僕等の壊した世界
−この小説を死亡フラグの勇者、ローリー・ペータースに捧げます
目を開けると、真っ赤な天井が視界に入った。
ちなみに自室の天井は赤ではないし、真っ赤な天井なんて知る限りではない。
さすがに寝起きが壊滅的に悪いミヤもこの異常事態に体を起こした。
起きてみてさらに驚いた(でも顔には出なかった)、逹瑯とユッケとサトチ、つまりムック全員揃っている、みんな床で眠りこけていた。
その上、全員『フリージア』の衣装だ。
そして起きてみて分かったがどうやらこの部屋、天井も壁も床も全て赤に塗られているらしい。目に悪いというか気味の悪い光景だ。
「おい、起きろ」
ミヤは立ち上がって逹瑯の頭に蹴りを入れた。
「いだっ!ちょっとなんだよ!頭は蹴るなよな!」
比較的寝起きのいい逹瑯はすぐに覚醒してミヤと部屋の様子を目にし、心底驚いた顔をした。
「えっ!?ちょっとなんだよここ!?」
「俺は気づいたら此処にいた、オマエは?」
「俺もそう、だけど・・・うわっ!しかも衣装じゃんコレっ!?」
慌てて立ち上がりぱたぱたと自分の身を確認する逹瑯を置いて、ミヤはユッケとサトチの肩をゆする。
「優介、ヤス、起きろ!」
「・・・なんで俺には蹴り入れて、そっちの二人は普通に起こすのかな?かな?かなぁっ!!リーダーにバンド内差別を抗議しますっ!!」
逹瑯のそこそこ正当な抗議をミヤは無視した。というか今はそれどころではない。
「え?ちょっとなに此処!!??」
「うお!?なんだ此処、気持ち悪ぃ!!」
4人で立ち上がり、部屋の様子を眺める。天井、真ん中辺りに裸電球がぶら下がっているだけだが、妙に明るい。
よく見ると部屋の正面と右側(といっても部屋は正方形なのであくまで見た地点からだが)同じように赤く塗られていたので分かり難かったがドアがあった。窓はない、換気口らしきものはあったが、それだけ。
部屋の真ん中で固まってきょろきょろしている三人を置いてミヤは壁やドアに触れる。材質は壁がコンクリートでドアが鉄、か。
ミヤは正面側のドアのノブに手をかけて回してみたが開かない。
「ちょっとミヤ君っ!!迂闊に開けないでよっ!!」
逹瑯の叫び声にミヤが鬱陶しそうにふり返った時、ドアの向こうで微かに人の声が聞こえた。
「・・・ちょ・・・・だ・・・・い」
「・・・って・・・・・・・・・よ?」
そして勢いよく扉が開いた。
「やっぱりっ!!逹瑯さん達だっ!!」
飛び込んできたのは見覚えのありすぎる人物、シドの明希だった。
「危篤ですね!あ、間違えた、奇遇ですね!」
「・・・いや、あんま奇遇とかそういう話じゃねぇぞこの状況」
「では数奇ですねっ!」
えへへっと笑う明希に逹瑯の顔が引きつった。もうどこに突っ込んで良いか分からない。
開いた扉の向こうからは他のシドの面々も出てくる。
「本当に逹瑯君がいた、明希って耳良いんだねぇ」
あまり緊張感のない声を上げるしんぢにマオが不機嫌そうな顔で言う。
「聴力が猫並みなんじゃね?頭と同じで」
そんなマオにへばりついて心底怯えているのはゆうや、こちらはちゃんと危険察知能力に動物並みさが働いているらしい。
シドは全員『one way』アー写時の衣装を着用していた。ちょと色的にけばい。
「その扉、こっちからは開かなかったんだが・・・」
「ああ、鍵が掛かってましたよ、普通の捻るタイプのやつです」
「で、オマエらも気づいたら此処にいた、ということかな?」
「ええ」
リーダー二人は真面目にそう話している。
「この部屋は赤、なんだ」
ぽつりと放たれたしんぢの言葉にユッケが反応する。
「この部屋はってことはそっちの部屋は違ったの?」
「うん、真っ白だった」
扉の近くにいたミヤがのぞいてみると、確かにシドのメンバーがいた部屋は真っ白に塗られていた。赤は赤で嫌だが、白はどこか病的な圧迫感がある。
明るいライトに照らされているせいで尚のこと不気味な光景だった。
「あ、ってことは・・・ヤス!そっちのドアの向こうにも誰かいるんじゃないか?」
ミヤにそう言われてサトチはすぐにもう一つのドアに走って(といってもほんの数歩だったが)ドアノブを捻る。
「開かない!!」
「・・・呼びかけてみろ」
サトチは頷いてドアをノックする。
「そっち誰かいますか!!??」
少しの間をおいて、ドアは恐る恐るといった感じで開かれ、顔をのぞかせたのは・・・
「・・・サトチさん!?」
「・・・・お?」
「あ、Dの大城です」
「おおっ!?」
Dの面々だった。
結局、シド、D、ムックの総勢13名が集合した。ちなみにDのメンバーは『Day by Day』の衣装。彼等にしてみれば地味目の服だったことは幸いか、メイクはがっつりしていたけれど。
「そっちの部屋は黒、か・・・落ち着かないな、此処も」
部屋をのぞき込んでいたミヤが言う。
「なんか電気が点いていても暗い感じがして、落ち着かなかったですね・・・」
