わらってゆるして
先にイッてしまった俺は、ちんこを拭きながらぼんやりと2人を眺めている。内側から破裂しそうなくらい荒ぶっていた俺の性欲は、2回の射精とともに急にぱあっと晴れて、このベタベタでふにゃっとなったちんこの如く、大人しく、満足している。ぷにぷにしているちんこを根本から優しく握ると、先っちょにまだぽつりと精液が顔を出す。それが今にも喋り出しそうな口に見えて、何だかかわいい。
ああ、めちゃくちゃに、気持ちよかった。
「は、あ、ごめ、もう」
「ん、んっ、いい、っ」
仰向けになった釘崎のおっぱいが揺れる。少し反った背中。骨盤を掴んだ伏黒。ぬちょぬちょに濡れているちんこが、出たり入ったりする。
「無理、あ、で、るっ」
「なか、ぁうっ」
「ぁ、う、う……ッ、く、ぁ」
「あ、ぁ」
奥に押し付けながらイくのって、案外難しいんだよな。伏黒、すげえ。なんか俺、気持ち良すぎて腰が引けちゃうんだよ、バカみたいだけど。
伏黒は背中を丸めてびくびくと震える。黒髪が垂れて表情がこちらからは見えない。釘崎は踵で伏黒の丸まった背中を自分のほうに引き寄せた。
「は……ふ、はぁ、ぁ……」
「はぁ、ぁ、ふ……」
「はぁ……やばかった」
「おつ……かれ」
「ぁ、おつかれ」
そのまま伏黒はゆっくりと釘崎の上に倒れた。釘崎が髪にちゅっとキスをする。その手が今度はこっちへ伸びる。俺も、俺は、唇に。
「虎杖、わたし口、さっき」
「いいよ」
「ん」
ちゅ、と合わせる。汗で前髪が額にくっついている。それを指先でずらしてやる。かわいいおでこにもう一回キスをする。
「釘崎、すげーよかった。ありがと」
「でしょ」
「俺も……」
伏黒が深呼吸と同時に呟く。
「ふふん」
釘崎は満足したように笑った。
「あ、ごめん、ちょっと抜けそう」
「もう?」
「って、今どくから……っう、あ、腕固まった」
といいつつ、伏黒はゆっくり体を起こす。正確にいえば、体を乗せているけれども体重は自分の腕で支えていたようだ。ほんとそういうとこ、優しくていい奴。なるべくシーツにこぼれないように、股間にティッシュを当てながら抜く姿はウケる。抜けると同時に釘崎は脚を閉じて、俺たちに背中を向けた。伏黒が、足元に丸まった毛布を釘崎の肩まで掛けてあげる。
「わ、すっごい、たくさん」
布団の中で釘崎はもぞもぞと腕を動かす。多分、出てきた精液を拭っているんだろうか。中で起きているエッチなことを想像すると、じーんとしてしまう。あの指が、自分のまんこ触って、そこに俺たちの精液がついてるんだろ?
「ごめんて」
「別に謝ることじゃないでしょ。てか先にお風呂入ってきちゃって」
「うん」
そのまま腰を上げた俺と対照的に、伏黒は毛布にそっと滑り込んだ。
「あんたも行きなさいよ」
「釘崎も……一緒に、どう」
「恥ずかしいから、いい」
「じゃあ、俺、もう少しここにいる」
「は?」
「だめか?」
釘崎の二の腕に唇を寄せて伏黒が聞く。うっすら痕が残っていて、そこを唇でなぞった。
「ダメじゃないけど」
そう言いながら釘崎は伏黒の頭の下に自分の左腕を通す。腕枕だ。
「え、俺もして」
「しょうがないわね」
「わーい」
俺も、毛布をめくって釘崎の右側に寝転ぶ。敷布団と敷布団の隙間が腰のあたりにあるので、背中はイマイチだけど、すべすべの肌が心地いい。
「なぁ釘崎、ぎゅー、していい?」
「どーぞ」
俺は釘崎の方を向き、右腕を伏黒まで伸ばして伏黒の腕にも触れる。抱かれたのは釘崎なのに、俺たちの頭を二つも抱いて微笑んでいるのも釘崎だ。汗が引いて少しヒヤリとした皮膚の下に、あったかくて柔らかいものが薄く横たわって、その奥には俺よりも繊細で滑らかで力強い筋肉が動いているのを感じる。おっぱいに頬を寄せながら、あー、赤ちゃんって、いいなぁ、と、思った。
釘崎が俺の髪をくるくる指に絡める。
「赤ちゃんみたい……、いや、ナマでヤったあとに、赤ちゃんって言うと妙にリアルか」
「……」
「釘崎さ……」
伏黒が口を開く。
