プロンプトくんと車旅

なまえさんに出会ったあの日からモンスター討伐を手伝ったり手伝ってもらったりしていく中で、なまえさんがどんな人なのかを知る機会があった。
生まれ育ったこの街で、ハンターだった父親の影響を受けたのが始まり。元々この街にハンターは少なくてどんどん増えていくモンスター達を前に自分も戦っていくしかなかったらしい。女の人なのにここまで決意固めるのってスゴいよねぇ…

ずっと街のために離れなかったせいもあって、もっと広い世界を旅する夢がある事も教えてくれた。
お人好しなノクトはオレ達と一緒に来いってすぐに口にした。それはグラディオやイグニスも、もちろんオレだって…一緒に来たらいいって思ったから誰も異論はなかったけど、なまえさんはすごく悩んで、一度は首を横に振ったんだ。
でも街の人や父親に行ってこいって背中を押されて、笑顔でオレ達の前に戻ってきてくれた。

そんな感じで仲間になったんだけど、やっぱり第一印象通りなまえさんは持ち前の明るい性格であっという間に皆と打ち解けてしまった。
グラディオとはキャンプ話で盛り上がって、ノクトとは姉弟のようにふざけ合ったりゲームしたりして…



「なまえ、何度言えば分かるんだ。肉ばかり食べていては…」

「わ、わかったから!次から食べる!」



イグニスには頭が上がらないらしい。イグニス、お母さんみたいにコワいもんね…



「プロンプトくん助けて!イグニスが!」

「うわ!」



イグニスから逃げてきたなまえさんが勢いよく飛びついてきて慌てて受け止める。そのすぐ後ろにイグニスが追いかけてきていて、オレの腕の中にいるなまえさんを見下ろした。オレが怒られてる訳じゃないのにちょっとコワい。



「なまえさん危ないってばぁ」

「だってイグニスが追っかけてくるんだもん!」

「今夜は野営の予定だ。野菜たっぷりのメニューにしてやるからノクトと一緒に残さず食べろ、いいな?」

「ひいぃ……」



イグニスはいつもよりちょっと厳しい口調でなまえさんを叱った後、レガリアに荷物を積んでいるグラディオの所へ歩いて行った。残されたなまえさんは相変わらずオレに抱きついたまま夕食を想像しているのか眉をハの字にしている。



「イグニス、野菜の事は厳しいから諦めた方がいいよ…」

「だってお肉の方が美味しいんだもん…」



フォローしてあげたい気もするけど、野菜を巡る掛け合いはノクトのを見てきたから何も言えることがないんだよねぇ…。結局なまえさんの助けになるような事は言えなくて、拗ねた様子でオレの肩にぐりぐり頭を擦り付けてくるなまえさんは年上には見えない。ついポンポンと小さな背中を撫でていた。

もちろん年上のお姉さんに甘えてみたいっていう願望もあったりするけど。なまえさんは何か違うんだよなあ…今もどっちかと言えばオレの方が年上っぽいし。
でもそこがギャップってやつなのかなー?



「プロンプトくんからもお願いしてよー」

「ムリムリ!もうノクトに頼まれていろいろ戦ってきたけど、オレがどうこうする問題じゃない感じ」

「えーー…」



またもやぶすっと頬を膨らませて拗ねてしまうなまえさん。おまけに本人としてはジトッと睨み付けてるつもりなんだろうけど、全然……上目遣いだし、ちょっと…カワイイ…。



「あっ、今わたしの事可愛いって思ったでしょー」

「えっ」



な、なんで?!オレの心読めるの?!
唐突な言葉に思わず声が上ずってしまった。



「ち、違うよ。諦めてくれないなあって…」

「ふふふ…プロンプトくんのそういう素直じゃないとこも好き」



オレのザ・動揺してますって態度はなまえさんに通用するわけもなく、今度は嬉しそうな顔になってまたオレの肩に頭をこてんと乗せた。いつも思うけど、ほんとになまえさんには敵わない…



「おーいお前ら、イチャついてねえで出発すんぞ!」

「はーいっ」

「イ、イチャついてなんかないって!」



なまえさんのペースに飲まれてしまってどう切り抜けるか頭を悩ませていた所にナイスグラディオ!
ちょっと聞き捨てならない一言だったけど、感謝しつつ上機嫌にオレから離れてレガリアの方へ駆けていくなまえさんの後を追った。きっと上機嫌なのは、ずっと乗りたかったレガリアで遂に旅に出る事が出来るからだろう。



「やっとレガリアに乗れるんだね!…誰の運転?」

「そりゃあオレ」

「いや、初めて乗る時にノクトの運転ではトラウマになりかねない。オレがしよう」

「おいイグニス」



なまえさんの質問に軽快なコントを見せるノクトとイグニスに笑いを堪えていると、運転席に乗り込むイグニスを見たなまえさんの視線が今度はオレに向けられた。



「じゃあプロンプトくんはどこに座るの?」

「オレ?オレはいつも助手席かなあ」

「えーー」



運転したいわけでもなさそうだし、なんだろう、今の反応は…助手席に座りたいのかな?
さっきまで上機嫌だったのに、またちょっと不機嫌そうな顔に戻ってきてるし…



「別にオレ後ろでいいよ。なまえさん助手席座ったら?」

「バーカ、なまえはそう言いたいんじゃねえよ」

「え?」

「お前も気付けよ……」

「え?え??」

「ほら乗った乗った!」



オレはどこに座ってもいいし譲ったつもりだったのになまえさんの表情は変わらなくて、どうしたいのかと困惑しているとグラディオがなまえさんの肩をポンと叩きながらニヤついて、ノクトまで呆れたようにため息をついた。それを見ていたなまえさんは「2人ともよく分かってるー!」と口角を上げた。…オレだけ分かってないってこと??

グラディオの言葉を合図にノクトはいつもの後部座席の左に乗り込んで、グラディオは助手席にどかっと腰を下ろした。そしてなまえさんはノクトの隣に詰めて乗って…



「プロンプトくん、早くおいでよ!」



後部座席の残った右側3分の1くらい…と言ってもなまえさんが小柄だから実際はもっと広いんだけど、そこをなまえさんは楽しそうにポンポン叩いた。そういう事ね…



「隣に座りたかっただけ…?」

「だってせっかくのドライブじゃない」



相変わらずなマイペースさ。そんなにオレの隣が良かったの、なんて聞く事は出来ずにいると隣に乗り込んだオレの左腕にぎゅっと抱き着かれて、その…柔らかい胸が、モロ押し当てられてる。うぅ……ちょー柔らかい…



「お前も彼女の考えてる事くらい気付いてやれよ」

「ノクト?!付き合ってないからね!!」

「わたしはいつでもウェルカムだよー?」

「なまえさんはシーー!!」

「全く…イチャつくのは2人の時だけにしてくれよなー」

「グラディオまで!」

「お前たち、いい加減出発するぞ」

「はーい!出発進行っ!」



なぜかオレとなまえさんを恋人扱いする2人と、ノリノリのなまえさんに振り回されるオレ。今ならレガリアからなまえさんを降ろさせちゃって行く事も出来る…なんて考えが頭をよぎった瞬間にイグニスの一言と同時にレガリアは街を出たのだった。

長い車旅、隣にキレイなお姉さん、柔らかい感触。
この先オレはどうなっちゃうのかな……





to be continued...



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