10万アクセスお礼『俺の御主人様はとてつもなく可愛い』
(イラスト、ソラ様)
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「…さっくん」
くい、と袖を引かれた。
振り返ると、神妙な顔をしたご主人様がじいっとこちらを見上げている。
「あれの名前、わかる?」
「…?俺が知っているものでしたら、お答えできるとは思いますが…」
どうしても思い出せないらしい。
むーと眉を寄せ、いつだって最大級に美しく可愛らしく綺麗な御顔で悩んでいる。
思案している姿が、俺を見上げる不安そうな姿が、いつにも増して眩しい。そしてすぐに俺に縋ってくるところがもっと可愛い。
「こうやってさ、」
手をぱっと広げる。「こんな大きさで」と話し、身体を使って一生懸命に表現する。
真剣に、俺にどうやって伝えようか、どうしたらわかってもらえるかを考えながら、俺を見上げて反応を窺いながら思考錯誤している。
「わかるか?」
「…申し訳ありません。俺には難しいかもしれません」
謝罪すると、「え、あ、」と驚き、もう一度、と更に表現を大きくする。
今までこういうことで俺にわからないことがなかったから焦っている。幼稚園のお遊戯会のような動作で、仕草で、本当に一生懸命、健気に、
「それから、ぱくぱくって食べるやつ」
「…っ、」
今度こそ、我慢できなかった。
射抜かれた。心臓を、射抜かれた。
両手で、ぱくぱくと言葉に合わせて食べる動作をする姿が、あまりにも尊くて、
「夏空様…っ、」
「な、なんだよ…っ、いきなり!すぐ抱き付くなっていつも言ってるだろ!」
「可愛すぎる…、やっぱり夏空様は天使様だったのですね…」
「…っ、意味わからんことを言うな!」
白い柔肌に、華奢な体を抱き締め、頭を撫でる。
嫌がるそぶりを見せながら、なんだかんだ毎回大人しくされるがままになるご主人様がとても愛おしい。
「…オレはあれの名前がなんだったかってすごく気になってるのに…」
「マフィンです。嗚呼、夏空様はどうしてそれほどまでにすべての行動が大変可愛らしいのでしょう」
「…!!」
抱擁を楽しみながらさらりと答えた俺に、夏空様はなんだよわかっていたならもっと早く言え。バカにしてるのかと小さく怒っている。けど、
「今日のお菓子はマフィンにしましょうか」と頭を撫でて聞けば、
「…うん」
とそっぽを向いて嬉しそうに頷くご主人様に、ずっとこんな毎日が続けばいいのにと心の底から願った。