「ん?」
「きつくないか、3人でする時」
「なんで?」
「イヤ、その……」
口ごもる伏黒の頭を撫でながら釘崎が言う。
「心配してる?」
「うん」
「それ逆に失礼だかんな」
「マジか、ごめん」
「いいよ、別に。てかこれがいいの」
「ふーん」
「……実際自分以外の残りの2人でヤってたら、寂しくない?」
「まぁ、それは、ある」
置いてかれたって思う、と伏黒は呟いた。釘崎は器用に足で下着を引き寄せながら、俺に「ティッシュ」と言った。2人分の精液。3枚で足りるだろうか。左肘をついて体を起こし、ティッシュを取る。
「足りない、もう2枚」
「……あのさ」
小さく俺が話し出したのを、釘崎は聞き逃さなかった。
「なに」
「好きだよ。2人のこと。すげー好き」
「ン、改まって」
「だから、だからさ。ずっと、このままがいいな、って……」
このまま、もう何も起きないで、フツーに卒業してフツーにおじさんおばさんになったらいいな。難しいことは全部何とかなって、明日からもずっとこうやっていたいなって。
「ごめん、いいや」
「……」
「……」
もう一度布団に潜る。おっぱいにほっぺを擦り寄せる。あったかい、いいにおい。
「……俺の方が、好きだと思う」
先に口を開いたのは伏黒だった。
「え?」
「俺の方が、好きだ」
「そーゆー返し?」
「いや、私の勝ちね」
「釘崎?」
「賢者タイムなんてらしくないわよ」
「なに賢者タイムって」
「ググれ」
「伏黒知ってる?」
「知ってる」
「うそ……てか俺、2人を好きって言っただけだよね??」
「顔見たらわかるって」
釘崎が俺の頬をつつく。
「あっハイ」
顔、俺そんなに顔に出てるかなぁ。
「……虎杖」
「うん」
「俺もわかる、なんとなく」
「マジ?」
「アレ、あんたも賢者?」
「こうしてると、すごく、死にたくなくなる」
「そう、それ。よくわからんけどなんか色々全部なんとか……こう、五条先生とかが解決してくんねーかなって思う」
「ウケる」
「……だってさ〜」
「……」
「……」
だってさ。多分コレ、幸せなんだ。でももう俺に手放しで幸せになる資格は残っていなさそうだし。
どうしても続きが言えなくて俺は黙ってしまった。
「……泣いてんの」
沈黙を破ったのは釘崎だった。
「泣いてねぇ」
「あんたさ、そんな話、しないでよ」
「「……」」
「あんた特に、一回死んでるし。そのうち、とか考えたら。マジで無理。ほんと最悪」
「釘崎……」
「ごめん」
「フン、ばーか」
釘崎は目尻を拭ったあと、また俺に背中を向けた。小さく丸まった釘崎を伏黒が抱きしめる。俺はちょっと慌てて声をかける。
「釘崎、ごめん」
「死んだら殺す」
「うん」
「あんたも、伏黒」
「うん」
伏黒が俺に目配せをする。それに促されて、もう一度2人を抱く。あったかい背中。2人の呼吸はばらばらで、あっちもこっちもでこぼこに動く。
「……好きよ」
「ウン」
「嘘ついたら2人とも呪うから」
「わかった」
好き、好き。好きだよ。好きすぎるから、俺たち、こんなわけわかんないことになってんだろ。
しんみりしてしまった。俺が全部悪いんだろうけど。なにか、別の話がしたい。こんな悲しい時間を過ごすのはもう、もったいないんだ。
「……てかさ、さっきの、ヤバかったくね?」
「ヤバかった」
「ヤバイ」
「釘崎もなんか違った?」
「引っかからないで馴染む感じがイイ」
「わかる」
「わかる」
「また、させてらやない事もない。てか、しよ」
「あざッす」
「おぅ」
「2人とも、カマキリだったら今頃私に食われてるからな」
「どうぞ……お好きに」
伏黒があくびを噛み殺しながら言った。
「エッロ」
柔らかく目を閉じた伏黒は、そのまつ毛がうっすら濡れているように見える。
「……何でだよ、虎杖」
「つい」
その中からエメラルドグリーン? 青っぽくて緑な、とにかく綺麗な瞳がチラチラ見えるの、最高。
「ちょっと私、シャワー行ってくる」
「うん」
「2人でシてても良いわよ」
