宮侑の場合 其の四



※捏造ばっかり※

 シーズン中になると、人が変わったように最初の目覚ましで目を覚ます侑は、シーズン中だけ正しい集合時刻を知らされていた。
「ナマエちゃん、朝やで。早よ起き」
 色気を感じるほどの落ち着いた大人の男性の声に名を呼ばれながら優しく体を揺らされ目を覚ましたナマエはいつも笑いそうになってしまう。おはよー、と言って爽やかに笑う侑は、血相を変えて、うわぁああ、遅刻やぁ! と絶叫する侑とはまるで別人だからだ。おまけに、目元にキスまで落としてくる。
「何わろてんねん」
 そう尋ねてくる侑は穏やか過ぎて、シーズン前とのギャップにまた笑いそうになった。
「侑くんがかっこいいからだよ」
「朝から言うなぁ、ナマエちゃん。俺も可愛い奥さんが隣に寝とって幸せやわ」
 こんな雑談までできるほど、落ち着いた朝が宮家に来ることもあるのである。

 遅刻だと思っていない侑は、洗面台の下から自分でワックスを見つけることができる。
「ナマエちゃん、ワックスなくなったでー」
 空になったワックスの容器をゴミ箱に捨てながら侑が言うので、ナマエは、新しいの買ってくるね、と返す。いつもありがとーな、と言う侑に微笑まれ、宮家の平和な朝は続く。

「やっぱ、ゆっくり食べるナマエちゃんの飯はうまいなー」
 お茶碗を片手に、箸で摘んだ焼き鮭を口に入れる侑に、なんだかんだでいつもゆっくり食べてるけどね、とは言わない代わりに、ありがとう、と返す。すると、ナマエちゃんこそいつもありがとうな、と礼を言い返され、こんな平和がいつまでも続けばいいのに、と何かのフラグのようにナマエは願わざるを得なかった。

 食事を終え、ナマエが洗い物をしていると、歯磨きを終えたであろう侑はナマエの後ろからナマエのお腹に手を回す。
「侑くん、くすぐったいよー」
「ナマエちゃんからパワーもろてんねん。ちょっと我慢して」
 そう言った侑がナマエの首筋に唇を落とすので、ひんやりとした感覚にナマエの体はびくりと震える。可愛いなぁ、と低い声が耳元で聞こえると、ナマエの身は縮こまった。
「もう、侑くん!」
 ナマエが振り返ると、侑にキスされる。
 こんな甘い朝が宮家にもあったのだ。

 洗い物を途中で切り上げたナマエは、玄関で、ほな行ってくるわ、と言う侑を見送る。いってらっしゃい、と言えば満足げに笑った侑は部屋を出ていった。
 閉ざされた部屋の扉を眺めながらナマエは疑問に思う。
 なんで、シーズン中は毎朝ちゃんと起きれるのに、普段は毎日のようにスヌーズの目覚ましを見送るんだろ。
 それは、侑にもよく分からない宮家の七不思議の一つ。