ドアを押さえていた恒人が答えてミヤが頷く。ドアは押さえていないと勝手に閉まってしまうタイプのもので、閉めきってしまうのはなんとなく不安だったが、そこそこの重量があるドアを押さえておくのも大変だったので結局《赤い部屋》に全員が集まり、ドアは閉めた。
どちらにせよ《白い部屋》にも《黒い部屋》にも此処に続く扉意外はない。
「L字型のコンクリート密室ってわけか・・・なんだよもう」
早くもネガティヴモード発動中のマオが膝を抱えて顔を埋める。
「そもそもオカシイよな。身長、体格に差はあれど成人男子13人だぞ?意識を失った状態のを着替えさせるだけでも一苦労だろうにメイクと髪のセットまでって、かなり大変な作業じゃないか?」
ミヤはいつもと変わらぬ涼しげな顔でそう意見を求める。
一番背の低い涙沙や華奢な恒人ならば(この二人に至っては体重50キロ以下の女子泣かせだ)男性一人でもなんとかなりそうだが、逹瑯などは身長182センチ、細身とはいえ移動させるだけでも大変そうだ。
「そもそも拉致?された記憶がないんだけどね、普通に家で寝たのが最後の記憶だな」
大城の言葉には全員が同意する。
「ちゅーかさ、セキュリティしっかりしてるところに住んどるわけやないけど、だからこそ逆に・・・たとえ眠ってても部屋に誰か入ってきたら気づくで?ウチのドア、開け閉めするとけっこうな音がするねん」
不安なのか浅葱にぴったりくっついて座っている涙沙がそう言うと、明希が「ウチもだよ〜」と呑気そうな声を上げた。
「ウチはそこそこセキュリティちゃんとしてるとこだけどさぁ、ますますオカシイっていうか何人いればできるのよ、こんなまね。だってさ、絶対寝た時間もバラバラだろ?なのに寝たとこ見計らって部屋に侵入して、まぁそのまんまじゃ絶対起きるからなにかしらしばらく気を失うようにして、部屋から連れ出して、服着替えさせて、髪・・・これやるのけっこう大変なんだべ!?整えて、メイクして、この部屋に放置したっての!?」
自らのお団子頭を指さして不満げに叫ぶ逹瑯にミヤがポツリと付け加える。
「もっと言えば、此処には入り口がないしな・・・」
「一応、壁は全部触ったり、叩いてみたりしたんですが不自然な箇所はありませんでしたよ。こちらの《黒い部屋》には」
恒人がそう言って、シドのメンバーに視線を向ける。
「・・・ゆうや、確認して来い」
「ちょマオ君!?イヤだよ!ふざけんなてめぇ!!」
「じゃあ俺見てくるね〜」
ひょいっと立ち上がった明希の腕をしんぢが掴み、全員を見る。
「・・・みんなで行きません?」
半分が部屋の確認、残りがドアを押さえて待ったが《白い部屋》にも特に不自然な箇所はなかったのでまた《赤い部屋》に戻る。
「眠ったところを狙う、というのも変な話ですよね・・・」
前髪をうるさそうにかき上げながら浅葱が言う。
「るいちゃんが言ったように、侵入に気づいて目を覚ます可能性だって高いですし、鍵も掛かっているんだから部屋に入るのだって手間がかかるでしょう?」
「あ、そっか」
ぽんっとユッケが手を叩いた。
「人気のない道を歩いてる時とか狙ったほうがはるかに合理的だよねぇ・・・」
「それにそこまで手間かけてこんなことする理由もなかろうて・・・」
マオが深いため息をついた。
「確かにこんなことする意味が・・・」
言いかけた英蔵の服の裾を力一杯、恒人が引っぱって止めた。「なに!?」と抗議する英蔵を押しとどめて、恒人はこれ以上ないほど真剣な顔で言う。
目の周りが黒いのでちょっと怖い。
「・・・みなさん、今後の言動には細心の注意を払ったほうが良いです、特に言葉には絶対、気をつけるべきです」
「行動はともかく言葉って?」
眉間にシワをよせる明希の言葉に全員が頷く。
「だって、何が《フラグ》になるか分からないんですよ?言葉によるフラグの効果は絶大です、特にこの状況においては言葉が全てを決めるといっても過言ではありません、何故ならこれは・・・」
「ちょ、ツネ、ストップ!」
涙沙の制止を振り切って恒人がキッパリと言う。
「これは小説ですから」
「うあぁぁぁぁ!言っちゃったよ、この子!なに、勇者!?怖いもん知らず!?」
素っ頓狂な声を上げる逹瑯に浅葱が妙に嬉しそうな声で言う。
「良いでしょう、ウチの小狐。あげませんよ」
「欲しくはないよっ!?で、なんでアナタも何事もなかったかのように天然キャラに戻ってるの!?」
「重厚なのは好きですが重苦しいのは苦手ですから・・・」
優雅に微笑む浅葱に逹瑯は両手を広げて肩を竦めた。
「うわ〜、じゃあ俺さっきすっげえ危なかったよね、一人で様子見に行くとか言っちゃったもん、危ない危ない」
「明希のその適応力に感動すら覚えるよ」
のほほんっと笑う明希にしんぢが引きつった顔でそう言った。
「ええ、気をつけましょう。それでこの話の内容ですが、一番可能性が高いのは《サスペンスホラー》ですよね?」