「しないよ」
「もう無理」
釘崎が抜けて、毛布の温もりが飛んでいってしまった。仰向けに目を瞑った伏黒へ、そっと手を滑らせる。途中でシーツのペトペトしている部分に触れた。俺のと、伏黒のと、釘崎のいろんな汁が混ざってるやつ。そのうち乾くだろうし、洗ってしまうのはもったいない。
「釘崎が帰ってきたら起こして」
「伏黒……」
「ん」
伏黒は目を閉じたまま返事をする。俺はその手に指を絡める。
「ちゅーしよ」
「ん」
目を閉じたままこっちを向いてくれるので、ほんと、赦されてるな、と思う。
「ン」
唇を合わせ、下唇を挟んだ。舌を入れられるのか? と、思ったんだろう。少しだけ開いた唇を、吸った。
「ッ……ぅ、ん」
「は……伏黒ン事も、すっげーすき」
「どうしたんだよ、すごく甘え、ン」
「わかんねーけど……」
解いた手で、脇腹と腰を撫でて、それからちんこに指で触れる。だいぶ乾いているけれどもベトベトしている。伏黒はくすぐったいのを我慢しているようだ。
「ンもう、出ねぇ」
「わかってる」
「あ、ゥン、こら」
手のひらで包んで上下すると、俺の手に伏黒は自分の手を重ねた。
「触るだけ……何もしねぇって」
「してるんだよ」
「もう勃たねぇ?」
「ム、リ」
「後ろは?」
尻の筋肉を触る。抜けていた力が急に入って硬くなった。
「準備してねぇ。ゴムもないだろ」
「そっか〜」
「そっかじゃなくて」
話しながら、頬や首筋に軽くキスをする。首は特に、伏黒の匂いがした。
「じゃあ、ちんちん舐めていい? ちょっとだけ」
「しねぇって、言ったくせに」
「釘崎はしててもいいって」
「……勃たねぇかも」
「ん……いいよ、俺が舐めたいだけ」
「……勝手にしろ」
毛布を腕でテントみたいに支えて潜り込む。本当に、伏黒が言った通り、ちんこは萎えてしゅんとなっていた。いや、マジで可愛い。縮んだそれは皺がよってて、先っぽは出てるんだけどカリも心なしかしゅんとしている。わかる、この皮の間にティッシュが挟まると気持ち悪りぃよな。口みたいな出口にちょんとキスする。わずかにピクっと動く。
「ふしぐろくーん」
「……」
『よんだ?』
ちんこの根本をつまんで、さながら人形のように動かす。目を描きたいな。
「よんだよ」
「会話すんな」
「いいじゃん、かわいい。ボク疲れちゃった?」
『ウン!』
「っう」
柔らかいちんこの先っぽをちゅうと口の中に入れると伏黒は黙った。吸い込むとちんこは伸びて出てくる。舌と上顎で咀嚼するように挟むと口の中が気持ちがいい。
「伏黒」
「ん……」
「せーえきの匂いがする」
「バカ」
すんすん匂いをかぐ。精液の匂いってちょっとツンと鉄みたいな感じがする。俺だけかな? それと一緒にちょっと香ばしい、まんこの味もかすかにする。何がうまいんだかわからないけど、美味しい。喉にピタッと吸い込まれる柔らかいちんこって、喉の形にちょうど良くフィットして、フェラってする方もすごく気持ちがいい。唇を窄めて柔らかいちんこの根本から、ゆーっくりしごく。ぷるんぷるんしている。あ……俺、勃ちそう。
「……触ってやろうか?」
気持ちいいのを我慢しているのか、小さい声で伏黒が聞いた。
「マジ? いいの?」
「出せ」
7割くらい勃ったそこを、優しく触ってくれる。
「口でしないでいいよ、疲れたろ」
「お前ほんと体力半端ないな」
「うん……ふ、伏黒のもちょっと勃ってきた」
ぺたぺた貼りつく伏黒の手のひらの皮は、厚くて硬い。ああ、いい。完勃ちしそう。
「おいしい」
「そうか」
「なんかオッパイのんでるみてぇ」
「全然ちがうだろ……」
「もうちょっと遊んでていい?」
「良いよ」
伏黒も俺ので遊んでいる。指だけでしごいてみたり、根本をもって揺らしてみたり。タマの間のシワを指先でなぞられるとゾクゾクした。伏黒のちんこも少しずつ大きくなって、口の中で柔く芯を持つ。
「ちんこの影でさぁ、式神って出るかな?」
根本とタマの柔らかい皮にキスしながら、ふと思ったことを言ってみた。
