「あれから1年も経つんだね」
「あの時の山崎さん、かわいかったよねえ。ぷるぷるしてたよ」

ケラケラと笑う少年―いや、少女は苗字名前。真選組監察兼何でも屋。
彼女がここにきて一年が経とうとしていた。少年のようだった顔も身体つきも、最近は成長期と言わんばかりに発達してきており、今では男、女で間違えるようなことはない。しかし、あの時は髪も短く幼かったなあ、と彼女の横顔を見ながら山崎は思った。

「幕府の引継ぎもようやく終わったらしいね」
「そうそう、邪魔臭いよねえ」

彼女はここに来る前に幕府で仕事をしていた。それを近藤局長は知っていたらしく、すべての任務が終わったらここで雇いたいと長官に懇願していたらしい。これは後になって知った話だ。幕府では主に監察として動いていたらしいので、ここでの配属も監察となっている。

「さて、と。土方さんに呼ばれてるから現場行くけど、山崎さん気を付けてね」
「ありがとう。…名前も気を付けてね」
「あはーそうやって心配してくれるのは山崎さんだけだよ!んじゃあとで!」

そういって彼女は立てかけてあった、刀を取り、じゃあねと部屋を飛び出した。

***

―爆発音。
張り込み先に向かっていると遠くのほうでだいぶデカい爆発音が響いた。急がないと

「すみません、なんか遅れましたね」
「遅れましたね、じゃねーんだよ!今日は書類の前にこっちって言っただろ!」
「いや土方さんこっちにいるからいいかなって…あ、あっちで爆発ってことは大使館だったんですね。山崎さんバッチリです」
「もう抑えに行ったのか」
「はい。さすが優秀」
「その情報をつかんできたのはお前だろ。監察としては評価するがお前は現場の人間だってことは忘れんじゃねーぞ」
「あい〜」

「天人との戦で活躍したかつての英雄も、天人様様のこの世の中じゃ反乱分子か」

少し、眉を落としたかのように見えた土方は手に持っていた紙をグシャっと丸めると、アイマスクを付けて寝ていた沖田に向かって投げた。それにびくっと反応して、沖田はムスッとしながら起き上がった。

「総ちんってさあ、よくあの爆音の中寝てられるよね」
「お前何回いえばその呼び方変えるんでィ。ご主人様と呼べ」
「やだよ、ミツバちゃんに言うよ」
「やめろ」
「ぐえ」

アイマスクをとったかと思うと、自分につけられてしまって変な声が出た。沖田とは武州にいたときから年が近かったせいか仲良くなるのに時間はかからなかった。沖田と、沖田の姉と三人でよく一緒にいては「兄弟みたいね」と声をかけられたくらいだ。

「それにしても爆発ってどういうことでィ。仕事しろよ土方ア」
「もう一回眠るか」
「まあまあ二人とも落ち着いて。今日の獲物は大きいんだから」
「ああ、そうだな。真選組の晴れ舞台だ」


***

「御用改めである!」
その土方の掛け声で、切込み担当の隊士たちが突入していく。

「んじゃ、私は偵察しながら行くねえ」
「気ィ抜くなよ」
「まっかせなさい」

土方に声をかけてから、トトトっと軽やかに女は駆けていった。きょろきょろとあたりを見ながら、それでも正確に向かってくる敵を倒しながら進んでいく。




「―と処断されたくなければ…」

ある部屋から声がするのを女は逃さなかった。そしてすぐに刀を天井に突き刺して、人ひとり分の穴を開けて、潜り混む。うわ、ここ埃っぽい。小さい穴を開けて除くと子供が二人に銀髪と――長髪。見つけた。口元が自然と緩む。すぐに内線で土方に場所を教える。そして暫くすると、勢いよくふすまが飛ばされた。仕事が早くて、うれしい。

「神妙にしろ、テロリストども!」
「いかん、逃げろ!」「一人残らず打ち取れ!」
攘夷志士たちが一斉に逃げ出すタイミングを見計らって、女も天井から降りる。
と、下から「ぐえっ」と音が聞こえた。

「あ、ごめん」
「ごめんじゃねえんだよ!降りろバカ!」

降りたと思ったところは、どうやら土方の頭上だったらしい。ごめんごめんと言いながら、女はそこから飛んだ。そして土方は舌打ちをして銀髪を追いかけていった。

「よくやったな、褒めてやるぜ」
「…何でこんなところでバズーカ持ってんの?」
「なんでって決まってるだろ。おーい土方さん危ないですぜ」
「あ、ちょっと待ってこんなところで撃ったら」

―始末書だ。と思ったときにはすでに遅し。沖田は土方に向かってバズーカを撃った。

「あーあ自分で書きなよ、絶対に」
「嫌でィ。何でも屋だろお前。さーて生きてやすか、土方さん」
「何でも屋ってお前の尻ぬぐい屋じゃないからね。大丈夫?土方さん」

「バカヤロー!死ぬとこだっただろうが!」
「チッ しくじったか」
「殺す気ならもっといいの使いなよお、バズーカは大きすぎ」
「しくじったって、つーか名前!お前も何言ってんだ!」


そうやって言い争っていると隊士の一人が隠れ場所を発見したらしく声をかけてきた。
そういえば本題を忘れてたな。

「出てきやがれ!無駄な抵抗はやめろ!」
「そういや土方さん、貴公子さんの顔見ました?イケメンでしたか?」
「お前、イケメン好きすぎだろィ。気持ち悪」
「イケメン好きで何が悪い。世の中、金とイケメンだよ?」

「お前らなんの話をしてんだ!」
「「イタ」」

二人して土方の拳骨を食らった。いたた。

「そういや土方さん、夕方のドラマ再放送始まっちゃいますぜ」
「やべえ ビデオ予約忘れてた」
「え、まだ見てるんですかあれ」
「さっさと済ますぞ、発射用意!」

ガチャリと構えた瞬間。いきなり襖を蹴って犯人たちが出てきた。あれさっき見たときにはいなかったアフロもいる。なんで?

「おい、止めろ!」
「止めるならこの爆弾を止めてくれェ!爆弾処理班とかなんかいるだろ!」
「ウワァアアアアアアこいつ爆弾もってんぞ!!」
「ちょっ、待ておい!げッあと六秒しかない!」

「爆弾ですか?」
「なんだガキ、どうにかしてくれんのか!?」
「むっ ガキとは何ですか。じゃあ」

女は腰から鞘ごと刀を引き抜き、ぐっとバットを持つかのように握りしめ
―――「さよーならー」
銀髪アフロを窓の外へとうち飛ばし、無事爆弾は空で爆破。

「さ、帰りましょ。ドラマ見るんですよね?」
味方も敵も、その笑顔にただただ立ち尽くすしかなかった。