◇クリスマス番外編 (アンケート1位)@
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「メリークリスマス、まーくん」
「…あお、い?」
まーくんが俺の声に反応して、眠っていたせいかぼんやりとした表情でこっちを向く。
その動きで、手足の鎖が音を奏でた。
やっぱり黒色にしてよかったなと思う。
はだけた浴衣からのぞく透き通るような白い肌に、黒いソレが見惚れるほど似合っていて。
(…嗚呼、今日もまーくんは可愛い)
その愛しい姿を瞳に映した瞬間、ぞくりと身体が震える。
まーくんは今日も俺の傍にいてくれる。
俺だけを、見てくれる。
その事実がどうしようもなく嬉しくて、頬が自然に緩んだ。
「まーくん、クリスマスケーキが食べたいって言ってたから」
持ってきたんだよ。とその皿に乗ったケーキを見せる。
ホールのそれは、チョコプレートとか、イチゴとか、クリームがたっぷり乗ったケーキ。
俺が作ったものだった。
まーくんの為に、まーくんの為だけに。
俺の作った料理以外をまーくんが食べる姿なんて見たくなくて。
俺の作った料理を嬉しそうに食べてくれるまーくんが見たくて。
「作ってみたんだ」
もし、まーくんが他の人のモノを嬉しそうに食べることなんかあれば…きっと俺は胸が苦しくて息もできなくなる。
笑ってそう言えば、まーくんはまだ眠たいのか、「…え?」と呆けたような声を零して身体を起こした。
その動きにギシリとベッドが音を鳴らして軋む。
「これを蒼、が?」
「…うん」
まーくんがその可愛らしい顔で驚いたようにじっと見つめてくるから、照れて思わず視線を逸らしてしまう。
自分で作ったものをまーくんに見せているからだろうか。
ちょっとだけ、どんな反応をされるか怖い。
どきどきと緊張して、胸が高鳴る。
「嬉しい?」
「…っ、うれ、しい…。ありがとう」
久しぶりに見た…零れるようなまーくんの微笑みに、俺も嬉しくなって笑った。
でも、何故かぎゅうううと胸が締め付けられるような痛みが襲う。
痛い。痛い。胸が、痛い。
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