「戦闘中の俺に下半身を露出しろと?」
「呪霊もビックリ」
「絵面がヤバイ」
「蛇? 亀?」
「亀とか絶対役に立たない、ん」
「あ〜……俺も気持ちいいけど出ないかも」
「だから言っただろ……」
「タマも入れたら象になるかな」
「満象……フフッ」
笑うとちんこが揺れてペチンと俺の頬に当たる。
「ホラ、ぞーうさんって、んぶっ、ふふ」
「ちょっ、むり、はは、っははは」
「オラは人気者っ、っはは」
「真似、やめ、っふ、はは、はははっ」
「あーっ、伏黒〜、縮んじゃったじゃん!」
「いやお前のせいだろっ、くく」
「タンマ、いったんタンマ」
伏黒の手が俺のちんこから離れて、俺は毛布を剥いで外に出る。
「っは〜……ふふ、はは、やばい」
「戦ってる時思い出しそうだよ」
呆れているけど、悪戯っぽく伏黒は笑っている。
「余裕じゃん」
「俺、手ェやられたらその時は考える」
伏黒は手のひらをひらひらさせた。
「案外効くかもしんねぇ、ッフ」
笑みを浮かべながら満象の影を作り、それをすぐに解いた。
「だろ? 俺、ナイスアイディア」
「あ……ついでにさ、ふふ、っっ」
「なに、何何、何」
「いや、虎杖、前々から思ってたけど、っふふふ」
「なに?」
「いや、ヤってる時、もしちんこで、黒閃キめたら、危ないな、って、そ、それだけ、っ、く、ふふ」
「あははは、なにそれっ、やべえ!」
「大事故、っふふ、頼むから、ちんこに、じゅりょ、呪力乗せ、ぶ、もう無理、っはははは、じ、ゅりょ、く」
「いやそれ死ぬ死ぬ死ぬっ、ひぃっ」
俺は腹を抱えて笑う。
「キめられたら釘崎も、俺も死ぬっ、っは」
「家入さんになんて言えばいいの俺」
「さあな、は、はぁ〜〜……ウケる」
伏黒は目を擦って涙を拭った。俺も、笑いすぎて泣くなんていつぶりかな。
ちょうどパタンパタンと足音がして、釘崎がドアを開けた。ウエットティッシュのパックを持っている。
「あ。ヤってた?」
「ヤろうと思ったけど無理だった」
すっかりヤる気の失せた俺は伏黒の隣にあぐらをかいて座る。伏黒は肘をついて上半身だけ起こした。
「聞けよ釘崎。こいつ、俺の手がダメになったら下半身で式神呼び出せって言うんだぞ」
「うわ発想が小学生」
初対面の時のような顔をして釘崎は俺らを見る。はい、と渡されたウエットティッシュを2枚出しながら、伏黒は続ける。
「亀とか、象とか、くく」
伏黒はツボにハマってしまってなかなか笑いを抑えられない。
「伏黒だって、ヤってる時ちんこで黒閃キめんなとか、っふふ」
俺たちは自分の通常モードのちんこを、釘崎からは見えないように隠しながら拭く。今更だけどちょっと恥ずかしい。そして、拭いても拭いても少し滑りが残るのが、ナマって感じがして、新鮮だ。
「マジ!? 死因がそれだけは絶対イヤ」
釘崎は無意識に下腹部に手を当ててそう言った。そこに俺たちの、少し残ってんのかな。
「ヤバイな」
「ヤバイ」
「あんたがピンチになったらパンツおろすとか、いざって時思い出すから、ふふっふふふ、やめて」
「伏黒!! 奥の手だ!!!みたいな」
「手ですらねぇ」
「手ですら、ねぇ、って、っひ、むり」
釘崎もとうとう笑いを堪えきれなくなり、両手で顔を覆って笑う。
「やめてよホント」
「もう無理、俺一生笑うコレ」
「ぁ〜、おかしい。奥の、手じゃなかったら、なに?」
俺はいじわるく伏黒に聞く。
「棒」
すぐさま伏黒が答える。
「ぼう、っくく、棒だって!」
「どうすんのよこれで黒閃キめられなくなったらっ、意識が、集中できないっ」
「はぁ〜……やっべ」
さらに2枚のウエットティッシュを取る。もったいないじゃん、と釘崎が笑いながら合間に言った。
「よくそんなこと思いつくわね」
「まあね」
「私もさ……さっき思ったんだけど、あんたたちの精液入ってる状態で私自身に共鳴したら、あんたたちにダメージ来ちゃうんじゃないかって」
「マジ!? やめてよ! タマが潰れる」
「痛みで死にそう」
「試してみる?」