「そうだな、このパターンならその可能性が高いと思う。《サイコホラー》であるならすでに犯人の姿は出てきているはずだし、もしかすると今流行りの《ソリッドシュチュエーションホラー》かもしれない」
何事もなかったかのように、表情も涼しげなままで恒人と会話を始めるミヤにメンバーですら目を剥いた。
「質問で〜す!」
と手を上げたのは明希、よし!突っ込め!と期待が集まる、が・・・
「《ソリッドシュチュエーションホラー》ってなんですか?」
やっぱり明希は明希だった。
「《ソリッド》な《シュチュエーション》、つまり固定された状態で話が展開されるホラー、もしくはスリラーのことだ。状況設定が固定されている話。密室状態だな」
「えっとY田Y介の《ドアD》みたいな?」
涙沙の質問にミヤはちょいっと首を傾げてから頷く。
「読んだことはないけれど聞いたかぎりではそうだな。まあ有名どころを上げるなら映画の《SAW》シリーズや《CUBE》だ。映画だと低予算、簡単なセットのみで作れるし、発想さえ良ければめちゃくちゃ面白くできるジャンルだ」
「・・・え?ねえこのまま話進めるの!?」
既にオロオロしているのは逹瑯だけで他の面子は半笑いか、楽しんでいる顔だった。
「ただ《ホラー》ってことは・・・気をつけるべきはやはりフラグです、《死亡フラグ》」
あくまで真剣な顔の恒人の服の裾を今度は英蔵が引く。
「やめようよ、死ぬとかそーいうのはさぁ・・・」
「うん、シャレにならんし怖いしっ!」
英蔵にマオも同意するが恒人はまた言おうとする。
「だってこれは小説で・・・」
さすがに今回は大城が口を塞いで止める、まあ一回言ってしまったのでもう何度言っても同じ気もするが。体格差を利用してがっちり腕をまわされ口を塞がれた恒人、苦しそうだ。
「大城さん、ダメですよ。大城さんの力で絞めたらツネが折れます」
英蔵に言われて大城は手を離した。恒人が軽く咳き込む。
「・・・ね、その流れだと、アレ?どっかにトラップが仕掛けられてるとか、毒ガスが流れ込んできて解毒剤探せとか、誰か犠牲にしないと出られませんとかそんなてんか・・・」
「このすっとこどっこいっ!!!」
「逹瑯さんのばかっっ!!」
急に不安になって言いかけた逹瑯の頭をミヤと明希がぶん殴る、ミヤはともかく明希はダメだろう、殴ったら。
「・・・あ、明希にバカって言われると死ぬほど屈辱だっ!」
違う方向に怒っていた。まあ後輩に寛大だと思えば評価も上がるが。
「逹瑯、話を聞いてなかったのか?《フラグ》を立てるな馬鹿野郎」
「えっと今のはどういう《フラグ》なんっすか!?」
鬼目全開のミヤにゆうやが質問する。
「いいか、この状況では《悪い予想は当たる確立が高い》んだ、だから迂闊に口にしてはいけないんだよ」
「・・・なるほど」
「なるほどじゃねぇよ!!おかしいだろ!!なんで殴られてるんだよ俺!!」
「ダメですよ・・・迂闊に喧嘩してはダメです。後の《決裂フラグ》になってしまいます」
少し大城から距離を取りながら恒人が言う。
「・・・なんもできねぇじゃねぇか」
「ホントにこれじゃなにも喋れないよね、ツネ、どうすればいいの?」
ぼやく逹瑯に英蔵が慌てて恒人に問いかけるが返答はない。
「・・・ちょっと、ねえ」
ぺちぺち胸のあたりを叩くと心底嫌そうな顔で見られた。
「やめましょうよ、この状況で英蔵さんと喋る勇気ないですよ、俺と英蔵さんなんて下手に口聞いたら《死亡フラグ》立ちまくるじゃないですか・・・」
「・・・なんで?」
「ツンデレだからやろ」
恒人が返答に困っていると涙沙がさらりと言った。
「そうだ、普段仲良し同士がベタベタするのも、普段仲悪い同士が急に仲良くなるのも禁止だ」
ミヤの言葉に「なんもできねぇじゃんか〜」と逹瑯が駄々をこねかけ、あ、これもフラグじゃんと思い直してやめた。
「ねぇ、とりあえず禁止ワードみたいなものだけ教えておいてくれないかな?俺あまりそういうの分からないんだけれど・・・」
浅葱に言われて恒人がしばし考えてから言う。
「そうですね・・・まず《脱出後に○○する》等の予定、家族の話、急に性格や態度を変える、今まで喋ってなかったのに急に長台詞を喋る、遺言めいたことを言う、持ち物を他の人に渡す、身の上話をする、《君を絶対に守る》とか言う、一人で行動する、誰かをかばう、キレる、最後尾を歩く、先頭を歩く、出口を見つけて《出口だ!》と叫ぶ・・・とかですかね」
「ほ、ホントになんにもできないね・・・」
さすがの浅葱も若干引きつった笑みを浮かべた。
「ってゆーかさ、恒人君はそんなに喋ってて大丈夫なの?」
嘘くさい微笑みを浮かべたしんぢに言われ恒人はまたきっぱりと言う。
「ま、解説役は序盤じゃ死にませんから」
「ツネちゃ〜んっ!今ものすごいこと言ったからね、気づいてる!?」
大城に肩を抱かれてばしばし叩かれ、恒人は曖昧に笑った。
「わざと長めのフラグ立てるのもやめてな、ツネが死んだらいや・・・うあ!あかん!ほんまになんも言えへん!」
涙沙が頭を抱えていると、急にマオが立ち上がって叫んだ。
