4

熱のせいかぼやける視界のなか、蒼の手がボタンを外していくのが見えて焦る。穴にかけたボタンが布の擦れる音とともに、はずれていく。
いきなりすぎて、焦る前に一瞬動けなくなって思考が停止した。

ちょっと待ってと声を出そうとすれば


「ちょ、…っ、ごほっ…」


少し話しただけで、咳き込んで何も話せなくなる。
やばい。確実にさっきので体力が大幅に減った。
その間にも彼はおれのワイシャツのボタンを外し終えていて。
蒼の顔が怖いくらい無表情だから余計に何を考えているのかわからなくて慌てる。


「あの…っ、あおい…?」


掠れた声で呼びかければ、彼はふ、と表情を緩めて視界から消える。
何かをぴちゃんと液体につける音がする。
その方向に顔を向ければ、蒼が手に持ってるものが見えて…すぐにそれがタオルを水につけて絞った音だったのだと分かった。


「…ぁ」

「大丈夫。ちゃんと着替えも持ってきてるから」


いつの間にもってきてたんだろう。

パジャマを見せてくれる蒼に、「ありが…」と流されてお礼を言いそうになって、ハッとして「いや、ちが…っ」と首を横に振る。
「ほら、ばんざい」と言われて、「え…」と躊躇えば、「早く」と睨むように言われて、「う…」と怯んだ。
こういう顔をするときの蒼は絶対に引かないから、おれが何をいっても無駄かもしれない。


「…でも、友達にそんなことしてもらうのは…」


それくらい、自分でやれる。

それなのに、蒼のしようとしてることがわかって酷く情けなくなる。…というより、そこまで友達にしてもらう価値がおれにあるのかと思ったり。

友達にしてもらうのは申し訳ないと少し咳き込みながら小さく呟くと、彼はふ、と笑みを零して横たわるおれの顔の横に手をついた。
手をついた布団のそれが重みで沈むのが視界の端に見える。


「ぁ…」


至近距離で目が合って、その瞳が笑う。


「今から俺にキスされるのと、素直に拭かれるの、どっちがいい?」


究極の選択を差し迫られた。

なんでそんな話になるんだと心の中で突っ込む。

…そんなの、最初からどっちを選ぶかなんて決まってるので、内心眉を寄せながらそれでも友達にそんなことさせるわけにいかないとだんまりを決め込んでいると「わかった。キスする」と言って顔を近づけてくる。
躊躇いなく唇を近づけてくる蒼に、焦ってこくこくと勢いよく頷いた。


「…わか……った…。わかっ、た…から…」


ぜーぜーっと熱い息を口から零しながら、すこし身体を捻って上の服だけ脱いで床に置く。
至極当たり前の返答をしただけなのに、何故か残念そうな顔をした蒼にその後、「寝てていいよ」と言われたので、抵抗するのも怠いくらい参ってる身体に負けて素直にこくんと頷いた。
prev next


[back]栞を挟む