「「イヤ、いい」」
「冗談、じょうだん」
「ちょっとヒュンってなった」
それから、ひとしきり笑った俺たちは、もうヤるのはいっか、と、パンツを履いて立ち上がった。風呂で洗って歯磨きをして、どうするかな、今日は部屋で寝るかな、と戻ったら、釘崎はもう一つ布団セットを持ってきていて、端っこをたわませながら、3つの敷布団をベッドの横の床に広げていた。窓際に寄せられたベッドは、空いている。「さぁ寝るわよ」と何事もなかったかのように釘崎が真ん中に寝転んだ。こういうところ、すごく可愛い。言わんけど。
「虎杖、充電器ある?」
「あー、コンセントがアレかも」
「俺76%あるからいいよ」
電気を消した部屋の中で、充電中のスマホの画面が2つ、ぼんやり光る。ベッドに寄せてたわませた敷布団は少し狭いけれど、そんなことはどうでもいい。
「なぁ」
「ん?」
「キス、したい」
「ン」
いい、と言う代わりに釘崎がこっちを向く。隙間から漏れた月明かりが、肌を白く映し出す。
釘崎にキス。ちゅ。と音がする。何も言わなくても、伏黒も体を起こして、釘崎の頭の上で俺とキスをする。
「あんたもね」
寝転んだ伏黒の頬に手を当てて、釘崎が伏黒にキスをした。
「おやすみ」
「おやすみ」
「おやすみ」
釘崎の腰に手の甲を触れさせたまま目を瞑った。邪魔、と振り払われないことに、俺は今、自惚れている。布越しにじんわりと伝わってくる体温に、2つの寝息に、俺たち、生きてんなぁ、と、思いながら、いつのまにか眠っていた。
朝、五条先生はなんと、俺たち3人を見るなり「エッうそ……」と固まってしまった。
「恵……悠仁……マジ?」
「……何がですか」
不機嫌そうに伏黒が聞く。が、明らかにバレたんじゃないかとドキドキしているようだ。
「……いや、その……見えちゃうんだよね……どゆこと……そういうこと……」
五条先生はアイマスクを外してウロウロし、黒板に向かって喋り出したり完全に奇行すぎてやばい。別に悪いことしているわけじゃないから堂々としときゃいいじゃんという気持ちもあるけど、予期せずそんなコトまで見えちゃって、しかも動揺してガチで額に汗までかいちゃっている"最強"を目前にしたら、恥ずかしさよりも先に笑いが込み上げてきた。
「先生、いや、驚きすぎ」
「ゆーじ?! 驚かない訳ないよね? エッまさか合意じゃないとかそんなん無しだよ?」
「ハァ?! 違うし」
釘崎は顔を真っ赤にしている。昨日の夜も、真っ赤だった、耳も、唇も、あそこ、あ、待って無理、色々思い出してしまう。
「ちょっとタンマ、おれ思い出しちゃうから」
「生々しいからやめて悠仁」
「違うちがう、く、ふふ、ふ」
「え、何笑ってんのコワ……」
釘崎が俺を心底気持ち悪そうに見る。
「イヤごめん、ちょっと、ホラあれっ、っあは」
「……おい虎杖、言うなよ」
と言いつつ、もう口角が震えている。
「奥の手の、っふぶ、棒」
「ぶふっ」
耐えきれずに伏黒が吹き出した。
「ぐ、っふ」
同時に釘崎も。
「だからそれを言うなって、っくく」
「やめてよ、ぁ、ァハハ」
「なになに、エッ何!?」
「ごめん先生ッ」
「なに、大丈夫?!」
「いよいよの時ね」
「最終手段」
「だから手じゃねぇ」
「ちょっと、それ無し、無し無し、ひっ」
「なに?!」
「言えない言えない、ぃぁ」
「すみませ、ん、っぐ」
「わ、悪りぃ先生っ、秘密なんだわ……ッハハ、なぁ?」
「ね」
「おぅ」
「ま、仲良いのはいいことだけどさ……」
「はぁ〜い」
でっかいため息と共に五条先生はアイマスクを着けて、僕知〜らない、と言いながら背を向けた。くっくっと湧き上がってくる笑いをゆっくり飲み込んで、大人ってずるいな、と思う。都合の悪い時だけコドモ扱いするんだから。まぁ、俺たちお互いに命預けられる仲なんだから、閻魔様も、これくらいはゆるしてくれるよ。きっと。
終
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