「それだよ!」
「あんさ、俺喋らないと死ぬんか!?」
「あ、すいませんサトチさん、ちょっと黙っててもらえますか?」
タイミング悪く喚いたサトチはユッケに小突かれて黙った。
「方法がある!ってこの台詞がフラグっぽいけど大丈夫、フラグはフラグでも《生存フラグ》を立てればいいんでないっ!?」
にいっ〜と微笑むマオに他の面子が「おお!」と感嘆の声を上げた。
「まずは《キャラによる生存フラグ》ね、この手の話で確実に生き残るのは、バカ、お調子者、ムードメーカー」
ミヤがその言葉に頷きつつ言う。
「つまり逹瑯とサトチ、それからゆうやは《キャラによる生存フラグ》が立っているってわけか」
「ほんと!?やった〜!!」と喜んだのはサトチだけで「あれ、なんだろ、すげぇムカツク」「俺はその三つのウチのどれよ?」とゆうやと逹瑯は不満げだった。
「ちなみにそっちのムードメーカーって誰なの?」
ユッケに問われてDの面々は一斉に首を傾げた。
「いや、特にその3つに当てはまる人はいないねぇ」
大城がそう答える。またあの禁句を言うのを警戒してか手は恒人の肩にかけたままだ。
「あとは《勝ち気なヒロイン》これも絶対生き残る、つまり俺だね」
「アナタさっきまですごいネガティヴモード入ってたよね?」
きっぱりと言うマオに明希が顔をしかめるが、マオ知らん顔。
「ヒロイン?うちにはいないね、パス!」
ムックチームは逹瑯がそう言って流した。
「ウチからは涙沙さん、ですかね?」
「んんん?ツネもやん」
「そうっすかねぇ?」
首を傾げる恒人に大城が言う。
「るいちゃんもそうだけど、《勝ち気》っていうか《勇気あるヒロイン》ってことだからツネちゃんも入るよ」
「そ・・・あ。うんうん」
喋っちゃいけないと解釈しているらしい英蔵が口を開きかけたのを押さえて頷いた。
「あ、すいません。ウチからはるいちゃんとツネの二人で」
最後に浅葱がそうまとめて報告した。
「いや、オマエらね。男なのに《ヒロイン》扱いされることに抵抗はねぇのかよ・・・」
「逹瑯さん、文句ばっか言ってると《死亡フラグ》立ちますよ?いいじゃないですか、どうせ男しかいないんだし」
「明希に正しいこと言われると屈辱・・・」
「逹瑯さんの中で俺はどれだけ阿呆なんですか?」
「世界一だ」
「ひどっ!!」
「明希ちゃんじゃれない、フラグが立つよ!」
きゅっと明希の頭を押さえ込んでマオが続ける。
「微妙なのが《冷静なリーダー》あるいは《分析官》だよね、生き残るパターンもあるけれど、終盤で死んじゃうことも多い」
「・・・あ、俺?」
全員の視線が自分を向いていることに気づいてミヤが言う。
「ああそやな、リーダーシップを取るってけっこう危険やな、浅葱君黙っといて・・・」
「え、ああ、うん」
涙沙にそう言われて浅葱は意味が分からなそうだったがとりあえず頷いた。
「ちゅーかマオ、《天然ボケ》ってどういう扱いになるんだよ?」
逹瑯に言われてマオは顔をしかめる。
「そもそもこの手の話に《天然ボケ》は出てこないよ・・・」
「でも現実に明希だろ、ミヤ君だろ、そっちの浅葱君だろ、三人もいるんだぞ?」
「う〜ん・・・」
悩むマオに涙沙が言った。
「大丈夫かもしれへんで。だっておバカやムードメーカーが生き残る理由を考えてみて?《後味が悪い》からやろ。ってことは《天然ボケ》という愛すべき属性を持ったキャラは生き残る可能性が高いんちゃう?あ、やっぱ浅葱君喋ってええで」
「・・・え?うん」
だんだんテンションが上がってきた涙沙に浅葱、若干引き気味。
「というよりみなさん適度に喋ったほうがいいですよ?影が薄いのも致命的ですから。黙ってたらいるかいないか分からなくなってしまいます、これは映像じゃなくて小説で・・・もがっ!」
また禁句を吐きかけた恒人の口を再び大城が塞いだ。
「ツネちゃ〜ん、いいかげんにしてね〜」
「まぁ《キャラによる生存フラグ》はこんなものか、じゃあそろそろ建設的な話をしよう」
「え、じゃあ今までの話はなんだったの!?」
「無駄話に決まってるじゃないですか、もしくは気を紛らわしてたんです」
ミヤの言葉に逹瑯が思わず突っ込むが明希にそんなことを言われて二の句の継げもなく黙る。
「そだね《キャラによる死亡フラグ》は《悪人》だから大丈夫だと思う、元ヤンが何人か混ざってるけど・・・」
「まあみんな絶対、ろくでもないこと一回はやってるしねぇ・・・お金ない時に」
マオの言ったことにしんぢが笑顔で答え、一瞬沈黙。
「あと《空気が読めない》とかやな・・・あっ!」
涙沙が言いかけて口を押さえ、Dのメンバーが一斉に英蔵の顔を見て、すぐに目を反らす。
「・・・か、かつてないほど傷ついたよ、今のは!」
「あと《影が薄い》とか?」
逹瑯がにまにましながらユッケを見るので、ユッケが本気で慌てた。
「ちょ、てめぇやめろ、アホ!」
「・・・じゃあもう一回、部屋を調べてみよう」
