2022/05/19

蝶にピアス

シア夢。
独占欲強めなオビさん

* * *

手渡された、小さいけれど高級感のあるジュエリーケースをそっと開いた。
開けた瞬間、美しいネオンブルーが瞳の中に飛び込んで来た。
鮮烈な水色が、煌々と光輝く。その輝きを際立たせる為に角度を付けると深い海の色にも姿を変えた。
一目見ただけで私はその耳飾りを気に入った。圧倒される様な美しさと、愛しい人の瞳を思わせる色彩が私の心を掴んだのだ。

「その様子だと、気に入って貰えたみたいですね」
「うん。オビ、この宝石とっても素敵」

そっと繊細なアクセサリーを手のひらの上に置いた。見惚れたまま、しげしげと鑑賞している内に私は気付いた。

「これ、ピアスだよね?」
「ええ、試合中にも是非身に付けて頂きたいと思いまして。しっかり固定出来た方がパフォーマンスにも響かないでしょうし……」
「私、穴開けてないんだよね」

余りにも素晴らしいピアスだったからこそ、少しだけ私はオビにがっかりしてしまった。
オビはいい意味でとても人を見ている。その目が私には行き届いていなかったという事実が、私の胸をチクチクさせる。一応、恋人の筈なんだけれど。

ちらりとオビの顔をこっそり伺う。気不味そうな顔をしているかもしれない、そう思ったのに彼は満面の笑みを浮かべていた。

「なんで笑ってるの!?」
「いえ。考えている事が顔にありありと書いてあって可愛らしいな、と。……大丈夫ですよ、ちゃんと理由があってピアスにしたのです」

オビの指が私の頬をなぞり、つるりとした耳に触れた。

「貴女に私の印を刻みたい、と言ったらどうしますか?まあ、確定事項なんですがね」

青白い光を宿す彼の瞳がうっそりと細まった。その輝きに当てられて、私は思い出した。彼から離れる事は出来ないと。

痛いのはいやだなぁ、

そう思っているのに私の鼓動は存在を知らしめる様に早まるばかりだ。
ギュッとオビの手を握ると、彼は楽しそうに笑った。

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カド