「スケッチブック」
一枚ずつ増えていくはずだった物語甘苦い青春のワンシーン
眩しい笑顔が光に吸い込まれて
色鮮やかに塗り重ねられた絵画のように
美しい色を何枚も切り取った
そのまま閉じ込めて離したくないワガママ
手を繋いで登校する通学路
一緒にご飯を食べる夏休み
部活の応援に来てくれる日
そんな思い出と反比例してすり減っていくもの
あの頃はまだ知らずにいたこと
僕を…
失いたくないのだと泣きじゃくった夜
神様が存在するのであれば
奇跡を下さいと人生で最後の願いを告げた
「はじめまして」と微笑みを浮かべるのだろうか
初めて出会う演技をしながら
鈍器で殴られたような痛みを隠して
きっと何度でも自己紹介するに違いない
近い未来にすべてリセットされるのだとしても
たくさんの絵が描かれていたスケッチブック
まっ白な絵の具が一枚ずつこぼれ落ちていくように
「どうか幸せになってね」
繰り返された愛しくて残酷な言葉さえ
もうその無垢な唇から聞くことはないだろう