「あの、ぐっちゃ、なにかフォローを・・・」
「最終確認だ、避けるべきことは《一人で行動する》、《自分だけ助かろうとする》、《いちゃつく》、《油断する》だな、気をつけよう」
「フォロー・・・」
《白い部屋》に続く扉をユッケが押さえ、《黒い部屋》に続く扉を英蔵が押さえて閉まらないようにして、それぞれの部屋の探索にかかる。
もしかすると自分達が目覚めた部屋に自分達しか分からない手がかりがあるかもしれないというミヤの提案だ。
13人がっちり固まって動いても良かったが《先頭》と《最後尾》が出にくくするため、バンドごとに別れた。
【黒い部屋】
電球に照らされて明るいのに、どうしても暗く感じる、そんな部屋。
「るいちゃん、浅葱君、いちゃつき禁止だからね」
「え〜?難しいわそれ」
「・・・ある程度は自覚的にやってたんですか」
4人で固まって移動しながらそんな会話を交わす、時折《赤い部屋》に続く扉を押さえている英蔵と目を合わせて確認しながら。
「なんかさ、アレ思いださへん?乙一の《SEVEN ROOMS》」
「怖いこと言うのは禁止ですってば、確かにそう・・・ですけれど」
「しっかし黒い部屋って不気味やなぁ、なんで黒なんやろ?」
涙沙の言葉に全員が首を捻る。
「光を感知していない状態に見える色、悪いイメージが多い色ではあるけれど、中立、他に染まらない色でもあるよね、もしくは無だとか、あとはアナキズムのカラーでもあってこれは・・・」
「浅葱君、その話長くなる?」
大城に言われて浅葱が気まずそうに口を閉じたので、扉にいた英蔵を含めた残り三人が笑いを堪えたように口を歪めた。
「なんにしてもさ、あまりにも物がなさすぎるよね、換気口と扉だけだよ」
浅葱が長い前髪を耳に引っかけて天井を見上げる。
「・・・まあ、その換気口を確認してみましょうか。大城さん肩車してもらえますか?」
「いいけど、大丈夫?」
「たぶん」
不安そうにしつつも大城は換気口の前で恒人を肩車した。大城の178センチ+恒人の座高で丁度換気口の高さにくる。
「お〜!高いっすね!」
「はしゃいでないで、危ないから」
「は〜い」
大城に言われて恒人は大人しく換気口をのぞき込む。多少びびりながらではあったが。
「ツネって、普段めっちゃしっかりしてるのにたまに、すごく・・・」
「いいじゃない、子供っぽいところも可愛いよ」
涙沙が濁した言葉を浅葱がさらっと肯定的に変換して笑った。
「ツネ〜、大丈夫?」
扉を押さえていた英蔵の問いに恒人がふり返る。
「普通の換気口っすね、外も見えないし、仕掛けもないみたいです。あ、ダメだ、油断しちゃいけないんだった・・・」
そう言って恒人は大城から下りた。
「あれ?そういえばツネって昨日は英蔵君の家に泊まったんやなかったっけ?」
涙沙に聞かれて恒人は頷く。
「ええ、昨日は遅かったし、明日も早いんで・・・英蔵さん家のほうが近いんでお泊まりしてました・・・ねっ!」
「うん、ツネは俺の家にいた」
恒人がぐるんっと勢いをつけてふり返ったので英蔵は慌てて頷いた。
「どこで寝たん?あの狭汚い家の」
「・・・ナチュラルに貶さないでよ」
英蔵の抗議は聞こえないフリを決め込んで姉妹組は話を続ける。
「英蔵さんのベッド・・・・・・・の横にマットレス敷いてそこで寝ました」
「なんで間を空けたの、今」
大城の疑問も流された。
「じゃあ並んで寝てはいたんやな」
「平面で見ればですけど。ベッドと床なんで高さの違いはありますよ・・・変ですよね」
「英蔵君の家ってそんなに汚くないよ?」
浅葱のずれた発言は流されなかった。涙沙と恒人がほぼ同時に答える。
「そりゃ浅葱君が遊びに行く時はなぁ」
「必死になって掃除してますから・・・」
「ねぇ、なんでそんなことまで知ってるの?」
英蔵の抗議はまたスルーされる。
「最初の疑問に立ち戻るわけですけど、こっちは二人でいるわけですから、当然その《犯人さん》は一人じゃなかった、ってことになりますよね?」
「・・・そうだよね、米俵より軽いツネちゃん一人ならともかく」
大城も二人の言わんとしていることが分かったらしい。
「米袋よりは重いっすよ?」
ちなみに米俵が60キログラムで、米袋が重いもので30キログラム。
「せやろ?どんだけ力持ちの人でも一人じゃ無理、ってことは相手は複数いたってことになるけど・・・」
「あ、そっか。複数人数が俺の寝室まで音も立てずに来られるわけがないよな、絶対、何か崩れるか落ちる・・・」
英蔵も気づいたらしくそう言った。
「でも実際、二人とも目を覚まさなかったわけですもんねぇ・・・」
しばし考えを巡らせるが何も浮かばない。
「あ、しまった。今は部屋を調べるんだったね」
「・・・こっちも確認してみよか?電球」
そう言って涙沙が電球を指さすと当たり前のように浅葱が涙沙を肩車した。
「触っちゃだめだよ、熱いから」
「子供やないんやから、分かってるて・・・ん!?」
「どうしました?」
「何か書いてある・・・」
