神様がくれた運命


君の花が咲いたような笑顔を生涯守ると誓ったから、僕はどんな困難にも立ち向かいこの命をかけることさえ厭わないだろう。

この手のひらに握りしめていたものが一つずつこぼれ落ちていくのを呆然と見つめるしか出来ない僕に残された最後の一欠片は君だった。

僕の人生すべてと君のかけがえのない大切な命を天秤にかけたとしてどちらが重く沈むかなんてそんなわかりきったことを今更聞くんだね。

初めて出会ったとき僕と違って空を自由に飛び回る鳥のような君にただ憧れを抱いただけなんだ。

本当はそばにずっといて欲しいけど、そのことで君を不幸にしてしまうのなら喜んで僕は君から離れよう。

汚れきった僕自身を見て君を汚したくないと思う反面、無垢な君がその瞳で見て僕自身が浄化されたいと思う二律背反な感情。

傍にいるよ、大好きだよ、愛してるよ、そんな幸せな言葉はいくらでも聞いていたいけど、さよならなんて悲しい言葉だけは聞きたくなかった。

ほうき星のような人生の中で心から愛した人に出会ってその腕の中で死ねたならこんな掃き溜めのような人生も悪くはなかったと言えるだろうか。


幸せの宝箱の在処


正反対の二人が出会ったのは偶然ではなく必然だっただなんてそんな陳腐なことは口が裂けても言えないね。

君と出会わなければきっと僕はこんな胸をかきむしられるような苦しい思いを知ることはなく、ただ無感情にこの惰性の人生を歩んでいたに違いなかった。

あふれだすあの涙を拭ってやりたいと思う気持ちとは裏腹にもう自分にはその資格はないという自制心のおかげで伸ばした手は君に触れることなく下ろすことが出来た。

屈託のない笑顔を守りたいというこんなちっぽけな願いでさえ神様は叶えてくれないなんて残酷を通り越して惨めだよ。

なんのために生まれてきたのかなんて何万回も自分自身に問いかけてきたけれど君と出会ってやっとその答えが分かった気がしたんだ。

一瞬だけ煌めくために生まれてきたこの人生を呪ったことは一度もないと言ったら嘘になるけれど、短い命だからこそ君の心に強く焼き付いたのなら悪い気はしないね。

永遠にその言葉を忘れないようにと同じ質問を繰り返し聞く君に対して僕がしてあげられることは君が満足してくれるまで何度でも変わらない答えを微笑みながら伝えてあげること。

君が安心して笑いながら暮らすことの出来る世界を作ると指切りをしたことを一時たりとも忘れたことはない。


世界が反転しても


根も葉もない噂ばかりが飛び交い自分を誤解されて遠巻きに見られたとしても別に構わないと放置していたけれど、初めて君だけには勘違いされたくないと思ったんだ。

死ぬまで傍にいてくれと喉まで出かかった言葉を飲み込んだけれど、そんな僕の心情を言わなくても分かってるかのように微笑む君に泣きたくなった。

愛しているなんてありふれた言葉を君に直接言うことなんて到底出来ないし、これからも言葉にして言うつもりなんてないけれど心の中でそっと思うだけなら許してくれるよね。

例えそれが茨の道で数多の苦難が僕たちを切り裂こうとしてもこの愛を貫き通して最後に儚く幸せに滅べたら後悔なんてすることはない。

君に出会うまで欲しいものはすべて手に入れることが出来たし、これからも手に入らないものなんてないと思ってたからどうすればいいか分からないんだ。

君が僕の存在をすべて忘れてしまったとしても、初めて会ったときのあの笑顔をもう一度その顔に浮かべてくれるのならばどんなことでも出来るものさ。

誰かを憎むことでしか生きられなかった人生に差し込んだたった一筋の光が君だったからどんな障害が待ち受けていようとも手を伸ばさずにはいられないし諦めることも出来ないんだ。

生きる世界が違うなんて誰が決めたのか知らないけど、そんなの僕が君の傍にいてはいけないという理由になんてならないよ。


光と闇の存在


身体に傷はなくても心が悲鳴をあげていた君を放っておくことなんて出来なくて、ただそっと傍にいて肩を抱き寄せることしか出来なかった。

喧嘩が強くてカリスマ性のある孤高の獅子のような存在の彼が弱音を吐けるのはきっとあの人の傍だけなんだと気づいた瞬間だった。

彼の無事をただひたすら祈ることしかできなかったあの頃、教会で祈りの言葉を捧げるだけで救われた気がしていた。

貴方が幸せでありますように、その言葉を口癖のように投げかけてくれていたあの人はもう僕の傍にはいない。

幼い頃からずっと信じていた神という存在を諦めかけたとき、偶然僕の前に舞い降りてきたのが人の形をした抱きしめることの出来る僕だけの神様だった。

毎日が苦しみの連鎖で続くこの世界で初めて守りたいと思った存在が君だった、それだけのことなんだ。

今まで進んできた道にどんなに人が倒れて道を赤色に染め上げたとしても心が動かされることはなかったのに、君が倒れたときは行き場のない怒りと悲しみで目の前が真っ暗になった。

世界中の人から後ろ指を指されるような人生を歩んできていたとしてもたった一人の心を許せる君が傍にいてくれるのならこの孤独からも抜け出すことが出来るだろう。


もし巻き戻るなら


誰よりも頼もしくてかっこよかった君の末路がこんなことになるだなんてあの時の僕は想像することすらしなかった。

光の道を互いに微笑み合いながら歩んでいく二人を見て、ただ自分とはまったく違う彼らが羨ましかっただけなのだと今更ながらに気づいた。

やり直したいと何度願っても取り返しのつかない過去が巻き戻ることはなくたった一つの残酷な真実は僕の身体を這い回り続ける。

誰よりも君の幸せを願った人は君の旅立ちを遠くで見届けてから追いすがる仲間を振りほどいて死の淵へと歩みを進めた。

これ以上大切な人は失いたくないのだと涙ながらに訴え続けた君の悲痛な叫びを振り切るようにその部屋を足早に飛び出した後、もう僕は振り向きはしなかった。

世界で一番大切な人を失って虚ろに泣き続ける君が本当の幸せを掴むまで傍であの人の代わりに支えていくことを誓うよ。

この世の者とは思えないほど美しく恐ろしい他に並び立つ者はいない百獣の王のような彼に畏怖し足の震えが止まらなかったことを今でも昨日のことのように思い出すことが出来る。

ありきたりで誰もが手にするのに苦労しない平凡な日常を一時でも過ごすことが出来たのはいつも僕に幸せをあたえてくれた君のおかげだね。

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