2023/12/30

Have a great new year!

プト夢。
クリスマスツリーを片付ける話。


* * *


試合後、熱いシャワーを浴び、五月蝿いウィット共を無視してさっさと帰路に着こうとした。
が、ロビーに割り当てられた半個室に忘れ物をした事に俺は気付く。

秘匿性は全く無い、ただのメモリ増設用のパーツだ。急ぎでは無いが、帰宅後の作業の為にも今日回収した方が良いだろう。

来た道を戻り、開けたロビーに戻ると、同僚がいそいそと作業をしていた。
人一人が横になって入れそうな程の大きなカバンに、こまごまとした箱が床に置かれ、派手に散らかっている。

「……何をやっているんだ」
「クリスマスツリーを片付けているんです。
私物なんですよ、これ」

ゴールドやレッドの煌びやかなオーナメントを手にして彼女は微笑んだ。

「ふむ」とだけ返事をしたが正直、私物だった事に俺は驚いていた。ロビーに足を運び、視界に入る度に季節感というものを感じていたのは確かだった。

「可愛いですけど、ずっと出しっぱだったらクリスマスの特別が失われちゃうんで」
「……そうだな」

一人暮らしを始めてからは、片付けが苦手なのもあってツリーを飾ろうなんて発想には至らなかったが、この温かな装飾は嫌いではなかった。
むしろ、孤児院で皆揃って飾り付けをした優しい記憶を思い出させてくれる様に思えた。

「オーナメントはこの箱に入れればいいのか」
「あっ、そうです!」

小さなプレゼント型の飾りを手に取る。今年のクリスマスは、気付けばいつの間にか終わっていた。
クリスマスの挨拶を忘れてしまったし、年が明けたらミスティックにメールを送ろう。そして、来年こそミラにも。

「クリプト先輩って、すごく優しい顔するんですね」
「……は?」
「ただ、そう思っただけです」

呆気に取られ、固まっていると彼女もなんだか自分の言葉に恥ずかしくなって来たらしい。
耳まで赤く染めた彼女に、非常にむず痒い気持ちになって、俺はオーナメントを箱に収める事に意識を向けた。

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カド