ぐっと体を伸ばして涙沙は電球をのぞく。
《2921》
電球にはそう書かれていた。
【白い部屋】
Dチームからの伝言リレーを受けて4人は天井を見上げる。
「じゃ、しんぢとゆうや、よろしく」
「「はっ!?」」
さらりと言うマオにしんぢとゆうやは同時に抗議の声を上げた。
「・・・身長と体重の関係上オカシイでしょ?」
「俺、しんぢを肩車するのはちょっと自信ないんだけど・・・」
「ふ〜ん、無駄な筋肉だね。じゃあ明希ちゃん」
「ん〜。ゆうや〜」
明希に両手を出されてゆうやは渋々頭を下げた。明希が背中から器用に登ってゆうやの肩に乗る。
「明希、体重増えた?」
「筋肉分だよっ!?」
わあわあ言いながら年下組が肩車をしている間に思案顔のマオが言う。
「なんでオレらが《白》でムックさんが《赤》でDさんが《黒》なのかな?」
「・・・イメージカラー、とか?」
「まあそれでもしっくり来ると言えばくるんだけど、ヒントめいたものって色ぐらいじゃない?」
「白ねぇ・・・反射率が100%だとか、神聖な色だとか、無罪、純粋、あと黒の反対・・・」
「赤の反対でもあるよ、反革命、政治側の《白》、革命のカラーは《赤》」
年上組が真面目な話をしていると、何故か年下組も入ってくる。
「病院の色、ウエディングドレス・・・」
「お酒の色?」
「オマエら黙れ、さっさと電球確認しろ」
「「は〜〜〜い」」
マオに睨まれて年下組は電球の下に移動する。
「・・・電球のとこで肩車すればいいのに」
「アホなんだよ、脳みその変わりにスピーカーでも入ってるんじゃない?」
呆れる年上組のぼやきなど聞こえていないらしい年下組は電球を確認すると肩車をしたまま戻ってきた。
「《1203》って書いてあったよ〜」
「・・・あっきー!下りろよっ!!」
「いいじゃん」
「よくねぇよっ!!」
こいつらは生き残りそうだな、なにがあっても。としんぢとマオは口に出さずに思った。
出すと《フラグ》になるので口にはしなかったが。
「っていうかさ、よく考えたらこの話、ゆ・・・」
どごっ!!と明希が肩車をされたままゆうやの脳天に肘鉄を食らわす。
痛みに悶絶するゆうやから明希が飛び降りるとマオとしんぢからもゆうやに蹴りが飛んだ。
「いで!ちょ、マジで蹴るな!!俺が何をしたって言うの!?」
「《フラグ》というものをまったく理解してないねオマエ!!」
腕を組んで仁王立ちしているマオにゆうやが噛みつかんばかりの勢いで怒鳴る。
「世間一般的な人間は理解してねぇよそんなもんっ!!」
「あのね、ゆうや《希望的なこと》を口にすると実現する確立が底辺まで下がるんだよ。《生きて帰ろう》とか言うやつは大抵死ぬんだよ、だからそのオチの話だけは絶対口にしちゃだめなんだよ」
たった今、鬼の形相で肘鉄をかました明希が穏やかな笑顔で言う。
「ああ・・・そうなんですか・・・ごめんなさい」
ゆうやはもう謝るしかなかった。
【赤い部屋】
「あっちは何を騒いでるんだ?」
「仲良しだよなぁ!」
呆れたように放たれたミヤの言葉にサトチが楽しそうに答える。
いつもなら2方向から入る突っ込みも《フラグ》を警戒しているのかない。
「まあ、衣装だったっていうのも何か意味があるのかもしれないが・・・」
ミヤは長いストールを外して何かに使えないかと眺めている。
「・・・裸見られたんかなぁ?下着は寝た時につけてたやつだったけどよ〜、なんか気持ち悪りぃな〜」
このサトチの言葉にはミヤがふふっと小さく笑い、逹瑯とユッケは慌てて下着を確認しようとしたが、ユッケはともかく逹瑯はワンピースのような長いYシャツだったので諦めた。
電球の確認はさきほどすませた。
肩車とか無理と喚く逹瑯に「最初からオマエに頼むつもりはねぇよ、どんだけチャレンジャブルなんだよ」とミヤがサトチの肩に乗って確認した。
番号は《2474》だった。
部屋を調べると言っても何もない部屋だ、調べようがない。
「なんでオレらは《赤》だったのかな?」
ドアをもたれ掛かって押さえているユッケがぽつりと呟く。
「イメージカラーってのも妥当だと思うけどねぇ!?赤だろ、えっと血の色、火の色、色の三原色の一つ、情熱とか熱い感じ、あと警戒色、太陽、さっき聞こえてきたマオの言葉にもあったように反体制カラーでもあるよな・・・」
赤色に関連することを羅列する逹瑯の言葉をサトチはうんうん頷きながら聞いている。
「あと、あれだべ!トマトとか苺の色!ぐっちゃ、苺好きだべっ!」
そしてミヤに無茶ぶりした、たぶんこの男は《フラグ》の意味を一欠片も理解していまい、だからこそ《生存フラグ》が立っているとマオに言われたのだが。
その言葉にミヤからの返答はなかった、別に珍しいことでもないので誰も気にしていないが。ミヤは壁に張り付くようにして目を細めている。
