2021/09/17
星屑のささやき
ローバ夢
添い寝するお話
* * *
洒落た寝台に横たわる肢体。
そこだけ切り取るとまるで一枚の美しい絵画の様だった。恐らくモデルが良いから、そう思ったに違いなかった。
真紅の天蓋がついたベッドなんて、私にはお上品過ぎて似合わない。というか、汚さないかとかそういう心配と雑念で落ち着かない。
私は明らかに世界観を壊す異物だ。この世界の主役と同僚でなければ、きっと体を包み込む繊細な布の温もりは一生知ることは無かった。
地毛であろう茶色を基調に赤がグラデーションされた髪が白のシーツに豊かに広がる。常にしっかりと結っているからか、彼女の髪は軽くウェーブがかっている。
つるんとした形の良い額にかかる邪魔な髪の毛を後ろの方に流してやると、目尻が猫の様に跳ね上がった瞳が私を見る。
「起こした?」
「ちっとも眠れやしないわ」
不満気に眉根を寄せるローバの髪の毛を手櫛で緩く梳いてやると再び彼女は目蓋を閉じた。
「ローバが起きるまで絶対に隣にいるよ」
人工の悪夢への怨みを晴らしたというのに、彼女は夜をいつも恐れている。
私では、正面からならまだしも忍び這い寄るレヴナントにはきっと対抗出来ない。つまりは根本から彼女を救うことは不可能と言っても良い。
せめてもの慰めだ。冷たい夜の帳が下りる時には彼女と同じつめたさを共にするのは。
「おやすみ、ローバ」
額に触れるだけのキスを贈り、私も瞳を閉じる。彼女の小さな寝息と、銀瑠璃の星々が輝くダークブルーの空をゆったりと進む舟のエンジン音が心地良かった。