には溢れんばかりの優しさが滲んでいる。不安や恐れ等一切感じさせない自信に満ちた輝きを持っていた。

「私も絶対に会えるって思ってます。だから、博士との思い出を沢山作りたいです」

マリー博士がいなかったら、私どころかこのアウトランズは、宇宙の暗闇にすっぽりと包まれて存在し得なかっただろう。
それ程の偉人でありながら、驕る事なく、誰にでも分け隔てなく優しい博士を私は心の底から尊敬していた。

「アタシとアンタ達はもう家族だよ」

ポン、とマリー博士の手のひらが私の頭に乗った。それだけの事なのに、私は急に自身が小さな少女になった様に思えた。

「……そんな。なんか、申し訳ないです」
「いーや。家族なんだから、いつでも会えるだろ?勝手に思い出にしないでくれよ」

そう微笑むマリー博士の表情に、鼻の奥がツンと痺れた。博士の事となると、私の涙腺はとてつもなく緩い。
喋ると、瞳から涙が溢れてしまいそうだ。代わりにコクコクと勢い良く頷くと、博士は私の皿を手に取った。

「だからそんな畏まらなくていいんだよ。……ほら、サンドイッチよそってやるから借しな」
「実は私、トマトが苦手なんですけれど……」
「好き嫌いは良くないね。お行儀良く食べな」

頑張れば食べれるけれど、なんだか急に甘えたくなってしまったのだ。
「はーい」と幼子の様に元気良く答えると、私はカラフルな層を一口で収めた。

 cm(0)
prev or next
カド