「・・・そうか、まあ盲点ではあったよな、この部屋が真ん中だった上に、《白い部屋》への扉は内開きで《黒い部屋》へは外開きだから《赤い部屋》が二番目の部屋なんだと思ってしまっていたから確認はしなかったけれど・・・此処が最初の部屋でもよかったんだ・・・逹瑯、ちょっと来て見ろ」
ぶつぶつと何かを考え込んでいる時のミヤは怖いのでできれば行きたくなかったが断るともっと怖いことになるので逹瑯は素直にミヤの傍に移動した。
「此処に立って壁に張り付いて見てみろ」
言われた通り壁に体を押しつけるようにして見ると、すぐに分かった。
「あ、ああ・・・」
壁の真ん中辺り、丁度ドアの大きさぐらいが微かに膨らんでいた。
「逹瑯、そこから確認していてくれ、膨らんでいるのはこの辺りで間違いないな?」
ミヤが手を触れている位置を、頬を壁にはりつけて見る。
「うん、そこ!」
「感触はコンクリートなんだが・・・」
ミヤは少し考えてからベルトを外し、バックルでその境目辺りを削り始めた。
赤い塗料は簡単に剥がれて、下のコンクリートが露出する。ある程度削り終わるとはっきり分かる、膨らんでいる部分と平らな部分では明らかにコンクリートの色が違う。
膨らんでいる部分のコンクリートのほうが新しい。
逹瑯とサトチがミヤに並ぶ。
「此処が出口、なの?」
「第一のドアであることに間違いはない、が・・・問題は増えたな」
再び《赤い部屋》に全員が集合した。
「・・・大問題になっちゃいましたね」
「ん?なんで?」
深刻な顔で呟く恒人に英蔵がきょとんとした。
「アンタね、ドアがコンクリートで内側から塞がれてるんですよ!此処が出入り口だったとして犯人は何処行っちゃったんですかっ!?」
「ツネ、そこまで言っちゃったら今後一言でも英蔵君にデレ発言したら速効で《死亡フラグ》やからな・・・」
止めるの遅れた、と涙沙がため息。
「ああ、俺分かりますよ、このパターン・・・犯人がこの中にいるタイプの話で・・・ぎゃんっ!!」
のほほんと明希が言ったので隣にいたマオが叩いた、ぐーで思いっきり。
「《疑心暗鬼》は《崩壊フラグ》だろうが!!」
「まあマオ、明希に悪気はないんだから」
「悪気がないからタチ悪いんだろ、こいつは・・・」
むくれてしんぢの腕を掴んでいる明希を睨め付けてマオも深いため息をついた。
「ああっもうっ!!!めんどくせぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
びりびりと部屋中の空気を震わせて、逹瑯が叫ぶ。その声量に全員が耳を塞いで見つめた。
「フラグだとかなんだとか邪魔くさいんだよっ!俺は縛られるのが一番キライなんだ!フラグ上等じゃねぇか!立てまくってやるよ!そして全部へし折ってやる!ソリッドシチュエーションホラーだかなんだか知らないけどな!どんな状況でも俺は俺のために行動するぞ!そんで全員で助かるっ!!なあミヤっ!!ユッケもヤスもだよ!!」
ムックのメンバーは呆然と叫びだした唄うたいを見上げる。
「わけのわかんねぇこと押しつけてくる奴等に屈するのなんてオレらが一番嫌ってることじゃなかったのかよ!!フラグなんて気にしてる場合じゃねぇだろ!!こんなことやらかしたクソったれをぶっ飛ばす方法探すのが先だろうがっっっ!!」
まずミヤが笑い出した、心底愉快そうに笑った。
「オマエに指摘されるとはな、リーダーとしてミスだ。でもサンキュー、らしくなかったわ、確かにどうでもいいよな。フラグが立ったら折ればいい、それだけの話だ」
「ま、そもそもミヤ君の存在がフラグクラッシュではあるもんね、逹瑯もだけどさ、それを考えてたらフラグなんて怖くないや!」
「ん!よく分かんねぇけどみんないつも通りだなっ!俺もいつも通りだなっ!だったら負けねぇなっ!」
ユッケとサトチも笑い出し、4人は拳を合わせる。
その様子を薄い唇を結んで見ていた恒人の頭を浅葱が撫でる。
「間違ってはなかったから良いんだよ?ツネの指摘も正しかったもの。でも、もうワンランク上があったんだよね」
浅葱の肩に頭を預けるようにして見上げながら恒人は微笑む。
「それに縛られて、自分らしくなくなってしまったらダメってことっすかね」
「そういうことみたいだね」
恒人は浅葱から離れて英蔵の前に立つ。
「・・・英蔵さん」
「・・・どした?」
しゅんとした様子が微笑ましく、優しくそう声をかければ恒人はにっと笑って言った。
「いじめまくっていいですかっ?」
「す、すごい告白をされた・・・」
「10分の1でちゃんとデレも挟みますから」
「それって多いのか少ないのか・・・」
「やっぱツネちゃんがそうしてくれないとね、俺も力一杯やるよ!」
ぐっと拳をつくって笑う大城に英蔵は肩を落とす。
「すごくカッコイイ台詞っぽく言ったけれど、俺をいじり倒すことをですよね・・・」
そのすぐ傍で涙沙がひょいっと浅葱の腕にぶら下がるように抱きついて笑う。
「やっぱアレやん。いつも通りのオレらが一番強いって、なっ!?」
「そうだね・・・」
そんな涙沙の頭を撫でながら浅葱も笑う。
