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「はーー、負けた。こんな簡単に股開くとかないわ。俺の千円がー、ちくしょう」
「純朴クンだから、ガードも固いと思ってた過去の自分に涙」
スマホのレンズをこっちに向けながら、嘲笑にも似た笑顔を浮かべる二人の男の人に、…心臓が冷える。
―――――え?
男たちは、それぞれ財布からお金を取り出して差し出す。
そして、当然、差し出す、というからには受け取る側が存在するわけで、
「アヤト。ほい、千円」
「…ああ」
睫毛を伏せ、微かに頷いてお札を手にする先輩に、
つい数分前まで 夢みたいに、泣きそうなほど優しく俺を抱いてくれた好きな人の冷めた表情に、…これは、何なんだろうとやけに他人事のように、感じて。
(…――…な、んで、お金…?)
まるで予定されていたかのように、スムーズなやり取り。
事後に、上半身裸でベッドに腰かけている先輩が眩しくて格好いいなぁなんてときめいていた余裕は消えた。
「…え、…と、…?」
自分の言葉が呆然としすぎていて、別の人が話しているのかと思えるぐらい情けなかった。
言葉を紡ぐ唇が震える。
伸ばそうとした指先が、震える。
抱かれていた時の、喜びの感情ではなく。
…まさか、まさかなと、不安と恐怖の気持ちに締め付けられる内部。
先輩は、そんな俺と目を合わせようとしない。
「賭けてたんだよ。ユキくんが堕ちるかどうか」
「―――っ、」
先程お金を渡していた男の人が、楽しそうに笑う。
俺を絶望に突き落とす言葉を、やけに嬉しそうに話す。
一瞬、何を言われているのかわからなかった。