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…というか、俺達ちゃんと付き合ってたのか。


「なんで?」

「別れた方がいいだろ。前より酷くなってるし」

「前?」

「…お前がふざけて俺に付き合おうって言った日から」


確かに愛也と付き合ってから病院に来る回数は増えた…気がする。
正直よく覚えてないけど。回数なんか数えてないし。


「でもだから別れるって何?あ、まさか押さずに引いてみろ作戦で…」


案外動揺していたらしい心はゆらゆら揺れて崩れそうになっていた。
けど、反対に口からでたのは「愛也くんってばやるぅー」と茶化したようなものだけだった。


「またそうやってふざけんのかよ」

「……………」


その言葉に

………なんか、かなりカチンと来た。


「帰るわ」と呟いて出ていこうとする愛也に、苛々する。


「………はっ」


鼻で嗤ってやる。
イラッてするのと同時に、よくわからない歪な笑いが浮かんでくる。

(何だよ俺がお前に何か悪いことしたか?わけわかんねえ。ムカつく。)

歯を食いしばり、拳を握った。

どうしろっていうんだ。
…どうすればいいんだよ。


「…わかんねーよ」

喉からやっとのことで絞り出した言葉。
声がか細く震えた。
立ち上がって背を向けようとした愛也の腕を掴んで引く。
ぐらりとゆらぐ身体を、強引にベッドに押し倒した。
胸ぐらをつかむ。
目を合わせ、感情のままに睨み付けた。


「俺だってッ、俺だってわかんねーよ!」


一度言いだした言葉は止まらない。


「なんでこうなったかなんて…っ、へらへら笑って能天気だって言われたって、死にたがりとか自殺の真似事だって言われても、どうにもできねーんだから仕方ねーだろ…っ!!」

「……」

「どうしろっていうんだよ…っ」


何かできる方法があるならとっくの昔にしてる。

俺が死のうとするのに親に虐待されたとかいじめられたとかそんな真っ当な理由はなくて
何もない。…何も原因がないから、わからないから解決もない。
…だから、生きてるのが辛い。死ぬ怖さより生きてる方がもっと怖い。

「生きてればいい事ある」なんてのは無責任な大人が言う綺麗事だ。


「…俺だってわかんねーよ…」


ずっと昔から飢餓感だけがあった。

誰かに愛してほしい。
誰かに好きになってほしい。
だからセックスもするしSMプレイにも付き合ってやる。振り向いてくれるなら死んでもいい。

どんな風にでもいいから愛されてみたかった。

なのに誰といても何かが足りなくて満たされない。愛されてるって実感がない。


「…俺には何もない。けど愛されたいから、…」

「だからって死んでどうするんだよ」


そんな淡々とした愛也の冷静な声に何かがプチンと切れた。


「そんなに言うんだったら…っ、」



その胸倉を掴んで首を絞める勢いで叫ぶ。
引き攣れた喉を振り絞って声を上げた。
眼球が熱い。


「だったら愛してくれよ…っ、」


愛してほしい。
必要とされたい。
好きになってもらいたい。
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