「まったくかなわんね、確かにフラグなんかにビビることはない、か・・・いつも通りの俺となると、こーいう状況だとめっちゃ不安で落ち込みモードで緊張しまくりなんだけどオッケー?」
くるっと反転してメンバーを見るマオに他の三人も笑う。
「それでも頼りになっちゃうのがマオ君だもん、ぜんぜんオッケーだよ」
「まあ適当に適度にフォローするよ、異常事態だからこそ平常でいるのも大事だよね」
「わりといつも通りだった気もしなくもないし、その結論だと俺、蹴られ損ですけどっ!?フラグに気を使うなんて邪魔くさくてさ、俺はそのほうが楽だし問題ないっ!」
満面の笑みを浮かべる仲間達にマオは軽く口角を上げて言う。
「俺と明希としんぢで力を合わせて頑張ろうな!」
「・・・もう一人っ!!」
「三人で無敵だよね」
「もう一人っ!忘れないでね、もう一人!」
「うっせぇな、はいはい、ゆうやもね・・・」
「うわぁ、すげえついで感っ!!」
口に手を当てて肩を震わせるマオに他の三人も笑い転げる。
そこに大音量のアラームが鳴り響いた、全員笑うのを止めて天井を見上げる。
「鬼が出るか蛇がでるか、だね」
「《お次はなんだ?》ってやつだな」
マオとミヤが不敵に笑って天井を見上げる。
裸電球がゆらゆら揺れている。
「英蔵さん、何かあったら盾になって下さいよ?」
「もちろん」
「は?なに承諾してるんですか、そんなことしたら一生恨みますよ」
「・・・ごめん」
「来るならこいよ、相手してやる!」
びしっと中指を立てて逹瑯が笑う。
アラームが鳴り響く、部屋全体が大きく揺れる。
目を開けた。見慣れた、自分の寝室の天井が見える。
ミヤは起きあがって携帯電話のアラームを止めると煙草に火を点け、時間をかけて一服した、フィルター近くまで煙草が短くなる頃、ようやく笑って呟く。
「・・・よし、《夢オチ》成功だな」
煙草を灰皿に押しつけ、眠そうに目を擦る。
「逹瑯、なかなか格好良かったじゃねぇか。普段からああならなぁ。まあ普段も格好いいけどさ」
などと本人が聞いたら床にめり込みそうなことを楽しげに言いながら、本日も元気に仕事に向かうべく立ち上がった。
「うし、今日も頑張るか・・・良い夢見たし、な」
マオはアイマスクをずらして天井を見た、あの病的な白ではない、ましてや赤でも黒でもない、自室の少し汚れた天井。
「・・・今時《夢オチ》とか怒られるよ!?ブーイングだよ!?」
寝起きで目の怖さ倍増中のままマオは立ち上がって煙草に火を点ける。
「まあ短編だからいいか。長編でやったら俺、キレるからね。まったくまあ途中からそうかなとは思ってたし、ゆうやが言いかけたのも止めたけど・・・」
ゆっくりと紫煙を吐き出しながらマオは目を細める。
「《フラグ》よりも自分らしさが大事ね、ま、良い夢だったかな」
ぶつぶつ呟いていると、携帯電話がメールの着信を告げた、それも立て続けに。
《差出人:明希
なんかすげえ面白い夢だったね。今日も頑張ろう》
《差出人:ゆうや
やっぱ夢オチじゃん!まあ今日もやるぞーっ!!》
《差出人:しんぢ
夢だけどお疲れさま。夢だけどね。じゃあ後で》
顔に浮かんだのは、苦笑か、照れ笑いか、喜びの笑みか、マオはその一通一通に同じ文章を返す。
《おはよう、オマエら。現実でもよろしく》
「あれっ?」
英蔵が間の抜けた声を上げてベッドから起きあがると恒人はすでに起きて、布団を畳んでいた。
「はれっ!?」
また間抜けた声を出す英蔵に恒人は笑い半分呆れ半分といった顔で見つめる。
「おはようございます。《夢オチ》成功ですね」
「ゆ・め・お・ち!?」
「あんな荒唐無稽な状況、それ以外になにがあるって言うんですか?」
当たり前だろうとばかりにきっぱり言われ、英蔵は混乱する。
「あの、ツネが散々フラグだなんだって言ってたのは・・・」
「もちろんあれが本物の《ソリッドシチュエーションホラー》である可能性もありましたし、夢でも誰かが死ぬのは気分悪いですから。ま、ちょっと暴走しちゃいましたね、たしなめられる形になりましたし、どっちにしてもこれは《夢オチ》です」
「で、でも・・・」
すっと英蔵の唇に恒人の人差し指が添えられる。
「あんまり言うと、コレも夢になっちゃいますよ?最近は二重のどんでん返しも珍しくないんですから、でもあくまで英蔵さんらしく、空気読まずに突っ走りたいのでしたら俺は止めませんが、罵りますけど」
「・・・寝起きにすごいこと言われた」
《夢オチ》ねぇと英蔵は目の前で悪戯っぽい笑顔を浮かべる、恒人を見る。
ああそうだこれを言わなくてはと英蔵も笑う。
「ツネ、おはよう」
「おはようございます、って俺は二回目ですけど」
「現実でも、いつも通りで?」
「イヤですか?」
「イヤじゃないよ、むしろいつも通りがいい」
「じゃあ今日も頑張りましょう」
おはよう、みんな。
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