ついばむようなキスが身体を熱くする。夏休み――家に親がいない日の自室でのこと。クーラーの効いた涼しい部屋で丸いローテーブルに肩を並べて一緒に課題をしていた筈が、気づいたらこんなことになっていた。こう言うことをするのは初めてではない。これから倫くんが何をしようとしているのか分かっているし、それを考えると余計に体が火照った。倫くんは私の手の甲を握り、キスを繰り返す。唇を吸って舌を這わせて、絡ませて。意識が溶けそうになる中、窓の外からは子ども達の遊ぶ声が聞こえた。だけど、今日はそのまま続けるわけにはいかなかった。
「ごめん、今日生理だから」
 私は倫くんの身体を引き離す。倫くんは動きを止めてじっと私を見た。その表情を読み取るのは難しい。再び「ごめんね」と言うと倫くんは私を引き寄せ
「別に気にしない」
 そう言って私の背中に片腕を回し、もう片方の手は私の服の中へと伸ばした。私は慌ててそれを押さえる。
「気にして。そこは、気にして」
 すると、普段は表情を変えない倫くんが、珍しくその口の端を上げた。とても妖艶で媚薬の様な色気が滲み出る。倫くんが舌で自身の上唇を舐めると、官能的な艶が更にあふれ酔ってしまいそうだった。どうしてこう言う時だけこんなにも表情豊かになるのだろう。倫くんが触れるか触れないかの様な絶妙な力加減で私の体をなぞり始める。ぞわぞわと震える体に耐えながら倫くんの手を押さえた。
「や、だめ……ほんと、だめ!」
 両手で押さえているのに私より逞しい腕はちっとも止まらない。倫くんってこんなに力強かったんだ。
「ね、倫くん……ほんとだめなの、ね。お願い」
 理性を必死に掴みながら溢れそうになる涙越しに倫くんを見る。倫くんはその切長の目に私を映し、うっすら笑ったかと思うとようやく手を止めた。
「今日は見逃してあげる」
 倫くんは私の目元にキスを落とし、ゆっくりと名残惜しそうに離れる。私は思わず安堵の息を吐き、乱れた服を整えた。するとその様子をみていた倫くんが「いやさ……」と口を開く。
「気にするとか、しないとか、そういうのじゃなくてさ、抵抗されると燃えるんだよね。ナマエって本当に可愛い」
 その時私はよっぽどひどい顔をしていたのか、この後私は真顔の倫くんに両頬をめいっぱい引っ張られた。